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『小林一茶』(読書メモ)

大谷弘至編『小林一茶』角川ソフィア文庫

痩蛙まけるな一茶是に有」「雪とけて村一ぱいの子ども哉」等の俳句で有名な小林一茶。編者の大谷氏の解説がすばらしかった。

本書を読むと、一茶の壮絶な一生とともに、そこから生み出された俳句を鑑賞することができる。

信州の農家に生まれ、3歳で母に死なれた後、継母に虐められ、15歳で江戸に奉公に出され、苦労したあげく俳句と出会い、52歳で故郷に帰り、初めて妻を迎えるものの、次々に子どもに死なれ、妻に死なれ、火事に会い、そして65歳で亡くなる一茶の生涯。

そこから絞り出された俳句に迫力を感じた。

学識のある人ではためらうような句をさらっと歌ってしまう一茶。

雪とけてクリ~したる月夜哉」(雪が解けて空では満月がくりくりとしている夜であることよ)(p. 127)

人生50年といわれた時代、自分の人生を振り返った句もいい。

月花や四十九年のむだ歩き」(月よ花よ、四十九年の私のむだ歩きの歳月よ)(p.142)

3歳で生き別れているのだから、覚えていないはずの母を想う句にグッときた。

亡き母や海見る度に見る度に」(亡き母よ、海を見るたびにあなたのことを思い出す)(p. 148)

浄土真宗を信じていた一茶だが、「「他力」ばかり言って、「他力」に依存してしまっても、結局は「自力」に陥ってしまうという」(p.229)と語っているのだが、この言葉は深い。

自分で何とかしようとするのでもなく、「神様なんとかしてください」と頼むのでもない、ありのままを大切にした一茶の一句。

ともなくもあなた任せのとしの暮」(人生、つらいことばかりであるが、ともかく一切を阿弥陀仏にお任せして年の暮れを迎えよう)(p. 225)

これらの句を読み、一茶の精神で生きたい、と感じた。

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