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反対意見を大切にする

湯浅誠さんは、ホームレス支援などの反貧困の問題と戦ってきた市民運動家である。

運動家であるがゆえに反貧困に向かって突き進んできた湯浅さんだが、ある経験をきっかけに考え方が変わったらしい。その経験とは、内閣府参与として国の立場で働いた2年間である。

「参与の経験が大きかったのは、自分とは異なる反対意見に直面したことでした。もちろん、それまでも反対意見に出くわすことはありましたが、民間の活動は基本的に寄付者も含め賛同者だけで運営されるので、つまるところ自分たちの活動とは直接関係なかった。ところが、公的な政策づくりの場合は、反対意見の人の税金も使うわけだから、いかに意見を調整して合意を取りながら1歩でも半歩でも前に進めるかということが課題になる」(p.16)

本気で問題を解決しようとしたら、「俺の言うことを聞け」と主張するだけでなく、反対している人の意見を真摯に聞いて対話していかねければならない。それが民主主義である、と湯浅さんは言う。

「そもそも民主主義というのは、おそろしく面倒くさくて、うんざりして、そのうえ疲れるものだということを直視するところから始める必要があると思うんです」(p.17)

我々は、何かを変えようとするときに、反対する人々のことを「抵抗勢力」と位置づけて、「困った人たち」と思いがちである。しかし、それはよく考えると危険な思考なのかもしれない。反対意見の立場に立って、粘り強く対話することが制度的なイノベーションにつながるのだろう。

反対意見を大切にすることを忘れてはいけない、と思った。

出所:ビッグイシュー日本版216号(2013.6.1)p.16-17.



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