暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

白露の茶飲み会

2011年09月03日 | 茶道楽
9月8日は白露(はくろ)です。

二十四節気の一つ。
太陽黄経が165度のときで、暦ではそれが起こる日ですが、天文学ではその瞬間だそうです。
夜間の大気が冷えてきて、草に降りた露が白く光るころ。

白露に因んで思い出すのは、在原業平の歌です。

   白玉かなにぞと人の問ひし時
       露とこたへて消(け)なましものを    在原業平(新古今集)

  (歌の意) 草の上の露を、あれは真珠か、何なのかとあの人が問うた時、
         あれは露ですと答えて、その露のように私も消えてしまえばよかったのに。

   歌の出典は伊勢物語六段、「芥河」(あくたがわ)です。
   女を盗み出して、芥河のほとりを行くとき、
   女は無邪気に草の上の露を「あの白く光るものはなに」と男に尋ねます。

   男はそれに答える余裕もないまま、「あばらなる蔵」に女を押し込めて、
   追手から一晩戸口を守りますが、その間に鬼が女を「一口に」食ってしまう。
   折からの雷鳴のために、悲鳴も聞こえなかったのです。

   夜明け頃、女がいないことに気づいた男が、
   「足ずりして泣けども、かひなし」
   と悔しがり、泣きながら詠んだ歌です。
   女を食う鬼とは、追手というより巨大な権力や抗えない運命を
   指しているようです。

                

この歌が好きで、「白露」(しらつゆ、はくろ)の色紙をMさんにお願いしました。
山荘ピンクハウスへ一緒に泊まった夜のことです。
寝言半分のような依頼だったのですが、Mさんから
「色紙が出来あがったのでIさんと1日に伺います」と電話を頂きました。

「山荘ピンクハウスでお茶を」のことを懐かしく話しながら茶飲み会をしました。
「濃茶をのんでみたい」とIさんから所望されていたので
名水点で濃茶と薄茶を差し上げました。
名水は秦野市にある「弘法の清水」です。

「濃茶ってまろやかでとても美味しいですね!」
と気に入っていただけたようです(・・良かった!)
濃茶は伊藤園の万歴の昔、
主菓子はIさん持参の岡三英堂(松江市)製「日の出前」、
干菓子は三溪園製「餡入り落雁」です。

               

書のことが解らないので詳しく書けないのが残念ですが、
「これだ・・・」と思うまでの過程の墨書を持参して見せて頂きました。
たった二字「白露」がさまざまな表情で書かれていて、
書の持つ無限の世界を垣間見ました。
創意あふれる隷書で、二枚出来上がった色紙から一枚を選ばせてもらいました。 

「白露」の時期だけでなく、茶席ではいろいろな露が登場しますので
どんな思いで色紙を掛けるか、とても楽しみになりました。

                          
  
 


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