WALKER’S 

歩く男の日日

14日目 5月7日

2009-06-26 | 09年四国の旅

 5:55
朝起きると、右足の張りはかなりひいていた。昨日の朝の左足くらい気にならなくなっていた。もちろん押さえると痛みのようなものは残っているけれど、歩くときには全くといっていいほど影響はないようだ。でも、念のため、朝のうちはやや押さえ気味にゆっくり歩くことにする。
 5時52分に宿を発つ、中村大橋から中村市街の方を見ると低い雲(霧)が山の方から流れ込んでいる様子が見てとれる。今日も天気はいいようだ。足摺まで41.9kmの行程、今日は3時までに宿に入る。


 6:14
四万十川と後川が合流するポイント、中村市街はこの二つの川に挟まれた中州の上にある。中村大橋は後川に架かっている。


 6:16
橋本さんが泊まっている民宿月白、ここから少し入った所にあるので建物は確認できない。6時半からの朝食だと、30分くらいあとからの出発になる。今日はもっと早い時間に追いつかれるかもしれない。


 6:31
ここまで4kmを例年より3分遅れ、撮影の時間もあるし、意識して速く歩かないようにもしているので、まあ納得のいく数字。右足の張りはほとんど気にならない。
毎年このコンビニで食料を仕入れるけれど、今回はもっと先の下の加江のコンビニで買うことにする。


 6:33
全長690m、雨さえ降っていなければこの橋を怖いと思ったことはない。


 6:42
橋を渡りきった所にある道標、へんろ道は短絡路が数箇所あるので36kmが正しい数字。


 6:46
釣りキチ三平が四万十の主、アカメに挑んだのがこのあたり。


 6:47
四万十大橋の上に人影が見える。たぶん橋本さんだろう、6時半に月白を出ればあの位置くらいになる。次の休憩所までに追いつかれるかもしれない。


 7:41
30分くらい前に、昨日東寺庵で一緒だった野宿遍路さんを追い抜いた。大師堂はちゃんと見つけられたと言っていた。歩くほどに右足の張りは気にならなくなってきた。普段の歩きとほとんど変わらない。


 7:42 伊豆田トンネル 1620m
四国のへんろ道で2番目に長いトンネル、宇和島の松尾トンネルを通らなければ(峠越えのへんろ道を行くのが一般的)1番長いトンネルになる。このトンネルの中で、四万十市から土佐清水市にはいる。その標識があって撮影もしたけれど、照明不足で上手くいかなかった。


 7:59
3年くらい前にとりつけられた清水川荘の看板、もうこんな看板は必要としないくらい清水川荘は人気の宿になっている。それまでは下の加江から宿毛まで26kmの間に宿がなくて、選択肢がかなり限られていた。その途中にこの宿ができたことによって、多くの人が、より楽に、自分に合った行程で旅を続けられるようになったことは間違いない。


 8:04
最初の休憩地ドライブイン水車に到着、例年より9分遅れだけれど、足の調子は全然悪くない。速くはないけれど安定した歩きができたと思う。先は長いから、今は足の調子を整えるのが第一。


 8:17
現在地は北東の角の根元、本日のゴールは南の先っちょ、その距離27.5km。土佐清水市は広い。ぼんやりそんなことを考えていたら、橋本さんがやってきた。10分くらいの遅れ、開口一番、ぼくが昨日コンビニで会った足の速い女性と同宿だったという、「彼女は有名な作家さんで名前は・・・、」、家田荘子さんじゃないですか。「そうそう、そうでした」。やはりそうだったかと、すべて合点がいった。彼女は月に1回、2泊3日の区切り打ちで四国を巡っている。1年で36日、それで四国を1巡する、昨年2巡目が終わって今年も3巡目を続けていることは知っていた。でも、5月でここまでというのは、かなり速いペース。昨日はぼくが泊まった村の家の隣の宿、まるか旅館を5時に出発したそうだ。何と、我々と同じ40km以上の距離をこなしている、そして、今日も足摺までの40km、距離が長いので朝食も摂らず先に出ていったそうだ。それだけの距離をこなすためには、いちいち愛想をして時間を無駄にすることはできない、敢えてバリアを張って人を寄せ付けないようにしているのは仕方のないことだろう。宿では、そんな必要がないので、とても気さくで話しやすかったそうだ。ぼくのこともちゃんと覚えていて話題に上ったらしい。


 9:14
28分ほどの休憩で、8時32分に橋本さんと一緒にドライブインを出発。下ノ加江の手前からは国道を離れる旧道があるけれど、郵便局に用事があるので国道をそのまま行く。ドライブインからは緩やかな下りが続くのでとても歩きやすくスピードも乗りやすい。郵便局でお金をおろす。納経料の百円玉はまだ余裕がある。


 9:16
郵便局のあとはすぐ前にあるコンビニで食料を仕入れる。まだ朝早い時間だけど、この先にはコンビニもスーパーもない。


 9:48
国道からちょっと高くなった所に、民宿いさりびがある。ぼくは泊まったことはないけれど、まあ最高の宿といっていいでしょうね。昨年会った二人の方からこの宿の素晴らしさを直接伺ったし、ウェブサイトでも読んだことがある。ぼくは、来年泊まる予定にしている。


