暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

少庵四百年忌記念 「千少庵」展へ

2013年09月08日 | 美術館・博物館
9月7日(土)に講演会があるというので、茶道資料館で開催中の
「千少庵」展へ出かけました。
学芸員・降矢哲男氏が「少庵の茶道具」と題して
時折持論や推論を交えながら熱心に解説してくださいました。

「少庵の茶道具」の中で興味深かったのは
「千利休由緒書」(資料)に書かれている次のような内容でした。

   徳川家康や蒲生氏郷の尽力により赦されて、
   少庵は会津より京へ戻ってきます。

   秀吉公が仰せになるには、「利休屋敷へ時々行った折に、
   十歳ほどの喝食(かつじき:僧侶になる前の有髪の男児)が給仕していたが、
   その子は少庵の子供か、それとも孫であったか」とお尋ねがありました。

   「少庵の倅で、利休の孫でございます」と石田三成が申し上げると、
   「利休はこの世に居らぬのだから、よき道具を三棹、その子にやってくれ」
   と上意がありました。
   この喝食が後の宗旦です・・・(略)・・・

           
                     花虎ノ尾

利休切腹後、秀吉が没収した茶道具の中から返却された
三棹に入っていたのはどれか?
秀吉が返さずに持っていた茶道具はなかったか? 
あったとしたら?・・・興味津々です。

降矢哲男氏は、利休・少庵・宗旦と、三人の所持がはっきりしている茶道具は
三棹に入っていたもの・・・と考えられるそうです。
それらは、①唐物茶壺 銘「煎餅」
      ②田口釜 銘「桜川」 西村道仁作
      ③小尻張釜  利休好 宗旦極
      ④鷲棗 (今日庵)
      ⑤赤楽茶碗 銘「太郎坊」長次郎作 利休・宗旦所持(今日庵)
      ⑥唐犬釜 古天明

・・・これらは今回の展示の中でも名品ぞろいで必見です。

            
                  「秋のなごみ」  鼓月製
 
            
             美味しい菓子と薄茶で一服  茶道資料館にて

講演会のあとで展示を見たので、見所や背景も解りやすかったです。
特に少庵所持の三碗は、どれも魅力に溢れていて、御好みを伝えています。

     ①青井戸茶碗 
      少庵井戸とも呼ばれ、高台のカイラギ、竹の節高台、
      ロクロ目の二本の美しい筋、
      釉に灰が混入して青色に見えたので青井戸と言われたそうが、
      今は青も変色して、落ち着いた枇杷色にしかみえません。
      全体の印象はやさしく温かみのある井戸茶碗です。

     ②人形手茶碗 (藤田美術館)
      青磁と言われるが、珠光青磁のような色合い。
      中に書かれた模様から人形手と言われることに、いつも疑問を
      持ちながら、印象だけは強烈な茶碗です。

     ③黒楽 銘「大黒」  (個人蔵 今回展示無し)

見ごたえがあったのが、黒楽茶碗「シコロヒキ」長次郎作(今日庵)で、
初めて拝見しました。
「シコロヒキ」は「大黒」のような威風堂々の趣きと静かなる美を感じる黒楽、
見込みが褐色に変色していて、この茶碗を愛玩し、茶を点て、
飲んでいた人物までも浮かんでくるようでした。
箱に銘の由来が記され、利休が所持後に蒲生氏郷・・・宗旦へと伝わります。

銘「シコロヒキ」は、平家物語の「弓流」の段より
平家の藤原景清が源氏の武将の兜のシコロを引きちぎった故事によるそうです。
このような名椀に出合えて嬉しい限りです。

                                 

     特別展 少庵四百年忌記念「千少庵」
      平成25年9月3日~10月6日
      於 茶道資料館 (京都市上京区堀川通寺之内上る)