WALKER’S 

歩く男の日日

11日目 5月4日

2009-06-19 | 09年四国の旅

 7:02
11日目は36km、歩く時間は6時間くらいで札所も一つなので、ゆっくり7時に出発する。同宿の方はみんな発たれたかと思いきや、玄関にリュックが一つおいてある。昨日清滝寺に行けなかった人が軽装で往復しているのだろう。善楽寺で話したベテランの方かもしれない。
 天気は曇り、予報では一時雨。数日前の週間予報では今日も明日も雨マークが消えていたので、もしかして高知県はこのまま雨なしで過ごせるか、と期待したけれど、雨マークはきっちり復活した。この時季、高知県で10日続きで雨なしというのは、奇跡、というよりむしろ天変地異に近い。


 7:11
県道に当たると右折して、しばらく県道を行く。山が迫ってくる。3年連続でトンネルを行ったけれど、今年は4年ぶりに峠を越える。山道の方が絵になるところがありますので。山道を行くと20分以上余計にかかるけれど、時間の余裕はたっぷりある。


 7:35
この休憩所がトンネルと峠道の分岐点、まだ3km半なので休まない。青龍寺まで11km休みなし。


 7:36
ということは、15分以上は登ることになる、清滝寺の倍くらいだ。4年ぶりなのでどういう坂道だったかほとんど覚えていない。


 7:45
大きく蛇行しているので振り返らなくても登ってきた道を見通すことができる、こうしてみるといい感じの山道らしい山道。


 7:51
登り口から15分で峠に到着、山道は時速3kmが標準的だから、いい歩きだったといえる。右へ行くと展望台があるけれど、そこまでの余裕はない。


 7:52
下りの最初は緩やかで歩きやすく、スピードが乗りそうな坂。こういう感じは最初だけということは何となく記憶に残っている。


 7:53
展望台に行かなくても宇佐の海が見える、ぼくにとって最大の難所である宇佐大橋もはっきり見えている、なんともいえない。


 8:02
山の湧き水、一口飲みたかったけど、一口で終わりそうになかったので我慢する。でも普通の人ならここで休むのがいいかもしれない、36番までのほぼ中間地点、ベンチはないけどね。


 8:08
山から下りてきた所。ここからすぐ先、町に入る手前の水路の周りが工事中で今まで歩いていた道が歩けなくなっていた。水路の対岸に仮の歩道が設けられている。県道に上がるところも工事中で一つ西の筋から上がる。


 8:27 宇佐大橋
いよいよ最大の難所に挑む。いつも相当の緊張と覚悟を要する。ここに比べたら、焼山寺も横峰寺も全然怖くない。


 8:29
写真ではよく分からないけれど、橋を登りかけた所から右下に渡船場跡の記念碑が見える。今までは橋を渡るのが精一杯でこの渡船場跡を確認したのは今回が初めてのこと。


 8:36
 橋を渡り終えた所に、意外な標識があった。たぶん昨年まではなかったのではないか。この道を行くと本当に36番まで辿り着けるのだろうか、だとしても相当時間がかかるような気がする。もちろん挑戦する気にはなれない。


 8:47
橋を渡ってからここに来るまでに男性2人、女性4人の打ち戻りの人とすれ違う、いずれの人も結構なスピードだった。目の前の二つの宿か、汐浜荘に泊まった人たちだ。


 8:53
36番が近づいた雰囲気のある遍路道にぽつんぽつんと白い物が道端に見える。お地蔵様かなと思ったけれど、近づいてみると四国八十八ヶ所のご本尊が順番に並べられているのでした。いわゆるミニ四国ですね。このご本尊すべてに手を合わせる余裕はもちろんない。申し訳ない。


 8:56 青龍寺
トンネルを行くより23分遅く116分で山門に到着、時速は5.69km、あれだけの山を登ったのだから6km出ないのは当然です。帰って調べてみたら4年前と同じタイム。
 連休ということもあって、車遍路があとからあとからひっきりなしにやってくる。納経所でも久しぶりに待たされることになった。歩き遍路は全く見当たらない、この近くに泊まった人はとっくに次の札所に向かっているし、土佐に泊まった人はまだ1時間くらいあとになるだろう。お参り、納経を含めて39分の休憩、水屋で1L水を補給して9時35分に発つ。


 9:56
ここは打ち戻りでもう一度同じ橋を渡らねばならない、1回で終わらないところも難所らしい。この橋の欄干がとにかく低い、ベルトのラインから20cmくらい低い。別の、ベルトくらいの高さの欄干の橋を行くと、恐怖感は半分以下だった。この20cmの差が大きな分かれ目になることを思い知らされる。


