暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

雪の夕去りの茶事 (2)

2011年02月24日 | 茶事
懐石の途中で急に陽が陰り、灯り(電気)をつけました。
主菓子の「ねこやなぎ」(和作製)をお出しして、いよいよ中立です。
行燈の灯りだけにして中立して頂きました。

露地には露地行灯を八個並べ、足元を照らしました。
(六個は100円ショップのグッズを応用した手作りです)
蝋燭を使うので風があると危なく使えません。
幸い風もなく、夕去りならではの露地の風情を味わって頂けました。

迎えつけは、お正客さまと枝折戸のところで跪いて手燭交換をしました。
灯りの美しさやお客様方の気持が伝わってきて、感激しました。
鳴り物も好きですが、こうして直にお迎えするのも好いですね。

後座の床は、野沢蓼州(のざわりょうしゅう)の水墨画をかけました。
上州の山に浮かぶ月と雪に埋もれた寒村を描いています。
最晩年の作らしく、手の震えと闘いながら描いた雪が胸に迫ってきます。

                   

短罫、膳燭、手燭の灯り、釜から上がる蒸気、茶碗の湯気、お客様の視線、
全てが温かく感じられる中で、濃茶を練りました。
いつも緊張感があって、一番好きな瞬間でもあります。
萩焼の茶碗で、祥寿緞子の古帛紗をお出ししました。

「お服加減はいかがでしょうか?」
「大変おいしゅうございます」
ほっとして中仕舞をして客付へ向きました。
茶は伊藤園の万歴の昔です。

                   

お正客さまより「続いてお薄を・・・」と声がかかりました。
干菓子は侘び箪笥(金沢・諸江屋)と辻占(金沢・高砂屋)、
薄茶は「花の宴」(伊藤園)です。
ご夫婦が「男は度胸 女は愛嬌」という同じ辻占を引いて
一同大笑いしたり、仲の良さに納得したりでした。

続き薄茶では、雪にちなむ和歌、金子みすずの詩、禅語などを語らいながら
感服上手のお客様と和やかに一時を過ごしました。
あまりの楽しさにこのまま時が止まってほしい・・とさえ思いました。

寒い時期ならではの雪の夕去りの茶事。
時が移ろう中で雪と寒さを愛でて頂けたかしら?

後礼のお便りを嬉しくウルウルと拝読しながら、あの時の余韻に浸っています。

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   写真は上から、「雪の日に」
             「水墨画  野沢蓼州」
             「短罫と点前座」