WALKER’S 

歩く男の日日

13日目 5月6日

2009-06-24 | 09年四国の旅

 5:57
村の家は素泊まりだとモーニングコーヒーのサービスがある。5年間変わらない。ただ、5時半にお願いしていたのが、6時近くになってしまってちょっと焦った。


 6:04
 手早くコーヒーとバナナを頂いて、6時4分に宿を出る。昨日まで5日続けて30km台だったけれど、今日から3日続きの40km台、今日は中村までの43.3km。すぐ目の前の窪川駅が霧にかすんでいる。マッサージのおかげで左足の腱はだいぶよくなった。ところが右足の同じ部分がかなり張りを持っている、ちょっと気になる。


 6:16
1km以上歩いているのにこの標識、へんろ道は短絡路が2ヶ所あるし、ぼくが泊まる宿は市役所の1.5km手前にあるので、ぼくが歩く距離は3km少ない42kmになる。


 6:53
5km地点で国道を離れ左の短絡路にはいる。過去3回この道に入れなかった。標識もシールもたくさんあるのに、こういう道があることも判って行き過ぎてしまう。人の気を逸らす何かがこのあたりにあるのかと思ったりしてしまう。


 6:57
美化センターが見えてくる。へんろ道の上に立っているので、あの中を通ることになる。


 6:59
お遍路のための入り口、常に鍵はかかっていない。今日はどういうことかトラックが入る大きな門もこの時間から開いていた。


 7:00
焼却炉のすぐ横の道を行く。


 7:01
美化センターの裏から本来のへんろ道が始まる。美化センターができる前はずっとこういう道だったはず。


 7:06
片坂第1トンネルの出口の上を通る。


 7:07
トンネルの上の柵のところを歩いてきた。このトンネルの中も2回ほど歩いたことがある。


 7:14
山道を下りてきた所、西尾自動車の前で国道に合流。国道を横切って旧い脇道を行くこともできるけれど、少し遠回りになる。今回は国道を行く。


 7:29
短絡路を一つこなしたので、ぼくの歩く距離はあと34.5km。


 7:39
最初の休憩所に到着、例年より5分の遅れ。足首の腱が完全に影響している。痛みというほどのものはないけれど、かなり気になるし、普段の動きを阻害していることは間違いない。何しろ例年は時速6.41kmなのに、今回は6.07km。誤差の範囲を完全に逸脱している。残りはまだ34km、これから調子が回復する見込みもない。


 8:50
30kmを切った、もう例年のような速さやしっかりした歩きにこだわってはいられない。とにかく、着実に本日のゴールに近づいていくしかない。


 8:56 伊与喜駅
ず~っと前を行く人が見える。そのまま国道を行こうとしている。ここは左の歩道から国道の下をくぐって左の方の短絡路へ行くのが正解。もう少し早ければ教えてあげることができたのに。


 8:57
右が国道、左が短絡路へ入る歩道。左側を歩いていると、遍路シールがちゃんと導いてくれる。かくいうぼくも、最初の時は国道を歩いてしまった。


 9:06
短絡路は大体舗装道路だけど、ここだけ舗装道路をさらに短絡する登りの道がある。


 9:08 熊井トンネル
ごらんのとおり灯りが全くない。すべてのトンネルの中でここが一番の難所だと感じる人もいるだろう、とくに女子は。四元さんも一瞬立ち止まって、しばらく前に進めなかった。


