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『岸辺のアルバム』(読書メモ)



山田太一『岸辺のアルバム』光文社

昔、話題になっていたドラマの原作である。番組は見ていないのだが、「岸辺のアルバム」というタイトルが美しいなと思って読んでみたところ、内容はドロドロだった。

ここまで壊れてしまった家族はないだろう、というくらい壊滅状態の家族が再生していくプロセスが描かれている。

家庭を顧みないモーレツサラリーマンの父親のせいで、母親が不倫に走り、アメリカ人とつきあっていた大学生の娘が強姦され、何とかしようと奮闘していた高校生の息子が傷ついてく。

主人公(?)の繁(息子)が気にくわないのは、ひどい状態であるにもかかわらず、何事もなかったように振る舞う家族の様子である。

「強姦されようとされまいと、浮気をしようとすまいと、わが家はなにひとつ変わらずに予定通り平穏に過ぎて行く。これが人間かね?こんな人間の生活があるかね?女房が浮気したと聞いたら半信半疑だってカッとなるのが人間じゃないのか?」「問題は生命(いのち)が燃えているかどうかだ」(p.331)

崩壊しかけていた家族は、お互いの問題を直視し、ぶつかり合うことで、ふたたび一つになろうとする。

本書を読み、「本音で話し合えるかどうか」が良い家族の条件かもしれない、と思った。




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