暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

長月の稽古  Happy Birthday !

2015年09月09日 | 暁庵の裏千家茶道教室


長月最初の稽古日、9月2日はFさんの誕生日でした。
   Happy Birthday !

床のお軸は「心清寿年長」。
花は、くるくるした動きと虫食いの葉が面白い紅水引を虫篭へ。
水引だけでは少し寂しい気がして「日の丸」を入れると目出度くなりました。

この日はFさんとI市からのYさんの二人がいらっしゃいました。
それで、Fさんの誕生祝いにツレアイの郷土料理「日向飯(ひゅうがめし)」を御馳走したいと思ったのです。
(稽古に専念したいので・・前回に続いてランチをお願いしちゃいました)




「心清寿年長」(前大徳・宗興師)

日向飯は愛媛県西予や南予地方に伝わる素朴な料理で、一説によると漁師さんのまかない食がルーツとか。
タレに漬け込んだ真鯛の刺身を温かいご飯に乗せ、薬味(大葉、青ネギ、イリゴマ、ミョウガなどお好みで)を添えて出来上がりです。
ただ、卵の入ったタレにコツがあるらしく、日向飯を食べ慣れていない私が作ると今一つなのです。
焚き合せ(茄子の水晶煮、オクラ、鳥の丸)、胡麻豆腐、みそ汁をお出ししましたが、お口に合ったかどうか心配です・・・。

さて、肝心の稽古ですが、11時近くにYさんが着物姿で到着。
午前中に染付腰捻水指を置いた更好棚で濃茶と薄茶点前をして頂きました。




午後はFさんの茶碗荘があるので、茶事を前提にした初座の設えに変えました。
床の間の花を除けて、白い御物袋に入った茶碗を荘ってもらい、午後の稽古始めの挨拶です。


   
初座で床の間に茶碗を荘る


初炭手前はYさんでした。
足の運びや建水の運びをご指導したので、来年風炉の時季にもう一度拝見したいです。
たくさん入れておいた炭がすっかり落ちていましたが、火が熾り一安心。
香合は桑木地が美しい「初雁香合」・・・月を慕って、最初の雁がそろそろ北から渡ってきます。

初炭が終わり、頭を後座に切り替え(床の間の茶碗を下げて)、Fさんの茶碗荘です。
水指は瀬戸一重口、塗蓋上に茶巾、その上に茶筅、茶杓を蓋上横に置きます。
茶碗に茶入を入れて水指前に荘りつけてから点前が始まります。

濃茶平点前と違うところは茶碗の扱い、由緒や想い入れのある茶碗なので両手扱いです。
濃茶が点つと、茶碗を両手で持って客付きへ回り、茶碗を膝前に置いて、古帛紗を拡げ、茶碗を回して出し、膝退して手を突いて控えています。
茶碗が取り込まれると膝行し、手は膝上に置き、いつも通り茶銘などの問答が続きます。

・・・茶碗が古袱紗にのったまま返されると、亭主は客付きに回ります。
ここで茶碗についての問答があり、この点前のハイライトです。

「立派なお茶碗でございますが、お茶碗のご由緒は?」
「曾祖父が大事にしていました茶碗で、○○焼というだけで作者もわかりません。
 曾父の代に割れを金継しまして、その風情から「花すすき」という銘をつけ、
 我が家に伝わっております」
「金継が繊細で美しく、お茶碗の好さを一段と引き立てておりますね。
 今日はご伝来のお茶碗で御茶を美味しく頂戴し、ありがとうございました」

・・・というような問答が交わされ、茶碗だけを両手で取り込み、古帛紗をしまいます・・・(後略)。


「もう萩が咲いているかしら?」 (京都・迎称寺にて)

茶碗荘のあとは四ヶ伝と続きました。
曲水指に変えてYさんの台天目、Fさんの盆点です。
盆点の途中でYさんが退席されました。
着物を着換えたYさんを玄関でお見送りし、稽古は続きます。

7時過ぎだったでしょうか? 雲間に輝く下弦の月を眺めました。
充実した稽古の後の気持ちの良い晩でした。
                        

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