 9:48
絶景じゃないですか、橋本さんが感嘆の声を上げる。この画をバックに写真を撮って欲しい、というのでシャッターを押してあげる。ぼくのも撮りましょうか、と言われたけれど、自分の姿は邪魔にしかならないので遠慮する。ここは、いさりびのすぐ前、いさりびに泊まると部屋からこの絶景が楽しめる、天気がよければ太平洋の日の出も拝むことができる。最初は、ほとんど興味を示さなかった橋本さんも、次回は絶対泊まりたい、と思っているようだ。


 9:53
民宿久百々の前のバス停で2回目の休憩をとる。ここまでは例年とほとんど変わらない速さだった。もう足のことは心配する必要はないようだ。時速は6.5km、痛みは全くない。23分の休憩で出発。久百々から山の中へ入る短絡路を行く、橋本さんはこの道は初めてだという。ぼくも最初の時はこの道を行くことはできなかった。


 10:34
久百々からの短絡路の出口ではなくて、2つ目の短絡路の出口、この二つ目は地図に赤点線がついていない、あんまり近道になっていないようだ。


 10:35
国道に出てくると、すぐ3つ目の短絡路の入り口が見えてくる。この道は初めてでも迷わず入れるようになっている。


 10:42
三度国道へ合流する、この少し手前から大岐海岸が見えている。前に見える白い建物は民宿大岐マリン、家田さんのなじみの宿、もしかしたら下の喫茶店でおそい朝食を摂っているかもしれない。


 10:43
海岸を歩きますかと尋ねたら、歩きにくいので行かない、という答え。ぼくは往く時1回、打ち戻りで1回歩いたことがあるけど、それで充分という感じ。時間は計っていないのではっきりしたことは言えないけれど、あまり近道にはならないと思う、もしかしたら余計に時間はかかるかもしれない。


 11:06
大岐海岸が終わろうかという所から国道を離れる遍路道がある。旧い道だけれどあまり近道にはなっていない。これから先にも何ヵ所か同じような標識があるけれど、遠回りの道が多く、無視することも多い。


 11:09
大岐海岸への道、往路はここを登ってくるし、打ち戻りはここから下りていく。


 11:13
国道に合流するのは本日最後。これから先にも脇道、短絡路はあるけれど、半島の自動車道は県道になる。


 11:17
幡陽小学校の前にあるバス停、今までずっとここで休んできたけれど、今回は休まない。久百々からここまで5.8km、ここから金剛福寺まで13.7km。かなり変則的な場所にあるので、もっと中間地点に近い所で休むことにする、心当たりもある。


 11:21
この宿の夫妻のおもてなしの心には本当に感激した、と松山の宿で一緒になった人から切々と聞かされた。一時期休業しているような噂を聞いたけれど、今はちゃんと営業していることを確認した。


 11:23
民宿星空の前の路地を左へ入る、橋本さんは前回この道へ入れなかったそうだ。ぼくも最初の時は直進してしまった。


 11:26
この陸橋の上から撮った四元さんの画は印象的だった。ぼくがこの道を歩いたのは3回目の時から、民宿星空のご主人にうながされたからだ。2回目の時は以布利の町の中を通る旧い道を歩いた。そちらの方へ行く標識も立っていた、今はもうないけれど。


 11:33
以布利港を過ぎ、頼りない小橋を渡り、波打ち際の道を行く。道といえるほどの道ではないけれど。


 11:34
海岸の道は長くはない、すぐ山登りが始まる。


 11:39
自動車道に上がってくる。県道といっても道幅が狭いのでこの道を行く車を見たことがない。


 11:41
気持ちの良い歩きやすい道。


 11:42
県道から左下に下っていく。


 11:46
県道に上がってくるとすぐ次の短絡路が待っている。その入り口から家田さんが引き返して下りてくる。ようやく追いついたというより、どうして正しい道なのに引き返してくるのか首をひねった。多くのお遍路はできるだけ旧いへんろ道を歩きたいと思うけれど、彼女は全くそういう感覚がなくて、むしろ危険そうな、さびしげな、山道はできるだけ避けたいと思っているようだ。2巡目の時も愛南町と宇和島市の境の柏峠を避けて国道を歩いたくらい。昨日伊与喜駅から短絡路を行かなかったのも、道を知らなかったのではなく、熊井トンネルを積極的に避けたのかもしれない。


 11:46
ぼくたちはもちろん短絡路を行く。この道はさっきの短絡路と違って登り下りがほとんどなくて本当の短絡路になっている。


 11:50
真っ昼間だから、こういう道でもとくに避ける必要はないと思うけれど・・・。


 11:51
県道に出てきた所に茶屋がある。ここの縁台で休ませて貰う。金剛福寺まで11kmの地点。2時間以内に着いてしまうから、ここで30分は休む。遅れてきた家田さんが相変わらず素っ気なく目の前を通り過ぎていく。


