暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

十三夜の茶事 (1)

2009年11月26日 | 思い出の茶事
金木犀の香に包まれている頃、嬉しい手紙が届きました。
10月30日が後の名月の十三夜にあたるそうで、
夕去りの茶事へお招き頂いたのです。

月見とは、陰暦八月十五日の月(中秋の名月)と
九月十三日(十三夜)の月を賞することで、
中秋の名月だけを愛でるのは片身月といって
縁起が悪い・・・と本で読んだばかりでした。

十三夜の茶事は始めてです。
ご亭主はマンションの一室を小間の茶室に改造されて、
お仲間と茶事に精進されているHさまです。

事前に次のようなご案内がありました。
「半東がおりませんので、そのままお入りください。
 奥左手の和室を寄り付きにいたします。
 瓶掛けのお湯をお召し上がりのうえ、
 ベランダに腰掛を置きますので、お出ましください。
 お月様が出てくれますよう、楽しみにお待ちしております。」

寄り付きに入るとススキと月見団子が
人待ちげに迎えてくれました。
侘びた色合の火入れが目を引き、灰型にご精進のほどが
しのばれました。
あとで火入れは高取焼のビアカップと聞いてびっくりです。

香煎をいただいてからベランダの腰掛に座りました。
10月末にしては暑かったので涼風に吹かれながら、
8階から谷あいの黄葉の風情を見下ろし、
高層ビル群との対比を面白く鑑賞しました。

落ち着いた暦張りの小間に席入りすると、
壁床に白い花三種がほの白く浮かんでいます。
夕去りの何ともいえない幸せな一瞬です。

懐石は加賀の産物に彩られた加賀料理。
水屋担当のHさまが郷里から食材を取り寄せたと
お聞きして一同感激でした。

特に蓮と金目鯛と枝豆の煮物碗は味といい、
食感といい、舌鼓をうちながらいただきました。
柔らかく煮こまれた子持ち鮎、治部煮、
和え物(松茸、菊、ほうれん草)も美味しかったです。

八寸はカラスミと銀杏の松葉刺し、
まるでチーズのような柔らかいカラスミが絶品でした。

      (つづく)

                      

      写真は「東雲の夕景」