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『クロイツェル・ソナタ』(読書メモ)

トルストイ(望月哲男訳)『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』光文社

憎しみ」という感情の怖さを感じることのできる一冊である。

主人公は、嫉妬のために奥さんを殺してしまう男。本書には、そこに至るまでに、憎しみが積み重なっていく様子が描かれている。

けんかをしては仲直り」を繰り返すところは普通の夫婦と同じである。しかし、ある男の出現をきっかけに、タガがはずれてしまう。

暴走に拍車をかけるのは「疑い」と「見栄」である。「自分は嫉妬などしていない」と見栄を張る気持ちが、疑いを膨らませ、嫉妬心が雪だるま式に大きくなる。そして、嫉妬心が殺意に変わっていく。

われわれも一歩間違うと、こういうことになりかねない、と空恐ろしくなった

ちなみに、タイトルにもなっている『クロイツェル・ソナタ』(ベートーベンのヴァイオリンソナタ)をYou Tubeで聞いてみたが、たしかにこの小説にぴったりの曲だった。

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