 12:21
今まで歩いてきた所も県道27号だけれど、ここからが本当の自動車道。


 12:36
窪津の町に入った所に先ず鰹節工場がある。もう200mくらい前から香ばしい香りが漂っていた。


 12:45
窪津の町の正面にある山を登る、この短絡路を入れない人は多い。ぼくも、このジグザグの山道を登ったのは3回目から。


 12:50
県道に合流する少し前のところから県道を歩いている家田さんの姿を確認、本当に短絡路を意識的に避けているみたい。


 12:53
昨年、一昨年は、この前にあるバス停で休憩した。幡陽小学校と金剛福寺とのほぼ中間地点にある。でも今回は休まない。あと1時間ちょっと。写真を撮っている間に、家田さんとなにやら話していた橋本さんが追いついてくる。


 12:32
写真だとこれが坂道に見えないのがとても残念、実際は10度もないのだろうけれど、歩いている身にはその倍以上の感じがしている。しかも長い。最後のふんばり所。


 13:51
ようやくゴールが見えたという感じ。ちょっと早すぎるという感じもするけれど。


 13:54
本日最後の短絡路の入り口、橋本さんはこの道は知らなかったそうだ。この道はかなりの近道になる、38番まであと1.3km。


 14:04
本当は亜熱帯植物だけれど、そう言いたくなるくらい前日までの植生とは違っている。この緑のトンネルを抜けると金剛福寺は目の前。


 14:07 金剛福寺
幡陽小学校から141分、昨年より5分遅いけれど撮影のロスタイムを計算に入れていないから、ほぼ同タイムと見ていいかもしれない。後半は、もう足の張りは全然気にならずいつもの歩きと変わらなかった。昨日と全然違う歩きができて大いに満足。


 14:08
1時間47分歩きづめだったので、相当喉が渇いていた。水屋で水を飲むことは滅多にないけれど、とりあえず2,3杯頂く。


 14:23
48時間ぶりのお参りを滞りなく済ませ納経所へ、墨書が終わると「歩きですか」と訊かれる。はい、と答えると「歩きの方にはこれを差し上げているんですよ、お気をつけて」と、納経帳と一緒にこれを渡してくれた。すごくかわいい !! ぼくは携帯を持っていないからストラップは無用だけれど、来年からザックに付けて巡ろう。


 14:29
金剛福寺から宿までは10分くらい、まだ時間の余裕があるので中浜万次郎の前を通って岬の展望台へ向かう。これまで6回も来ていて一度もあの有名な岬の灯台を見たことはなかった、中村から42kmを歩くと、それだけの余裕はなくなってしまう。


 14:31
あまりに定番ではあるけれど、この画ははずせないでしょう。


 14:32
柱状節理も見られるダイナミックな風景。上の展望台がなければもっといいのに。


 14:33
これも定番の風景、ここが補陀落渡海の地であることが違和感なく受け入れられる。


 14:36
展望台から金剛福寺の前へ戻ってくると、橋本さんが、あしずり旅館双葉から出てくるところ、ビジネスホテルタイプで部屋風呂、ちょっと狭いそうだ。彼は明日は50km以上歩かねばならないので、札所からできるだけ近い宿を選ばねばならなかった。半島の東岸を戻るから西へ行けば行くほど翌日の距離が長くなる。ぼくの宿は900m西だけど、明日の距離は43kmほどだからさほど負担にならない。
 道端ににゃんこがフニャァ~ッと伸びている。そういえば、午後から天気がよくてかなり気温も上がったからね。


 14:48
昨年は入り口が判らなくて思いっきり迷ったけど、今年はもちろん一直線に入り口向かう。2回目の投宿。昨年は廊下の料金表が4500円(素泊まり)だったのに3500円だった。今年は「素泊まりは4500円だけれど、お接待で4000円にします」と言われた。昨年は首をひねりっぱなしだったけど、今年は大きく頷いた。


 16:20
昨年の部屋とは違って、窓からはいくらか視界が開けている。ガソリンスタンドの鉄骨越しに見えているのは足摺国際ホテル。お風呂のあと、4日ぶりの洗濯を済ませてくつろいでいるところ、洗濯は無料、昨年故障していた乾燥機は新しくなっていた、たぶん無料だけれど、この時間だからその必要はない。昨年同様、客はぼく一人、昨年は連休の1日前、今年は連休の1日後、両年とも連休中は満室だったというけれど、あまり人気のない宿かなと思ったりする。設備も、接客も申し分のないすごくいい宿だけに、お遍路にあまり知られていないというのはとてももったいないことだと思う。


 18:07
昨年同様、お接待の夕食を頂く。料金もお接待、夕食もお接待、昨年は朝食もお接待だった。いくら客はぼくだけとはいえ、ものすごい遍路宿でしょ。料理は2食付きで泊まるときの料理とはだいぶ違うようだけれど、おなか一杯頂けるだけでとても嬉しい。隣の部屋では近所の人が集まってきて焼肉パーティが始まっている。連休が終わったので、お疲れ様の集まりなのかもしれない。