 10:07
非常に評判のよい遍路宿汐浜荘、昨年の今頃は女将さんの体調が優れなくて休業していたけれど、今は営業しているのだろうか。高知屋からちょうどいい距離だし値段も手頃で、ここがなくなると困るお遍路は多いと思う。


 10:10
休憩所であることは確かだけれど、なんだか野宿遍路のための無料宿の趣もあるような感じがした。壁には無数の納め札が貼られてあった。


 10:23
浦ノ内湾の複雑に入りくんだ海岸線を行く県道23号、入江の向こう側を行くお遍路さんが見える。ぐるっと回って20分後くらいに同じ所を歩いているはずだ。


 10:38
できたばかりの民宿、青龍寺から6kmちょっとの地点。土佐市に泊まって清滝寺を往復してから青龍寺に向かう人にとっては24kmくらいになるのでちょうど都合のいい場所になる。30kmはきついという人は多いからね。


 10:44
この鮮やかなローズピンクに思わず足を止めてしまった。残念なのは写真ではその輝きの半分も捉えることができないこと。本当はもっと光り輝いている、ぼくが今までで見たピンクの中で最も美しいと言っても過言ではない。


 10:48 深浦集会所
お遍路さんのための休憩所かどうか判らないので、一度も休んだことはないけれど、雨が降ったときは休ませて貰おうと思っている。浦ノ内湾沿いには屋根のある休憩所が本当に少ない。


 10:53
青龍寺から7.7km、この駐車場の縁石がぼくの休憩所。次の休憩地との中間に近い所には適当なおやすみ所がないので、仕方なくここで休むようになった。もう5回目になる。


 11;21
浦ノ内小学校の前に小さな屋台が設置してあった。「葉書に書いて、浦ノ内小学校まで送って下さい」とある。葉書が入っています、と書いてあるボックスに葉書は入っていなかった。この小学校ではお遍路について理解を深める研究をしている。


 11:27
 小学校から600mの所に新しい遍路小屋ができていた。中では男性が女性になにやら大声で力説している。休んでから20分も経っていないので立ち寄る必要はないけれど、次回からは使えるかもしれない。青龍寺から9kmちょっとだから無理のないポイントだ。次の仏坂への分岐点の所で休まず、トンネルを抜けた所の休憩所で休めば次も9kmちょっと。これで雨の日も心配なく歩ける。


 11:38 浦ノ内トンネル
一時海岸線を離れる。このトンネルができる前は2kmくらいは遠回りの海岸線を歩いたのかもしれない。あるいは山越えの道があったのか。


 12:10
ここに来る少し前からぱらぱらと雨が落ちてきた。傘を必要としないくらいの弱い雨、やっぱり天気予報は正確、高知に入って初めての雨、この旅2回目の雨になる。
去年はここでアイスを買ってすぐそこにある休憩所で休んだけれど、今年は我慢する。傘をさしながらではアイスの値打ちもないしね。


 12:11
仏坂へ向かう道(県道314号)と湾岸線の道(県道23号)の分岐点のすぐそばにあるベンチ。屋根も何もないので、休憩所ともいえないようなもの。傘をさしながら軽食を摂る。今日はあと11km、夕食は宿で頂くので買い物はしなくていいし、札所もないので、たっぷり24分の休憩。次の休憩所で同じくらい休んでも3時までに楽々宿に着けそうだ。


 12:48
青龍寺を出てから本当に人に会わない。元々人通りの少ない道ではあるけれど、お遍路さんにも会わない。自転車で行き過ぎていく中学生が、元気に挨拶してくれる。最初の一人は「こんにちは」、次の4人連れは「さようなら」、最後の一人は「こんにちは」。それぞれに合わせてぼくも元気に挨拶する。久々に声を出してそれだけで元気になる。雨もあがってしまった。


 12:56
スカイライン(県道47号)が合流してくる所、スカイラインは1.7km近道だと地図には書いてあるけれど、登り下りが結構あって体力を消耗するのであまり近道にはなっていない。ぼくは1度歩いたけれど、2度と歩く気にはなれない。


 13:06 鳥坂トンネル
前のトンネルは中央部分照明がなくて真っ暗だったけど、こちらはちゃんと点いてます。長さは250mくらい。歩道はない。


 13:23
分岐点から5km弱にあるヘンロ小屋、今まで休んだことはなかったけれど、今回は休むことにする。分岐点と宿のほぼ中間地点になる。四元さんはお接待を受けていたけれど、お茶の用意はされていなかった。27分の休憩、楽々3時までに着ける。


