暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

口切の茶事 師走(2)

2010年12月07日 | 思い出の茶事
口切には「内(ナイ)口切」と「口切」があります。
茶壷は茶師に預けられ、口切の前に葉茶を詰めた茶壷が届けられます。
この状態で初めて口を切るのを「内口切」、
その後、再び封をした茶壷の口を切るのが「口切」です。

今回は「内口切」で、茶師の所から葉茶が詰められた茶壷を
ご亭主自身が持って帰られたそうです。
床前の茶壷が点前座(道具畳)へ運ばれました。
御茶入日記が運び出され、三人で相談し、
すぐに初昔に決まりました。

葉茶じょうご一式が水屋から持ち出され、小刀で口を切り始めました。
「内口切」を目の前で拝見させて頂き、
ご亭主と一緒に一挙一動しているような一体感がありました。
比較的サッと切れる「口切」と違い、しっかりと封印されていました。

ご亭主は合口を指で確認しながら、ゆっくり慎重に切っていきます。
口を切り終え、壷の中を横から拝見すると
葉茶がぎっしりと詰められた中に半袋(37.5g)が三つ入っています。
葉茶を少量じょうごへ移し、最初に取り出したのが初昔でした。

和紙で封がされ、印が押され、
いよいよ茶壷の拝見です。

小習い壷荘の稽古で拝見するのと違い、
葉茶がギッシリ詰まっているせいかとても重かったです。
小振りながらキリッと締まった形が小気味よく、
黒の釉薬の肌に灰色釉のなだれが美しい茶壷です。
(瀬戸かしら?それとも唐津かしら?)
お尋ねすると高取で初代・鬼丸雪山造でした。

「口切の茶事をしたいと長年思っていましたが、
 茶壷との出合いがありませんでした。
 この茶壷とご縁があって 
 やっと今日、口切をすることができました・・・」

ご亭主のお話を伺って心に響くものがありました。
茶壷とのご縁、T先生と後輩に見守られての口切、
誠におめでとうございます。
ご亭主の喜びが我が身のようでした。

              

それから、初炭、懐石、濃茶、後炭、薄茶と続きましたが、
今日の口切へかけるご亭主の心意気が全てに込められていて、
愉しく満ち足りた時間が流れていきました。
半東と懐石は茶事のお仲間が担当していて、チームワークの
良さがうらやましいです。

T先生が
「口切の茶事は亭主にとっても客にとっても特別なことでして、
 茶事の中に茶壷の口切を入れれば良いという訳ではないのです。
 よくぞここまで修練を積まれ、ご準備も立派になさいましたね。
 とても素晴らしい口切でした・・・。
 お招き頂き、ありがとうございます」
と、嬉しそうにおっしゃっていたのが心に残っています。

ご亭主を見習って、口切の茶事ができるよう努力してみよう・・
茶事に招き、招かれつつ、お互いに切磋琢磨しながら
末長くお付き合いできたら・・・と思いました。

    口切や 壷中に夢を ふくらませ     暁庵


         口切の茶事 師走(1)へ          

    写真は上から、「蝋梅」 (季節の花300提供)
             「紅葉透かし」 (12月4日三渓園にて)



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。