(立礼席の点茶盤)
初炭になり、恐る恐る下火の様子を見ると、前回の「初風炉の茶事」より一層下火が残っていない状況でした。じょうを取り小さくなった下火を集めて炭を置きました。(初炭後の中立でもう大変! 火相と湯相を調え直し、濃茶に間に合い安堵しました・・・)
風炉は唐銅道安、釜は伊予芦屋釜の写しで糸目桐文車軸釜(長野新造)です。
(釜師・長野新氏に特注した糸目桐文車軸釜)
灰形は二文字押切ですが、御正客I氏のいつも素晴らしい灰形を拝見しているので、プレッシャーを感じながら作りました。
灰形をつくりながら耳元でS先生の「風炉の火床は浅くしてください。そうしないと、なかなか煮えががつきません・・・」という声が聞こえて来るようでした。
上手に綺麗に火床を浅く作りたい・・という気持ちが邪魔をして、灰匙がスムースに動かず、手数ばかり多い灰形となりましたが、これが今のありのままだとも思います・・・。
炭斗は鵜籠、羽根はフクロウ、火箸は杓立の菊頭四方透かし(清五郎造)です。
香合は屋形船、近江堅田にある浮御堂古材で作られていて、作者は誠中斎です。京都在住の頃、恩師・長野先生から頂戴した思い出のある香合で、香は沈香(松栄堂)を焚きました。
(鵜籠の炭斗)
半東Y氏が主菓子「青梅」を縁高でお出ししました。
青梅の菓子銘は「十郎」(石井菓子舗製)、神奈川県では小田原の曽我梅林の梅が有名で、曽我は仇討ちで名高い曽我十郎・五郎の生まれ育った土地です。美味しいと評判のブランド梅「十郎梅」から「十郎」と命名しました。
「十郎(青梅)」の果肉が入った梅餡が特に美味しいと好評で嬉しかった!です。
馴染みの石井菓子舗(横浜市旭区都岡)に茶事でお出しするので・・・と、もう一回り大きい「青梅」を頼んでみました。すると、いつも店番をしているお嫁ちゃんがポンと一つ「青梅」を手渡して、「食べてみてください」というのです。今年になって初めての石井菓子舗の「青梅」でした。
(味と言い、大きさと言い絶妙な青梅は、菓子銘「十郎」)
ゆっくり味わうと、甘みと酸味が絶妙で、梅の果粒が一層美味しさを引き立てていて、正に適量と納得しました・・・聞けば、家族総出で吟味し話し合って、この大きさに決めたそうです。
「ありがとう! この大きさが丁度よいですね。これでお願いします」
お菓子を召し上がってから、先ほどの待合へ中立をしていただきました。
中立の間は半東Y氏と手分けして大忙しでした・・・。
(その日は腰掛待合と露地は使いませんで・・・)
(本当に久しぶりに喚鐘を打ちました・・・雨もまた好し)
雨(陰)上がりだったので喚鐘(陽)を5つ打って後座の席入りの合図としました。
さぁ~いよいよ濃茶です。深呼吸して心を静め、緊張感を覚えながら襖を開けました。(つづく)
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