 9:17
踏切を渡る前に、国道を行く人が見えたような気がしたけれど、ここまで来ると先にもあとにもその姿は見えない。


 9:20
例年より3分遅れで2回目の休憩地に到着。お遍路さん優先ベンチが店の前にある。例年が時速6.68km、に対し今回は6.43km。前の区間より少しは良くなったという感じだけれど、足そのものは良くなってはいない。
 3分ほど遅れて、伊与喜駅前で前の方を歩いていた人がやってきた。小柄な女性だった。白いキャップの上にはサングラス、キャップの後からのぞいている髪は金髪の染め残り。ゴミを捨てにこちらの方に来たので「こんにちは」と声をかけたけど、ちらりとこちらを見てほんのちょっと頭を下げただけ、声は出さない、すごく感じが悪い。オーラというよりバリアを張っているという感じ。中に入ってカップの麺かスープを持ってきて隣のベンチで食べている、携帯を取りだしてなにやら通話、もしやしてあの人ではないかとも思ったけれど、ぼくの知っている人とちょっと違う感じがしたので、とてもそうだとは思えなかった。10分ほどで慌ただしく出ていった。その足取りはすごく軽い、ぼくはまだ15分は休むから次の休憩所までに追いつけそうな感じは全然しなかった。


 10:02 土佐佐賀駅
3年前、村の家で同宿だった静岡のUさんは、ここまでの区切り打ちだった。雨が降っていたので、この先の佐賀公園はこういう天気ではもったいないので次の機会にした方がいいのではと薦めたら、この駅から帰っていった。ぼくが遍路宿情報をつくって配るようになったのは、彼がきっかけだった。


 10:12
佐賀の町のはずれにある評判の遍路宿、ぼくは泊まったことはないけれど、何人もの人からこの宿の料理の豪華さを聞いた。来年泊まる予定にしている。


 10:19 佐賀公園
空と海と公園の緑、よく晴れて気持ちがいいけれど、足が痛んでいるうえに気温が上がると、ますます調子は落ちていくかもしれない。


 10:26
打ち寄せる波の画もほしくなって、もう1枚。


 10:31
佐賀公園を過ぎると遙か向こうに伊の岬が見えてくる。へんろ道はあの手前で右に折れてトンネルに入る。今歩いているところが本日の中間地点。ず~っと、ず~っと先を歩く人が芥子粒のように見える。コンビニの女性か、あるいはまた別の人か、確認はできない。


 10:54
20kmを切って、少しは気が軽くなる。この歩道は2年くらい前に整備されたもので、昨年は快調に飛ばすことができたけれど、今年は明らかに昨年より足取りは重い。


 11:11 井の岬トンネル 320m
このトンネルの少し前のところで、昨日岩本寺で見かけた野宿の人を追い抜いた。昨日は佐賀温泉あたりまで歩いたようだ。海岸線から右へ折れる所に休憩所があった。コンビニから7.4km地点なので来年からそこで休憩することにしよう。


 11:24 伊田トンネル 172m
トンネルの中にコンビニの女性が見える。何とか追いつくことができた、でも、計算してみると、彼女の時速は5.3km前後になる。女性でそんなに速く歩く人を見たことがない。男性でもそこまでの速さで歩く人は珍しい。バリアと同時に、お遍路にかける気合いとか意気込みのようなものを感じずにはいられない。


 11:27 観音寺
トンネルを抜けた所に小さなお寺がある。2年前まではこの向かいのバス停で休んだけれど、昨年はこの小さなお堂で休ませて貰った。コンビニの女性がこのお大師さんを見つけるや、立ち止まって手を合わせて拝んでいった。その姿を見ると、やはりあの人かもしれないという感じがした。


 11:44
お堂の掃除に来ていた女の人が、バッグの中からキャンディーを取りだして、「これあげる」と袋ごと置いていってくれた。「お水は、この先少し行った所にペットボトルが置いてあるからそこで貰ったらいいよ」と教えてくれる。それは知っていた、前に一度貰ったことがある。


 12:03
前までは小さな籠の中に入れてあったけれど、ちゃんとボックスができていた。
「お疲れさま・・・・ ご遠慮なく(容器も)ご自由にお持ち帰り下さい・・・・」
ありがたく1本頂いていく、ぼくの使っているボトルもだいぶ汚れてきた。


