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『ペスト』(読書メモ)

ダニエル・デフォー(平井正穂訳)『ペスト』中公文庫
1665年、ロンドンはペストに襲われ、多くの人々が亡くなった。その状況を報告したのが本書である。作者は、ロビンソン・クルーソーでおなじみのダニエル・デフォー。

最近のインフルエンザの流行などもあり、リアルにその怖さが伝わって来た。

デフォーがこの本を書いた目的の一つは「またペストが流行したときに、市民や行政はどう行動すべきか」という点を伝えることのように感じた。その意味では、現代の我々も学ぶべき点が多い。

本書には、ペストが発生してから、広まって行くプロセスが生々しく描かれているが、注目したいのはロンドン市政の対応。デフォーはその問題点と優れた点を指摘する。

問題点は、ペストが発生した家を強制的に封鎖してしまったこと。例えば、家族の誰かがペストにかかると、その他の家族も家に閉じ込められてしまう。感染を防ぐことが目的だが、その一家は全滅する。ただ、実際には、患者を置き去りにして、家族が逃げ出してしまうケースが多く、この施策はあまり意味をなさない。

一方、ロンドン行政が優れていたのは、ペストに罹って死んでしまった人々を墓地まで運び埋葬するシステムを確立していたこと。これによって、死人が街にあふれかえり、ペストが蔓延することを防いだようだ。

また、ロンドン市長や助役などが、危険を恐れず、率先して行動したことが記されている。彼らは、ペストにかかるかもしれない場所に出て行き、陣頭指揮を執っていたらしい。そのプロフェッショナリズムは凄いと思った。

本書を読み、都市や国家が危機に瀕したときの、リーダーの働きと、マネジメントシステムの大切さが伝わって来た。しかし、今の日本で、行政が適切な処置をとってくれるかどうかについては不安が残った


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