goo

『思い出を切り抜くとき』(読書メモ)

萩尾望都『思い出を切り抜くとき』河出文庫

少女マンガ界の巨匠・萩尾望都さんのエッセイ。

1970年後半から80年前半に書かれたものだが、萩尾さんいわく「今の私はというと、実はあんまり変わっていないので困ったものです」とのこと。

最も印象に残ったのは、マンガ教室の講師として教えたときのエピソード。

「鈴木光明先生のマンガ教室に毎年、とりあえず講師として一、二度出席するのだが、行くつど教えることは困難だと実感する。こういう表現の形態について、描き方について教えられることはほぼ表面的な技巧面が主だし、なぜ表現するのかという肝心な、そしてもっとも大切なことは、もう教える、教えないの域をこえてしまう。あとは各自が知るのを気づくのを、補助するぐらいの役割しか出来ない」(p.46)

うーん、深い。

たしかに「なぜ表現するのか」という点は、もっとも大事なことなのに、教えることが難しい事柄である。

何かを造り上げることの根本は「思い」であることに気づかされた。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )