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ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

大智と大悲

2019年10月30日 | その他
鈴木大拙『仏教の大意』(角川ソフィア文庫)によれば、仏教という建築を載せている二つの柱に「大智」と「大悲」があるという。

「智は悲から出るし、悲は智から出ます。元来は一つ物でありますが、分別智の上で話するとき二つの物であるように分かれるのです」(p. 78)

どうも、大智とは論理や知性であり、大悲は感情や感覚のようなものであるらしい。

「大智の面が強調せられると大悲の面が軽視せられるようになり、これを逆にするとまた逆の面が見えるので、人間のやることはいつでも面倒なものです。が、それは十分に気をつけるべきです」(p. 130)

IQとEQのようなものかもしれない。

「日本の仏教では、禅は大智の面、浄土系は大悲の面を代表するといってよかろうと思います」(p. 132)

ということは、自分で悟ること(禅宗)と、仏にすがること(浄土宗)の両方が大事になる、といえる。

人生においても、「自分で考えて行動」しつつ「神を信じて頼る」ことが、幸せにつながるのだろう。




恩を忘れない

2019年09月06日 | その他
ANA機内誌『翼の王国』の連載記事「おべんとうの時間」が好きである。

今回は岩手県釜石市の職員佐々木さんが紹介されていた。2011年の震災のとき、佐々木さんは避難所の仮設トイレ担当だったという。

「ある時掃除をしていたら、神戸から来た青年が声をかけてくれたんです。自分は阪神・淡路大震災の時に小学生だったんだけど、あの時一番最初に自分の所に助けに来てくれたのが岩手県警だったって言うんですよ。だから岩手で何かあったら、真っ先に行こうと思ってたって。それで警察官になったそうです。それを聞いて、涙流しながら便器の水も流したっていう経験をしましたね」

このエピソードに感動した。

助けてもらった恩は忘れてはいけないな、と感じた。

『翼の王国』(2019年9月号, p. 81)

強みと存在意義

2019年02月27日 | その他
先日読んだ『子供時代』(リュドミラ・ウリツカヤ著、沼野恭子訳、新潮社)の中に、「折り紙の勝利」という感動的な作品がある。

主人公ゲーニャは、父親がおらず、生まれつき足が悪く、いつも鼻がつまっているため、近所の子供たちからいじめられている。

ある日、お母さんが「ゲーニャのお誕生日にあの子たちを呼ぼうと思うの」と言いだす。「気が変になったのかい」「あの子たちは子供とも思えない、ワルどもだよ」とおばあさんがびっくりする。(p. 100)

「だれにも来てほしくない。やめようと、ママ」(p. 102)と頼むゲーニャ。

そんなことお構いなしに、お母さんは誕生会を開く。

実はゲーニャには得意技があった。それは「折り紙」である。病気がちなゲーニャはベッドの上で折り紙を折りながら戦ってきたのだ。

イマイチ盛り上がりに欠ける誕生会の中で、お母さんが「ゲーニャ、折り紙を作ってあげたら?」と促したところ、「ぼくにも!ぼくにも作って!」「ゲーニャ、ぼくはコップ!」「私は人!ゲーニャ、人作って!」と大人気に(p. 109-110)。

この作品を読み、それぞれが持っている「強み」を引き出してあげることが、その人の「存在意義」につながるのだな、と思った。









「思い」を言葉で伝える

2019年02月13日 | その他
バーンスタインに師事し、海外のオーケストラを指揮してきた大植英次さんは、「格調は高く、敷居は低く」をテーマに、誰もが楽しめる「大阪クラシック」を開催している。

ある公演で、観客の子供が演奏中にぐずりだし、他の観客が不快感を示したことがあったらしい。その雰囲気を察知した大植さんは「普段コンサートに来られない人にこそ聴いてほしい」という大阪クラシックの思いを観客に語り出した

その瞬間から観客の雰囲気は一変し、その親子に席を譲る人などが現れ、会場が一体化したという。

このエピソードを読み、「思い」を言葉で伝えることの大切さが伝わってきた。

出所:Works, No.152, p. 44-45.


文学と競争

2019年02月08日 | その他
『オイディプス王』の作者ソポクレス(紀元前497/6頃~前406/7頃)は、古代ギリシャの三大詩人の一人。あと二人は、アイスキュロスとエウリピデス。

ソポクレスは、アテネの演劇祭・大ディオニューシア祭に30回参加し、18回優勝したという経歴の持ち主。ちなみに、アイスキュロスは優勝14回、エウリピデスは5回とのこと。

文学作品でも競争していたとは、さすがオリンピック発祥の国である。

現在も、芥川賞・直木賞などたくさんの賞があるが、正直なところ「意味があるのか?」と感じていた。しかし、ソポクレスの作品を読み、ライバルを意識しながら切磋琢磨することも、優れた文学を生み出す上で大切かもしれない、と思った。

出所:ソポクレス(河合祥一郎訳)『オイディプス王』光文社古典新訳文庫


やりたいことをやり続ける

2018年12月07日 | その他
アゴタ・クリストフ著『文盲』(堀茂樹訳、白水ブックス)の中に「人はどのようにして作家になるか?」という章がある。以下はその冒頭部分。

「まず、当たり前のことだが、ものを書かなければならない。それから、ものを書き続けなければならない。たとえ、自分の書いたものに興味を持ってくれる人が一人もいなくても。たとえ、自分の書いたものに興味を持ってくれるひとなどこの先一人も現れないだとうという気がしても」(p.75)

他人がどう思おうが、自分の書きたいものを書き続けること。それが作家になるための第一歩である。

これは作家に限らず、あらゆることに共通している。他人がどう評価しようが、やりたいことをやり続ける。これが「何かになる」ために必要なことである。




ノーベル文学賞

2018年11月15日 | その他
『日本の美徳』の中で興味深い箇所があった。それは、川端康成三島由紀夫についての話。キーンさんは言う。

「大岡昇平さんは、後にひじょうに暗いことを言っています。ノーベル文学賞がまず三島さんを殺して、その後、川端先生を殺した、と。その発言には深い意味がある、と私は思っています。三島さんは、ノーベル文学賞を受賞していたら、たぶん自決はしなかったでしょう。(中略)川端さんはノーベル賞を受賞され、大変な責任感を感じられたことは間違いありません。受賞後、何回も、小説の初めだけを書いて途中でやめて、「これ以上、書けない」と…」(p.96)

同じ賞でも、それが励みになる人とプレッシャーになる人がいる。難しいものだな、と思った。

出所:瀬戸内寂聴・ドナルド・キーン『日本の美徳』中公新書クラレ

安閑無事

2018年11月09日 | その他
『比べず、とらわれず、生きる』の中で「安閑無事」という禅語が紹介されていた。

「昨日と同じ一日しか来ないと考えるのではなく、今日もまた昨日と同じ安らかな日が来てくれたことに感謝する。そんな気持ちをもちながら、今日という一日を懸命に生きていく。幸せとは何かと問われれば、まさに変わらぬ日々こそが幸せだという答えにたどり着くものです」(p.154)

あたりまえ」に思ってしまうことの中に「ありがたさ」がある。それに気づかされた。

出所:枡野俊明『比べず、とらわれず、生きる』PHP文庫


資本教

2018年10月26日 | その他
『仕事なんか生きがいにするな』(泉谷閑示、幻冬舎新書)の中で心に残った箇所がある。

それは、マルクスの娘婿ポール・ラファルグによる『怠ける権利』という書から引用された一節。

「問:おまえの宗教はなにか。
 答:「資本教」です。
 問:「資本教」はおまえにどのような義務を負わせているか。
 答:主要な二つの義務、つまり、権利放棄の義務と労働の義務です。<中略>幼少時代から死ぬまで、働くこと、太陽の下でもガス燈の下でも働くこと、つまり、いつでもどこでも働くことを、わたしの宗教は命じます。」(p. 87)

これは資本主義に翻弄されている労働者を皮肉ったパロディ作品らしい。

しかし、これを読み、自分を含めて、日本人は完全に資本教の信者になっている、と感じた。


芸術と人格

2018年10月16日 | その他
映画『ビューティフルマインド』に感動し、素晴らしい演技をしていたラッセル・クロウとはどのような人物かを調べたところ、とんでもない人であることが判明!

Wikipediaによれば「短気と粗暴な振る舞いから問題が絶えないことで有名」らしい。
(詳しくは同サイトを参照のこと)

優れた音楽家であるが人間としてはクズ、という評判の人をしばしば耳にするが、芸術と人格はあまり関係がない、のかもしれない。