(後炭では月形に藤灰を入れ、陰を弱めます)
濃茶が終わり、後炭になりました。
後炭の風炉中を小堀遠州流のお客さまに見て頂くのがとても楽しみでした。
後炭では席中へ入らなかったので想像するだけですが、後炭で胴炭が割れたそうで「ヤッタネ!」
後炭で釜を濡れ茶巾で浄めるのは小堀遠州流も同じでしたが、拭き方が違うように記憶しています。
そんな違いも興味深くご覧になったのではないかしら?
そうそう、もう一つ見どころがあります。後炭では火(陽)が衰えているので、初炭で「月形(陰)を切った」ところに灰匙で藤灰を入れて陰を弱めます(藤灰で白くなった月を鑑賞するのも後炭の楽しみです・・・)。
「おそれいりますが、薄茶は半東がお点て致します」とM氏がご挨拶しました。
半東T氏が干菓子を運び、薄茶点前が始まりました。
(薄茶の点前座)
先ずは水指を茶道口建付けに置いて「薄茶を差し上げます」
水指は李朝刷毛目。李朝好きのお客様にはこれしかない!と、T氏と決めました。刷毛目の白い釉薬が剝がれかけていて、そこが気に入っています。その昔、刷毛目は稲わらに釉薬をたっぷり着けて描いたそうですが、そんな様子を連想させる水指です。お客さまが気に入ってくださったら嬉しいですね・・・。
半東T氏の端正なお点前で薄茶が美味しく点てられました。
薄茶は金輪(丸久小山園詰)、干菓子は銘「おりふしに」(仙台・森の香本舗)と、ふのやき「ひとひら」(美濃忠)です。ご亭主が今までの転勤先に因む美味しい干菓子を取り寄せました。
薄茶席の主茶碗は魚屋(ととや 韓国・山清窯 ミン・ヨンギ造)、5年前に韓国の窯元をめぐる旅行で、日本で修行を重ねたという陶芸家ミン・ヨンギの作風と人柄に魅せられて購入したものです。各服点になって大きいので使えずにいましたが・・・やっと!
(薄茶茶碗 銘「墨流し」 花房万紀子造)
次客さまの茶碗は銘「雨音」、三客さまは銘「墨流し」、四客さまは志野釉平茶碗、この3碗は全て花房万紀子造、斬新な中にも古典を感じる作風が魅力を放っています。
花房万紀子さんはニューヨークを中心に個展を開いている陶芸家だそうで、T氏がニューヨーク赴任の際にご縁があり求めたものとか・・・そんなお話を伺っていたら、三客SXさまが花房万紀子さんをご存じで、T氏もびっくりでした。
お詰TIHOさまの茶碗は伊羅保(飛井隆司造、小堀亮敬師(孤蓬庵)箱書)、伊羅保の渋く侘びた趣きがT氏のお好みのようです。
薄器はガラス製で蓋は錫製、ガラスの呼び継ぎが面白く、銘「暁」西中千人(にしなかゆきと)造です。
茶杓は濃茶と同じ、銘「閑日月」方谷浩明和尚作でした。
(ガラスの薄茶器 銘「暁」・西中千人作、茶杓 銘「閑日月」・方谷浩明師)
薄茶がスムースに進行し、水屋で懐石の佐藤愛真さんとのんびりしていたら、お声が掛かり、薄茶席へ二人でお邪魔しました。
たっぷりの薄茶をT氏に点ててもらいながら、お客様、M氏、T氏、愛真さんと「閑日月」のひと時をご一緒させて頂き、嬉しかったです・・・。四客Yさま、お詰TIHOさまが佐藤愛真さんの懐石教室の生徒さんでもあり、愛真さんも嬉しそう・・・。
皆さま、本当にありがとうございます!
こうして「長月・名水の茶事」は無事に楽しく終了いたしました。
帰りにはすっかり雨が上がり、Yさま宅へ向かうお客さまをそっと見送りました。
追伸)
茶事のあれこれを思い出しながら書き留めていたら、ご亭主M氏からメールが届きました。
「体調不良になり特別稽古をお休みします・・・」とのこと、きっと茶事のお疲れがどっと出たのでは・・と案じています。
本当に渾身の、全身全霊の茶事でしたもの・・・感謝!感激!です。