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『地獄の季節』(読書メモ)

ランボオ(小林英雄訳)『地獄の季節』岩波文庫

19世紀後半に活躍したフランスの詩人ランボオは、この作品によって文学に絶縁状をたたきつけたという。

信仰と不信仰、科学と哲学、東洋と西洋の間で揺れ動くランボオ。全体を通して、荒々しさと繊細さが交じり合っており、彼の苦悩が伝わってきた。

詩人ヴェルレーヌとの愛人関係が破局した後に書かれた「地獄の季節」は、自身の体験がベースになっているだけに迫力がある。

次の箇所が印象に残った。

俺の精神よ、気をつけろ。過激な救いにくみするな、鍛錬を積む事だ。ああ、科学は俺たちの眼にはまだるっこい。だが、どうやら俺の心は眠っているようだ。俺の精神が、この瞬間から絶えずはっきりと目覚めていてくれるものとしたら、俺たちはやがて真理に行き着くだろうに。真理は俺たちを、泣いている天使らをつれて取り巻くであろう。・・・・・もし俺の精神がこの瞬間まで目覚めていてくれたのなら、記憶にもないあの昔、俺は邪悪の本能に屈する事はなかっただろうに」(p.53)

実際にランボオが詩を書いていたのは20歳前半までらしく、その後、放浪の果てに37歳で亡くなっている。

数年間で才能を爆発させた点は、石川啄木と似ているな、と思った。








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