暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

月の夕去りの茶事 (2)

2009年11月24日 | 茶事
   (つづき)

懐石は伏せ傘です。
伏せ傘についてはいずれまた・・・。

懐石後に初炭でしたが、炭が流れていて
「どうしましょう!」状態でした。
それでもパチパチと音が聞こえたので一安心。
ところが、やはり駄目でして中立で、
半東のKさんがあわてて炭火を入れてくれました。

おまけに雲竜釜でしたので、湯の沸きが遅く
火相、湯相ともに大失敗でした。
黒をもう二本多くすれば・・・?
と反省しきりです。

中立になると秋の陽はすっかり落ちて、
行灯の明かりが露地に並びます。
お正客さまは表千家流ですので、座って手燭交換をしました。
形は異なっていても厳粛で胸躍る一瞬でした。

後座は短罫と手燭の明かりだけです。
床の掛物は大徳寺第514世教堂宗育和尚筆の「喜 無量」。

短罫の灯の元で濃茶を練りました。
暗いので美味しく練れたかしら?
「大変美味しゅうございます」・・ほっとしました。
茶は「涼翆の雫」、翆晶庵の詰です。
主菓子は栗きんとん、翆晶庵製です。
茶碗は昭楽作で長次郎「喝喰」の写しです。

重茶碗でもう一服お点てしました。
益子焼の長石釉がたっぷりかかった茶碗です。
すぐに四客のMさまから
「・・・オイシイ」・・と言う声が漏れ聞こえて
安堵しました。

茶入は瀬戸、中興名物「廣澤」の写しです。
本歌は小堀遠州が古歌に因んで命銘した
瀬戸金華山窯の茶入です。

   廣澤の池の面に身をなして
      見る人もなき秋の夜の月

蓋裏が銀箔の月、なだれの景色が池に映る月の趣です。

その日は晴れたり降ったりで、月をあきらめていましたが、
茶事が終わる頃には月がでました。

家に帰り12時近く、「中秋の名月」を露台から眺め、
月と雲が戯れている様をしばし見とれていました。

「今宵のお客さまにこの名月を
 茶事中に見て頂けただろうか?」
と思いながら、クールダウンしました・・・。


   聴き入りて影に見入りて時過ぎん
       秋の夜半の後座の夕去り  (Yさまより)

   秋の夜に板木聴きつつ待ちわびる
       銀の名月誰にか見せん   (暁庵)