暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

小間を夢見て・・・

2011年02月01日 | 茶道楽
ここ数年、小間があったら・・と夢見るようになりました。
新築や増築はとても無理なので、現状の生活空間を工夫してできないだろうか、
と友人の建築家に相談したり、興味深い事例がないものか、心に留めてきました。

そんな中で出会った茶の湯空間を三つ紹介したいと思います。

最初は、二年前大阪に在った「峯風庵(ほーぷあん)」です。
峯風庵が2009年3月末に閉鎖されることになり、庵主の森由紀子さんへお願いして、
名残りの茶事へ伺いました。
(詳しくはブログ「峯風庵 雛の茶事」をご覧ください)。

   マンションのドアを開けると、仕事場兼茶事処になっていました。
   茶室は四畳半、台目床があり、炉が切られています。
   板やパネルを吊っているような造りに目を見張りました。
   囲いの茶室という感じでしょうか。
   吟味された囲いの素材が素晴らしく、無機質の囲いの中に
   遊心と落ち着きのある、もう一つの囲いを創り出しています。

峯風庵の茶室を拝見して、釣り壁や襖で囲い、移動することで
小間を作ったり、元に戻したりできるのでは?
と最初のヒントをいただいた気がしています。

二番目は、銅版画家・山本容子さんが2002年に発表した「浮庵(ふあん)」です。
ごく最近、「茶のあかり 和風照明の工夫」(淡交社)という本で再会しました。
「浮庵」は組み立て式の立礼の茶の湯空間で、
白い四角い天蓋に覆われた箱のようなイメージでしょうか。
従来の茶室の枠組みに捉われない、自由な発想に強く惹かれました。

   床と壁は一枚漉きの大判の和紙で出来ていて、
   下部には光と風が通るための空きがあります。
   和紙を通して柔らかな光と四季の彩りを含んだ風が、
   ふんわりと浮いた茶の空間に透ります・・・と、山本さんは書いています。

春の陽光あふれる草原に置かれた「浮庵」を想像してみてください。
光、風、そして自然・・・
茶の湯空間を考えるうえでとても大事な要素ですが、
既存の茶室に慣れ過ぎて、ともすれば忘れがちな自分を
反省した「浮庵」との再会でした。

三番目は、春草廬・有楽茶会でご縁のあった、だちくゎんさまのブログ「結界ノオト」です。
壮大な茶の湯空間への創造的な取り組みにびっくりしました。

現代のさまざまな状況や場での展開を想定した「茶の囲い」はまさに天の啓示でした。
一部ご紹介させて頂きます(詳しくは是非ブログをお読みください)。

   ひとつは、広大な宇宙空間へ旅立とうとしている宇宙ヨット「IKAROS」に想を得た
   解放系の「宙庵」の囲い、
   もうひとつは、利休の「待庵」や有楽の「如庵」に見られる「高麗(こま)カコイ」
   の手法に学んで、広間・四畳半を仕切った閉鎖系の小間「Joan」の囲いである。

   試作に際しては、「ファイバー紙」との出会いによるところが大きく、
   長大なロールを展開した自由な曲面と日本独特の「屏風」の手法により、
   陰翳に富む新たな茶の空間を創出することができた。

「宙庵」と小間「Joan」のロールの囲いに圧倒され、光と影が作り出す奥行に魅せられました。

               
               
                        

頭の中で考えていたことを整理して、
我が家にも小間(囲い)をつくってみよう・・・
と重い腰を上げました。
それは待合に使っている十畳洋間の活用です。
ピアノ、小物入れなど捨てられない生活雑具、さらに点茶盤、
それらの物と共存しながら小間を作って使ってみよう・・・と。

炉の時期なので三畳のホットカーペットを窓際に敷き、
上に薄縁を敷いてみました。
二双の屏風でこの三畳間を囲い、もう一つの屏風で茶道口を作ると、
一先ず小間の出来上がり、炉は置き炉です。

あとは、光、風、自然をどのように取り入れるか、または遮るかでしょうか。
特に光は重要で、昼間でも遮光したり、日差しの影を利用したり、
難しいけれど面白そう。

茶事テーマ、客組、人数によってバリエーションが次々湧いてきそうで、
愉しみです。

                            

   写真上から、「平戸の鬼洋蝶(おにようちょう)」 (魔除け開運の凧)
            「宙庵」 (結界ノオトより だちくゎんさま提供)
            「Joan」 (結界ノオトより だちくゎんさま提供)