暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「春を惜しむ茶事」と新型コロナウイルス

2020年04月14日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

  「桜は来年も帰ってきます。人の命は帰ってきません」   

          (山中伸弥所長便りより  2020年3月26日)

 

3月25日に開花してから花吹雪となって去って行った4月10日頃まで、長期間私を楽しませてくれた桜たち・・・ 

その間台所の窓から「私のサクラ」を眺めながら、4月5日に開催予定だった「春を惜しむ茶事」のシュミレーションをしたり、新型コロナウイルスの嵐が迫りつつある中で開催すべきかどうか・・・迷う日々でした。

暁庵なりにいろいろ葛藤があったので、こちらに記しておこうと思います。

 

(3月中は専ら「平常心是道」のお軸を掛けました)

 

開催中止を決めたのは3月30日、決断するとすぐに次のようなメールを送りました。

 「春を惜しむの茶事」のお客様へ

外出自粛の3月29日(日)には雪が降り、満開の桜に雪が積もるという珍しい光景でした。 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?

誠に残念ですが、4月5日(日)の「春を惜しむ茶事」を中止させて頂きます。

懐石方のYさまが明日に仕入れの注文をされるとのことで、ぎりぎりの判断になりましたこと、お許しください。

新型コロナウイルスの拡大が心配される中、お客様の安全安心を第一に考えての決断です。何卒ご理解のほどをお願いいたします。

新型コロナウイルスとの戦いは長期戦が予測され、しばらくは予断を許しません。

世の中が落ち着き、安心して笑顔でお茶事に迎えられる目途がつきましたら、すぐにもお声掛けしたいと思っております。

皆さま、くれぐれもお体に気を付けてお過ごしください。   暁庵

 

往生際が悪く、やっと中止を決断するまで心が揺れ動きました・・・。

前にも書きましたが、愛媛県在住の先輩Kさんの言葉が頭に強烈に残っていました。

Kさんは「どうせコロナで死ぬなら日本で、自分の家で死にたい」と思い、息子さんたちがアメリカの方が安全だから・・と引きとめたけれど、日本へ帰って来たのでした。

そのお話を伺った時、茶事を開催すべきか迷っていたのですが、

「茶事をしながら死ぬのは本望・・・人間いつか死ぬのだからそれも良しかな」と我儘な考えが頭をよぎっていました。

でも、3月29日に志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなられたことが報道され、日本中に衝撃が走りました。

その壮絶な闘病や死に際の実情(治療薬がない、家族や友人にも看取られず、遺体はすぐに荼毘に付され、火葬場での最後の見送りもできなかったなど・・・)を報道で知り、「新型コロナウイルスで死にたくないし、お茶を愛する人たちを道連れにするわけにはいかない・・・」と強く思ったのでした。

なんとしても、新型コロナウイルスに打ち勝つように出来るだけの努力をしよう・・・と。

 

(命が一番大切なことを気づかせてくださった志村けんさんに合掌 ・・・写真は時事通信フォト)

今、暁庵の茶道教室は5月6日までお休みしています。楽しみにしていた5月5日のM氏(社中)の初風炉の茶事も残念ながら中止になりました。

 

一日も早く感染が防止され、笑顔でお茶の出来る日常が戻りますよう、やるべき対策をしっかりやって頑張りましょう。 きっときっとその日が来ることを信じて・・・

 

(季節はめぐり、イチハツを生けてみました。お軸は「隅田川」です)

 

 


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