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『カブールの燕たち』(読書メモ)

ヤスミナ・カドラ (著), 香川 由利子 (翻訳) 『カブールの燕たち』早川書房

アフガニスタンの首都カブールを舞台に繰り広げられる物語である。タイトルとカバーイラストに惹かれて読んだ。

登場するのは「やる気をなくした夫に不満を抱く美しい妻」と「不治の病に侵された妻に不満を抱き、美しい女性に心を奪われた夫」という二組の夫婦である。

タリバンに支配されたカブールでは、街中で笑うことさえ許されない。希望のない街で、両夫婦は、世間を呪い、伴侶の欠点を責め、不満をいだく。

はじめは、カブールの街を支配する異常さに目が奪われたが、読み進めるにつれ、ここに登場する二組の夫婦は、平和な国に住んでいる私たちの中にもたくさん存在するのではないかと思った。

美しい妻は、アクシデントで自分の夫を死なせてしまった後、夫の良さに気づき、自分の愚かさを悔い改める。一方の夫婦の妻は、夫の恋のために自分を犠牲にし死を選ぶ。

「自分のために妻が死んだら、夫の目も覚める」という結末を予想していたが、そうはならない。妻が亡くなった後も、美しい女性への未練を捨て切れないで破滅していく夫の姿が妙にリアルだった。
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