暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

春草廬・有楽茶会 (5)

2009年11月14日 | 三溪園&茶会
手燭が欲しい暗さの中でお道具の拝見です。
「薩摩茶入の形、黒釉のなだれがいいですね。
 茶杓の有馬山型の貝先、節の胡麻竹も風情がありますね
 明るい処でじっくり見たいものです」と、三客のSさま。

薄器は乾漆の面取中次、輪島の春保作で、
蓋裏に松、立ち上りに雲錦の蒔絵があります。
侘びていますが、蓋を開けると華やかな棗です。

「侘びの中に存在する華やかさに惹かれます。
 侘びに徹しきれない亭主を現している棗でございます」
「私も外が侘びて、中を開けるとはっとする蒔絵のある
 薄器が好みです」と、やさしいお正客さま。

「侘びの中に存在する華やかさ」
何気なく言った言葉ですが、茶会の主役である春草廬に
ぴったりあてはまると思いました。

三畳台目の小間は座してみると、落ち着きの中にも
ゆったりとした空間が確保されていました。
台目床と九つの窓が巧みに配置されているせいでしょうか。
天井も思ったより高いと思いました。
そして、侘びた茶室・春草廬に艶やかな色気を感じたのです。

もしかしたら原三渓翁も同じように感じて、白雲邸の奥様の
居間近くに春草廬を最初に移築したのではないか・・・
と思いました。

茶室建築を研究されているだちくゎんさまのお話では、
春草廬は有楽作の国宝「如庵」より古い様式の茶室だそうです。
「如庵」も是非拝見し、座してお茶をいただきたい・・
と、皆で外から春草廬を眺めながら盛り上がりました。
すぐにもツァーが組めそうな勢いでした。

こうして念願の春草廬にて有楽茶会が無事に終わりました。
皆さまと共に過ごした一時は幸せ一杯でございました。
ありがとうございます!

末筆になりましたが、惜しみないご協力を頂いた
素晴らしいスタッフをご紹介いたします。

複雑な動線をものともせず、ご案内してくださったHさま、
広間の点心席を一手に引き受けてくださったYさま、
半東として新米亭主を終始支えてくださったSさま、
心をこめて点心・八寸・菓子を作ってくださった横山和子さま、
水屋で影の仕事に精出してくださったNさまの五名です。

皆さまに励まされて有楽茶会を開催することが出来ました。
この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
本当に本当にありがとうございました!

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      写真は「三渓園の夕景」、だちくゎんさまの提供です。