 14:09
 今まで歩いてきた風景とは全くそぐわない、巨大で奇怪な建造物が現れる。ここだけは別世界、別次元のような感じさえする。写真ではその違和感が全く表現できないのが残念。廃熱を利用した発電所もあるそうで、とにかく広大な敷地面積。


 14:21
大峰橋を渡ると左手に須崎港が見えてくる。


 14:26
土讃線大間駅の側にある踏切を渡る。最初の時、ここまで来て電車で高知駅に戻った。次の日が警報の出るような大嵐で歩けないと思ったから。でも、本当に何も知らなかったし、未熟だったなあと思う。このあたりに泊まる宿はいくらもあったのに。この駅を見る度、初めての自分を思い出す。


 14:26
踏切を渡るとすぐ国道56号、明日から2日間はほぼこの道を歩く。


 14:31
4年前までコンビニだった。ずっとそのままだったけれど、創作料理の店として復活。こういう形での復活はとても珍しい。宿まで2.3km。


 14:34
こんな所で松山といわれても・・・という感じ。そんな先のことまで考える余裕なんて全くないし、第一辿り着けるかどうかも判らない。


 14:46
4年前はこの道の少し手前の所で左折してしまった。早めに気がついたので大して遠回りにはならなかったけど。別格5番大善寺にお参りすると、目の前のトンネルは通らずに済む。
 この交差点にあるラーメン屋さんの前に10人くらいの行列ができている。鍋焼きラーメンの文字が見える。連休で、遠方からこの珍しいご当地ラーメンを目指してきた人もいるかもしれない。


 14:49
大善寺の本堂は小高い山の上にあるので、境内から下の宿坊までケーブルカーが通じている。宿坊に泊まらないと乗ることはできないようですが。


 14:50
大師堂は下の街道沿いにある。目の前に本日の宿柳屋旅館がある。


 14:54
柳屋旅館は6年連続の投宿、6回泊まるのは、土佐の喜久屋旅館と松山市の長珍屋の3つだけ。
 この旅館は3年前に放送されたNHK土曜ドラマ「ウォーカーズ」の撮影に使われた宿、スタッフからのお礼状や記事や撮影スナップなどが展示されている。反対側には風吹ジュンさん、戸田菜穂さん、鷲尾真知子さんのサイン色紙が飾られていた。


 16:44
昨年、一昨年は江口洋介さんが泊まった離れの部屋に泊めて頂いた。今年は1ヶ月前から研修に来ている学生さんがそこに滞在し続けているので、いつもの2階の右の部屋に通される。この部屋も全然悪くない、次の間があるし、隣の部屋とは壁で接することなく、廊下を挟んでいる。ケーブルテレビが入っていて、地元のお知らせのチャンネルには常にモーツァルトかベートーベンの曲がBGMとして流れている。「戴冠式」や「きらきら星」や「田園」など、ぼくの大好きな曲ばかりが次々と流れてしばし旅の疲れを忘れることができる。


 17:50
5時半頃からお客さんが続々やってくる、廊下を挟んだ隣の部屋で数人が談笑している。女将さんの話によると、宴会が入っているそうだ。宴会には8人が参加するけれど、泊まるのはそのうち2人だという。それ以外のお遍路のお客さんはいないようだ。連休の最中なのにお遍路はぼくだけというのはすごく意外、須崎は青龍寺の周りの宿から25kmくらいだから泊まる人が多いはずだけれど、歩きの人は6人しか会わなかったし、そのいずれもがかなり速足だったから4km先の安和の宿まで行ってしまうのかもしれない。次の岩本寺までが、須崎からだと30km、安和からだと26km、大きな峠もあるので安和まで頑張る人が多いのは確か。
 宴会があるので、夕食は部屋食になる。女将さんが2階まで運んでくれる。この宿に泊まった人のウェブページを見ると、宴会がないのに部屋食だったと書いていたから、基本的に部屋食なのかもしれない。海老フライの海老以外は総て地元の食材、刺身は鰹と石鯛、鰹はほんとにいい物は刺身で食べると地元の人はいう、タタキにするのはちょっと質の落ちる物なのだと。石鯛も珍しい、たぶん初めて食すると思う。両方とも最高、しっかりした味がある、水っぽくない、臭みなど皆無。やはり土佐に来たら本物の鰹を一度は味わわなければと思う。ここでしか食べられないものですからね。
 宴会は相当にぎやかでぼくの部屋からでも話し声はよく聞こえたけれど、なんていうことはなかった。女将さんは気にしていたみたいだけれど。6時半くらいから始まって8時すぎには終了、終了するころにぼくは床に入った。携帯音楽プレーヤーのイヤホンを耳に入れると、すぐ眠ってしまった。泊まる人が部屋に戻ってくるのも気がつかなかった。