鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

北朝鮮の作戦にはまって対北朝鮮の制裁を一部解除したのは早計だった

2014-09-20 | Weblog

 北朝鮮が日本人拉致被害者問題で、当初「夏の終わりか秋のはじめに回答する」としていた再調査の結果の報告を「1年後にする」と伝えてきたことが19日明らかとなった。当初から余りにも楽観的な見通しの多い日本側の観測に警告を与える向きが多かったが、どうやらその通りとなってきた。安倍首相率いる首相官邸が世論を親安倍に持ち込もうと誘導したもので、その路線に北朝鮮が乗ってこなかっただけのことだ。北朝鮮は四面楚歌のなかで、日本だけでも味方に引き入れようと嘘八百で塗り固めたシナリオを描き、それに安倍首相が側がまんまとひっかった、と見ることもできそうだ。

 今年7月の北朝鮮の日本人拉致被害者12人の安否確認などを行うために設置した特別調査委員会は金正恩第一書記の直属で、北朝鮮体制内の全機関を調査できる特別な権限を持つという触れ込みだった。12年前に当時の田中均外務省アジア大洋州局長がパイプを持つミスターⅩが北朝鮮側にいて、両者の緊密な連携のもとに日本人拉致被害者5人が生還し、今回はミスターⅩに代わる人物がいる、と噂され、そのルートのもとに12年前の奇跡の再現が図られるものと期待ばかりが高まっていた。

 ところが、果たして北朝鮮のミスターⅩに代わる人物が本当に存在するのか、かつまた日本側の窓口となるのはだれなのかさっぱりわからない状況のなかで、日本が側の期待だけが増幅されていった。拉致被害者の家族がいずれも高齢となり、せめて生きているうちになんとか成果をもたらしたいとの人情からいやがうえにも期待は高まっていた。

 しかし、冷静に考えてみれば、過去12年間全く進展が見られなかった拉致被害者の救出、および消息の解明がなぜいまになって急に再調査されることになったのか考えてみるといい。北朝鮮はいまや核開発を独自に手掛けていて、米国はおろか中国、韓国、ロシアから敵視されるに至っており、核開発を止めるどころか、テポドンの発射を繰り返して国際世論の反発に遭っている。しかも国内は食料難で、国民は餓死寸前にあえいでいる、と言われている。そのため、なんとか日本からの支援を得たい、との思いから打ち出されたのが日本人拉致被害者の再調査である。この作戦に乗って、日本は再調査開始決定だけで、北朝鮮に対する経済制裁の一部解除を決めた。これについては再調査の結果が出てからにしたら、との声もあったが、北朝鮮拉致被害者救済で首相になった安倍首相としては政権の基盤を固めるうえで、譲れないとして強引に解除に踏み切った。

 その結果が再調査報告の先延ばしである。こんなことは当初から予想されたことである。19日午後9時からののNHKニュースによると、北朝鮮へ自らの意思で渡った日本人に対して「日本に帰りたいと思っているか」と北朝鮮政府から問い合わせがあった、と報じていた。日本側ではこんな調査など全く期待していない。あくまでも日本人拉致被害者の安否について知りたいのに、北朝鮮は北朝鮮に居住する日本人や行方不明者にまで広げてお茶を濁したい肚のようである。そんな北朝鮮のねらいは日本からなんとか経済援助を得たい、ということにあるのは明らかで、今後ともノラリクラリとした対応を続けることだろう。

 19日に都内で講演した安倍首相は「今後とも北朝鮮に対しては対話と圧力で対応していきたい」と述べたようだが、どこが対話で、どこが圧力なのか、もっとはっきりとした内容を明らかにしてみらいたいものだ。 

 

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