(後座の床・・・大山蓮華とアケビ)
後座が閑まるのを待って、緊張感の高まりを感じながら濃茶点前をしました。濃茶点前のこの瞬間が大好きです。
袱紗を四方に捌きながら気持ちを調え、点前に集中していきます。先ずは茶入、それから茶杓を清め、茶筅通しをしてから茶碗を拭き上げます。
濃茶はお二人で1碗とさせていただきました。茶入から二人分を掬いだし、湯を入れて練り始めると、馥郁とした茶香が立ち上り茶室を満たしていきました。前回の「ひねもすのたり正午の茶事」では何度も湯を足しましたが、今回は湯量がスムースに決まり、ゆっくり練って差し上げました。
お服加減を伺うと、「美味しく頂戴しています」の声に安堵して2碗目にかかりました。
1碗目の茶碗は黒楽、一入作の銘「不老門」です。2碗目は、小堀遠州流のお客さまでしたので茶碗は御本三島、愛称「伊備津比売(いびつひめ)」を選びました。
濃茶は坐忘斎お好みの「延年の昔」(星野園詰)です。
2碗をゆっくりお飲みいただいてから、床の花の話になりました。
(朝の蕾が少しずつ開いて・・・「色即是空」)
鉄燈明台の花入(白洲正子好み)に大山蓮華とアケビを生けました。
花はいつも時間を掛けて探しますが、今回はご近所のSさん宅の大山蓮華に決めていました。
「大山蓮華を分けて頂けませんか?」勇気を出してSさん宅を初めて訪ねると、「どうぞお使いください。前日ではなく当日の朝に蕾を選んだ方がよいのでは・・・」とSさん夫妻。茶事の4日前のことです。
当日8時過ぎに伺うと、S氏が大山蓮華の大木から純白の蕾の枝を2本切り分けてくださいました・・・
濃茶の茶入は薩摩焼の胴締め、15代沈壽官作です。仕覆は能衣装裂で、仕覆をお習いした小林芙佐子先生の仕立てです。
茶杓は前掲の銘「花の宿」、紫野高桐院の松長剛山師の御作です。
後炭を省略し、茶箱・花点前で薄茶を差し上げました。
それで、濃茶に使った水指、杓立、建水を水屋へ下げて、風炉を点茶盤の中央に置き直し、座卓の小さな机を建水用の台にしました。
お点前は半東KTさん、暁庵が半東を務めます。
(麻の葉模様一閑張の茶箱です)
山道盆に茶箱を載せて持ち出し、KTさんの花点前が始まりました。
鉄瓶ではなく釜を使用するので、建水に蓋置、柄杓を掛けて持ち出します。点茶盤の点前座は狭く、盆や蓋置の位置などの工夫が必要ですが、ベテランのKTさんに全てお任せです。
茶箱の薄茶では茶碗に古帛紗が付き添っていて、薄茶を頂きながら茶碗と古帛紗も鑑賞して頂きました。茶碗は、ギヤマン、ペルシャ碗の写し、ホトトギス画の平茶碗、牡丹画の平茶碗です。
棗、茶杓、茶筅筒、茶巾筒、仕覆、茶箱が拝見に回されましたが、盆にのせて拝見して頂きました。小堀遠州流の方も正客に見習って、袱紗を広げてしっかり拝見してくださって嬉しかったです。
(拝見の時の写真です・・・ピンボケでごめんください)
茶箱は麻の葉模様一閑張です。半東KTさんがウン十年前に最初の先生から茶名拝受の時に頂いた、記念の宝物でした。その後、少しずつ茶箱の中身を買い足していったそうです。
棗と茶筅筒は溜塗、仕覆は格子花鳥紋、茶杓銘は「かきつばた」です。
中でもギヤマンの主茶碗が素敵でサプライズがあり、暁庵のお気に入りなのですが、写真が・・・。ホトトギス画の茶碗を記念に掲載します。
(ホトトギス画の茶碗と古帛紗)
薄茶は「金輪」(丸久小山園)、振り出し(志野焼)の金平糖は緑寿庵清水製です。もう1つ、ガラスの大皿で「千代古禮糖 (ちよこれいとう) 」(諸江屋製)をお出ししました。
薄茶ではお話がいろいろ弾み、終始なごやかで楽しく、終わってしまうのが残念に思うほどでした・・・皆さまの一座建立に感謝いたします。
素敵なお客様、お手伝い頂いた半東KTさんと懐石小梶由香さんに心から御礼を申し上げて、これにて終わりといたします。
ありがとうございました。 (4)へ続きます)
聴花の茶事・・・(4)後礼のお手紙へ続く (1)無我へ