 12:17 土佐東寺庵
観音寺から2.2km、東寺庵の前を通るといきなり中から声をかけられる。お茶でも飲んで休んでいきませんか、と若い女性の声。休んだばかりだったので、一瞬ためらったけど、無視することも罪深いような気がして、休ませて貰うことにした。先の予定は大幅に狂ってしまうけれど、あまりに自分勝手に歩いてきたから、たまには自分を捨てるのもいいだろう。どうせこの足の調子では、いつものような感じでは歩けまい。と心の中で言い訳をしながら、入れて貰った熱いお茶を頂く。お菓子などもいっぱいあったけれど、そちらの方には手が伸びず、胡瓜のお漬け物ばかりに箸が伸びた。やはり野菜が不足しているのを身体が自然に察知しているのかもしれない。
 しばらくすると、橋本さんがやってきて、声をかけられるままに中へ入ってくる。ぼくより1時間もあとに出発したのに、かなりいいペースでここまで来ている。コンビニで会った速足の女性の話をする。そのあとに、野宿遍路さんもやってきた。彼は東京の人、初日に宿に泊まったきりあとはすべて野宿だという。今日も四万十川の近くにある大師堂に泊まるという。場所を聞かれたけれど、そういうものがあることなど知らなかった。彼も例によってお金がないからという理由で野宿をしているといった。でも、野宿でもお金はかかる、3食食べなければならない。1日1500円として40日で6万円、納経費と四国までの交通費で4万円はかかる。合わせて10万円。ぼくは全部宿に泊まって13万円で一巡したことがある。野宿をしなくても大して変わらない費用で巡ることができるのにと思っている。宿に泊まることでもっと豊かなお遍路ができるのにと思っている。だから、野宿をしている人に、実際どれくらいの費用がかかるのか聞いてみたいといつも思っている、でも、もちろん今回も聞けなかった。


 14:09
東寺庵では思わぬ長居をしてしまった。居心地がよくて、50分近くも居座ってしまった。13時8分に橋本さんと一緒に発つ。橋本さんは入野浜の道を行くというので、2kmくらい一緒に歩いて浮鞭郵便局の前で別れる。休みすぎたので宿まで13km休みなし、コンビニで食料を仕入れるだけだ。足の調子はますます悪くなる。写真を撮る余裕すらなくなっている。とにかく、できるだけ早く辿り着きたい、それだけしか考えられない。


 14:39
3km=30分、時速はジャスト6km。前に進んでるだけで良しとしよう。3時半くらいには着けることだし。


 14:41 逢坂トンネル 210m
どんなに余裕がなくてもトンネルの写真だけは撮り忘れない。


 14:44
トンネルを抜けると四万十市、もう、あと○○kmの標識を見ることはない。


 14:55
買い物がてら一休み、1時間45分歩きっぱなし。調子が悪いなりに休みもとらずよく歩けたものだと思う。


 15:32
昨年まで工事中だった新しい中村大橋ができていた。歩道橋は右側から左側に、登っていく所は一部まだ工事中だった。


 15:35
写真がぶれてしまった、これが今日1日の歩きを象徴している。カメラすらまともに構えられないほどへろへろになってしまった。コンビニでちょっと時間がかかったので、3時半までに入ることはできなかったけれど、お風呂は4時からなので、ちょうどいい時間ではある。お茶は冷たいのがいいですか熱いのがいいですか、と訊かれたので迷わず冷たい方をお願いする。ポットにいっぱい氷が入った麦茶を用意してくれた。飲み終わったあとも水を足して翌朝まで氷水を楽しむことができた。ここも坂口屋と同じで昨年はお風呂がややぬるめだったけれど、今年はちょうど良かった。やはり石油の値段が如実に影響しているのだと思わずにはいられない。痛んだ足をほぐすためにできるだけゆっくり、じっくり楽しむ。大きなお風呂にぼくひとり。
昨年から素泊まりのみ、3500円。