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自分を低くするものは高くされます

『だれでも、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされます。』
マタイの福音書23章12節

この前の節には、「あなたがたのうちの一番偉大な者は、あなたがたに仕える人でなければなりません。」という言葉がある。前にも紹介した「サーバント(奉仕的)リーダーシップ」と関係する考え方である。

自尊欲求を持つ私たちは、自分を高くしたいという気持ちが強い。しかし、神様は、自分を高くする者を好まない。私たちは、自分の努力を誇りがちだが、よく考えてみると、持って生まれた能力、偶然めぐってきたチャンス、いろいろとアドバイスや助けてくれる人々がいるからこそ成果を出すことができる。これらは神様が与えてくれるものだ。だから、自分を低くすることが大切になるのだろう。

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おもしろおかしく(堀場製作所)

「おもしろおかしく」

これは堀場製作所の社是である。同社は、自動車、半導体、医療、環境の分野で世界初の測定機器を次々と開発し、自動車の排気ガス測定装置は世界シェア80%を誇る。

「おもしろおかしく」とは何か?自分が「面白い」「これをしたい」というこだわりを持って仕事をすることだ。技術開発型の堀場製作所がこだわるのは「世界一」という点。エンジニアに「世界一の仕事をしたな」と言ったら、これ以上のほめ言葉はないという。自分が「おもしろい」と思ったこだわり分野で世界一の仕事をすること。これが「おもしろおかしく」の意味だ。

12年の試行錯誤を経てX線顕微鏡を開発し続け、ヒット商品に育て上げたエンジニアは次のように語っている。

「しんどい時こそおもしろおかしくに立ち返って、自分が何をやりたいのかを改めて考えた」

堀場製作所はニッチ市場を狙い、そこから事業を広げていく戦略をとる。最高顧問の堀場雅夫氏は、次のように述べている。

「机を上から手で一生懸命に押してもびくともしないけれど、キリを使えばすぐに穴が開く。小さな市場でもとにかく世界一になって、それを軸に横に広げるのが正しい。だから今でもうちは中小企業の集まりです。一つのことを極めずにすぐ横に広げるのはアホの経営です。」

同社では、10年以上、全社的な業務改善活動に取り組んでいる。マンネリ化や形骸化に陥りやすい改善活動を継続できる秘訣も「おもしろおかしく」にある。168のチームが取り組んでいる改善活動の中から、毎月社長が賞を出すことになっているが、その基準はPerformance(成果)、Learn(学習)、Enjoyment(喜び楽しみ)の3つであるという。

堀場雅夫氏の言葉が印象的だ。

「日本人はなぜか仕事とはしんどくて大変なものだと頭に刷り込まれている。もっと自分を大切にせないかんと思います。人生80年のうちの最も貴重な40年間を使う仕事が「おもしろおかしく」なくて、何のために生きるのか」。

以前、このブログでも紹介したウィル(何がやりたいのか)、マスト(何をしなければいけないのか)、キャン(何ができるのか)という3つの輪のうち、堀場製作所では、ウィルとマストが重なっていると感じた。ウィルとマストを重ねることで、キャンを大きくしているのだろう。

自分はおもしろおかしく仕事をしているだろうか。

出所:日経ビジネス2006年12月25日・2007年1月1日号「堀場製作所:会社ほどおもろい場所はない」
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不連続で考え直す(高島屋)

老舗高島屋の改革が成果を上げているらしい(日経ビジネス2006.7.31)。2002年度には1.4%だった営業利益率が、2005年に2.8%に改善され、2007年にも3.2%と改革の勢いは維持されている。

1831年(天保2年)に創業した高島屋は、革新性が持ち味の百貨店だった。しかし、1980年代に入り、危機感が薄く、前例踏襲型の風土が強まっていく。そんな高島屋を変えたのが、2003年に社長に就任した鈴木弘治氏だ。

今までの考え方は打ち止めにして、すべてを不連続で考え直そう

と呼びかけた鈴木氏は、高島屋を戦う集団へと変えていく。「不連続で考え直す」とは、これまでのしがらみを絶つことを意味している。高島屋のケースは「改革の進め方」について教えてくれる。

鈴木氏の改革で注目すべきことは、高島屋の最大の強みである「顧客資産とブランドイメージ」を徹底的に守ろうとしたこと。逆に言うと、顧客資産とブランドイメージと直接関係のないところから改革していった。創業家を役員からはずし、百貨店と関係のないグループ会社を整理統合し、メインバンクとは関係のない金融機関から提携カードを発行し、賃貸物件の賃料引き下げ交渉を行った。

ただ、気になるのは取引先にしわ寄せがきたことだ。企業は顧客だけを見ていればよいわけではない。取引先や社員から見放されてしまっては、クオリティの高いサービスを提供することはできない。しかし、高島屋の場合、一連の改革を通して、長年のしがらみでつながっていた取引先を、価格やクオリティの面から考え直そうとしている点は評価できる。

例えば、導入当初、仕入れ値だけを基準に入札したため、売れ筋商品が消えてしまったという。これを反省し、現在は、MD本部が必要と判断した商品については別枠を設けて品揃えをしている。変革を進める際には、クオリティとコストの双方を考慮することが求められる。試行錯誤しながら、両者のバランスをとることが大切だ。

注目したいのは、従来のしがらみを絶つための組織的な工夫である。例えば、店頭商品に競争入札制度を導入する際に、取引先との関係が強いバイヤーではなく、後方の購買部門に入札制度の管理を担当させている。取引先がバイヤーに苦情を言っても「申し訳ないけど、違う部署がやっているので、口出しはできない」と答えるしかない。

改革を進めてから3年が経った。財務業績は好転しているものの、挑戦する風土が定着しているとはいえないらしい。組織風土の改革には、長い時間がかかる。ケースを読んで感じるのは、「これが高島屋だ」という特徴を出すには至っていないという点だ。これからの高島屋の改革に注目したい。


出所:日経ビジネス2006.7.31「高島屋:しがらみにも断ち方がある」
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時が良くても悪くても

『時が良くても悪くてもしっかりやりなさい』
(テモテへの手紙Ⅱ、4章2節)

生きていると、調子のいいときもあれば、悪いときもある。たとえ状況が悪いように思えても、それを前向きにとらえて歩むとき、いろいろな学びがあるのだろう。
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ナレッジマネジメント

野中郁次郎・紺野登著『知識経営のすすめ』(ちくま新書)を読んだ。

ナレッジマネジメント(KM:Knowledge Management)は、今ひとつよくわからないマネジメント手法だが、この本は、いろいろな枠組みによってKMの考え方を整理・分類してくれる。

著者は、KMのタイプを4つに分けているが、これによってかなり頭が整理される。

「ベストプラクティス共有型」
これは世の中で行われているKMの主流だ。成功事例を社内で共有することで効率を上げることが狙い。たとえば、ノウハウを文書化して、データベースをつくりあげるなどの活動が典型的。

「専門知ネット型」
個別の領域について詳しい知識やスキルを持っている専門家をネットワークで結び、「こういう問題なら、○○に聞けばいい」ということがすぐわかるようにする。ノウハウを文書化することはせずに、ネットワークを作ることに主眼を置く。

「知的資本型」
あまり使われていない特許やライセンスなどの知的財産を活用して、そこから収益を得る。ただし、特許などに限定することなく、広く知的財産の経済的な価値を明らかにして収益に結びつけることが大切になる。

「顧客知共有型」
製品・サービスを通して顧客と共通の経験を持ち、そこから利用法などのノウハウを獲得して共有する。「顧客にとっての価値は何か」を考えながら、顧客とともに知識を蓄積していくやり方である。

こうして分けられた4タイプのKMを組み合わせることは可能だが、それぞれの企業の文化との相性を考えなくてはいけない。あれもこれも安易に取り組むと企業に根付かないらしい。

また、この本の中で強調されているのは「ノウハウを形式知化してデータベースを作るだけでは不十分」ということだ。人間同士のふれあいや暗黙知の豊かさが優れた知識を生み出す「場」を醸成するという。

つまり、優れた知識を「生み出す」ことと「共有する」ことのバランスをとることが大切になる。そのためにカギとなるのが知識を生み出し共有するための「場」だ。物理的な場からウェブ上の場までさまざまな場を作り出すことが経営者の役目である。具体的には、次のような場がある。

・顧客との接触
・トップによる現場の歩き回り
・休憩室での雑談
・アフターファイブの飲み会
・プロジェクトチーム
・イントラネット、グループウェア
・研修
・OJT

良く考えてみると、特別なものはない。どこの組織にでもある日常的な活動だ。こうした活動の一つ一つの中に「知識が生み出され、共有される」仕掛けや仕組みを埋め込むことが優れたKMにつながるのだろう。

最近、「場」については、「職場力」「現場力」「ワークプレイスラーニンング」などが提唱され、その重要性が再認識されている。場の仕組みを解明することは、理論的にも実践的にも大切な課題だと思った。


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