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『欲望という名の電車』(読書メモ)

テネシー・ウィリアムズ(小田島雄志訳)『欲望という名の電車』(新潮文庫)

『ガラスの動物園』以上に暗い話であった。

没落した元農園主の娘ブランチは、教師を辞めて、ニューオリンズで暮らす妹ステラのアパートに転がり込む。しかし、過去の栄光の中に生きようとするブランチは、ステラの夫で粗暴なスタンリーとぶつかる毎日。

現実から目をそらし、幻想の中に生きようとするブランチは『ガラスの動物園』のお母さんと似ていて、滑稽を通り越して、哀れである。

本作は、ウィリアムズのお母さんだけでなく、精神病院に入院したお姉さん、彼女を追い込んだお父さんを投影した作品のように感じた。

ブロードウェイで成功し、二度のピューリツァー賞を受賞したウィリアムズだが、彼の私生活と死に方を知り、ブランチと彼が重なった

家族問題から抜け出せなかったウィリアムズの絶望感が伝わってくる作品である。
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