goo

『ガンジー自伝』(読書メモ)

マハトマ・ガンジー(蝋山芳郎訳)『ガンジー自伝』中公文庫

インド独立の父、ガンジーが政治家になる前までの自伝である。

ガンジーというと聖人のイメージがあるが、本書を読むと人間ガンジーが伝わってくる。もちろんタダ者ではないのだが、かなり人間くさい部分を感じることができた。

特に、ロンドンに留学したときなどは、ふつうの気弱な青年である。しかし、外国で差別を受けるうちに、気高いインド人としての誇りがムクムクと大きくなる。それが非服従運動につながり、やがてインド社会を変えていく。

本書を読み、ガンジーを作ったのは三つの要素であるように思った。

一つめは、外国から自国を眺める経験。ロンドンや南アフリカで、差別される同郷の友を目の当たりにし、インド人としてのアイデンティティに目覚める。

二つめは、弁護士としての技術。ロンドンで弁護士資格を獲得したガンジーは、法廷という場を活用しながら、社会運動を展開する。やはり、気持ちだけでは社会を変えることはできず、何らかの技術が必要となる。

三つめは、宗教心である。ヒンドゥ教のガンジーであるが、その信仰はヒンドゥ教を超えているように思えた。いたるところに「神の導き」という言葉が出てくる。

「ものの見方」「技術」「信念」。これら三つがそろったとき、組織や社会を変えることができるのかもしれない。

なお、基本的にガンジーは清く正しいのだが、本書から感じたことは、ガンジーもやはり政治家である、ということ。

非殺生を強調するが、イギリスの戦争に参加する。そうした方が、インドにとって有利であるからだ。言い換えれば、理想だけを追うのではなく、実際に世の中を変えることを重視している、ともいえる。

理想と現実の両方を考えながら、新しい道を切り開いていったガンジーのパワーを感じた。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )