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『生きていくための短歌』(読書メモ)

南悟『生きていくための短歌』岩波ジュニア新書

短歌とは、5・7・5・7・7で作る合計31文字の歌である。

本書には、働きながら学ぶ神戸工業高校(定時制)の生徒の短歌と、その背景が書かれている。
内容についてくどくど書くよりも、実際に短歌を読んでもらったほうが伝わると思うので、いくつか紹介しよう。

例えば、工場で職人として働いている生徒の歌。

工場の昼なお暗い片隅で一人で向き合うフライス盤(久保木和幸)

弟や妹を支えるために高校を中退し、34歳で再び挑戦している生徒の歌。

遠き日に手放したりし卒業の二文字追って夜学に通う(尾関浩一)

魚屋さんで働いている生徒の歌。

生臭い魚にゅるにゅるハエぶんぶんゴキブリかさかさもう限界だ(多田幸輔)

神戸の震災を経験した生徒の歌。

駆けつける友の住まいは崩れおち生き埋めの友に我は無力(坂居保)

パチンコ屋さんで働く生徒の歌。

パチンコ屋いつも来る客同じ顔仕事してるのこの人ら(金森一成)

不良から足を洗った生徒の歌。

やくざやめ悪事もやめて22才遠回りして今夜学生(坂居保)

個人的に一番ウケたのが次の歌。

ごめんなさい短歌の内容思いつかんテストで見つけスルーよろしく(二見武彦)

「短歌」というと敷居が高いイメージがあったのだが、非常に身近なものであると感じた。

普段の生活の中で感じたことを短歌として詠むことで、自分の姿を客観視することができるのではないだろうか。その意味で、短歌は、リフレクション(内省)の手段としても有効である。

なお、彼らの短歌を読むと、自分も短歌を作りたくなるから不思議である。この本を読み終わるまでに3つの短歌を作ってしまった。



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