シアタートラム、2019年5月21日19時。
ある日、アマチュア天文家の二階堂望(浜田信也)は小さな隕石を拾う。その隕石は見る者に恐ろしいほどの幸福感をもたらした。夢中にし、思考を奪い、自分では目をそらすことができなくなり、ひとりで見たら最後、死んでしまうまで見続けることになるのだ。そして隕石が落ちたあと、空から巨大な柱が降り注ぎ、人々にあきれるほどの祝福を与えるが…
作・演出/前川知大、ドラマターグ・舞台監督/谷澤拓巳、美術/土岐研一。2013年初演、全一幕。
ずっとイキウメなる劇団の舞台を観てみたいと思ってはいたのですが、やっと念願叶いました。演劇でSFをやる、みたいなコンセプトの劇団だと認識しているのですが、乱暴かな?
これは最もSF色が強い作品なんだそうですね。私は好きです、ビンビンきました。SFもまた世代によって好みとか流行りとかがかなり大きく違うものなのではないかと私は思っているのですが、この作家の年齢は私の5つ下。ですよね、という感じ。ドンピシャ具合を勝手に感じました。てかもうずっと怖くて怖くて怖かった!
私は高校時代に天文部だったし小学校高学年からハヤカワ文庫SFと創元推理文庫のSFを読んで育ったSF者で、小説家になりたいと思ったこともあった、そして東京に暮らす街っ子なんですよ。田舎で農家で自給自足、みたいなたくましさなんか持ち合わせていないし、都市が壊滅したとき田舎に疎開してコミュニティを再生させて生き延びていく、なんてこともきっとできなかろうとしか思えないのです。といって「新人類」に生まれつけるとも思えない…もうもう、ただただ怖かったです。ユーモラスな部分では確かに笑うんだけれど、もうずっと震えながら見てました。
役者がまたみんな異様に上手くてめちゃめちゃリアルでナチュラルで、そういう人にしか見えなくて、それも怖かったです。お芝居じゃないみたいだったし、みんなまったくキャラクター然としていないんですよ、みんなものすごく人間臭いのです。情けないところとか、悪いところとかもすっごくまんまで、あるあるで、リアル。だから望も桜(村川絵梨)も部長(安井順平)も、なんというかあまり主人公然としていなくて、だからなんか、この人が主人公ならこの人は最後まで生き残るだろう、みたいな信頼も寄せられなくて、いつ駄目になっちゃうのか死んじゃうのか、共感してたら引きずられそうだし、そういうのももう怖くて怖くて。
物語そのものも、単なる中二っぽいディストピアものとは一線を画していると思いました。どうオチるのか、何を突きつけられるのか予想できなくて覚悟ができなくて、本当に怖くて。
そして何よりおもしろかった…!
2051年の世界があまり細かくは語られていないこと、でも充分類推できる感じがまた怖くて。「山田家」とかね、結局人類ってまた同じ馬鹿をやる…って感じで。でも新人類も生まれてて、桜がしっかりしていたようにここでも恵(東野絢香)の方がしっかりしていて、やっぱり女は強いないいなって思ったり。でもこんなふうに未来を託されても重いだろう、過酷だろうと思うと、彼らのために泣けてきたり…
ちなみにみんな上手すぎて、あとで「ここ二役だったの!?」とかがけっこうあったのですが、次郞(大窪人衛)と和夫が同じ役者なのはすぐわかって、それはやはりあえて、なのかな…とか思ったりしました。物語の最初で死んでしまった次郞くんが…という、ね。ちなみに女優さんが少年役をやっているのかと思っていました。上手かったなあ…!
でもともあれ、こんなリセット嫌ですよ。いや地球の身になったらやりたくなるのもわかります。身体から黴菌出すためにちょっと熱出してみるとか、くしゃみしてみるとかと同じレベルですよね。でも怖い。やめて。あと宇宙人というよりむしろ神、というのもよくわかりました。宗教って結局そういうことですよね。そして私たちは信仰があろうとなかろうと、実はあまり学べていない…
さあ始めよう、と突きつけられて、舞台は終わります。自分に何ができるだろう、と思わないではいられません。そりゃ世界平和のために邁進したいけど、そんな…ってなるじゃん。怖い。そんなことを課さないでください、と泣きたくなります。
ただ、私は、自分も含めて、人は幸せになるために生きているのだ、ということを疑ったことがありません。そして人はひとりでは幸せにはなれないから、自分が幸せになるためには周りも幸せでいてほしいし、だから周りを幸せにできるようまず自分からがんばる、くらいのことはしているつもりなので、それで勘弁してください、とも思うのでしした。幸せ成分だっけなんだっけ、幸福感? 別に隕石にもらわなくても得られているから、大丈夫だから。だから降らないで柱、と祈ります。
しかし「獣」ってなんなんだ、人間のことですか? それとも柱を降らせる何ものかのこと? ああ、怖い…
秋の新作は『オデュッセイア』がネタの、やはりSFとのこと。絶対観ます!!!
ある日、アマチュア天文家の二階堂望(浜田信也)は小さな隕石を拾う。その隕石は見る者に恐ろしいほどの幸福感をもたらした。夢中にし、思考を奪い、自分では目をそらすことができなくなり、ひとりで見たら最後、死んでしまうまで見続けることになるのだ。そして隕石が落ちたあと、空から巨大な柱が降り注ぎ、人々にあきれるほどの祝福を与えるが…
作・演出/前川知大、ドラマターグ・舞台監督/谷澤拓巳、美術/土岐研一。2013年初演、全一幕。
ずっとイキウメなる劇団の舞台を観てみたいと思ってはいたのですが、やっと念願叶いました。演劇でSFをやる、みたいなコンセプトの劇団だと認識しているのですが、乱暴かな?
これは最もSF色が強い作品なんだそうですね。私は好きです、ビンビンきました。SFもまた世代によって好みとか流行りとかがかなり大きく違うものなのではないかと私は思っているのですが、この作家の年齢は私の5つ下。ですよね、という感じ。ドンピシャ具合を勝手に感じました。てかもうずっと怖くて怖くて怖かった!
私は高校時代に天文部だったし小学校高学年からハヤカワ文庫SFと創元推理文庫のSFを読んで育ったSF者で、小説家になりたいと思ったこともあった、そして東京に暮らす街っ子なんですよ。田舎で農家で自給自足、みたいなたくましさなんか持ち合わせていないし、都市が壊滅したとき田舎に疎開してコミュニティを再生させて生き延びていく、なんてこともきっとできなかろうとしか思えないのです。といって「新人類」に生まれつけるとも思えない…もうもう、ただただ怖かったです。ユーモラスな部分では確かに笑うんだけれど、もうずっと震えながら見てました。
役者がまたみんな異様に上手くてめちゃめちゃリアルでナチュラルで、そういう人にしか見えなくて、それも怖かったです。お芝居じゃないみたいだったし、みんなまったくキャラクター然としていないんですよ、みんなものすごく人間臭いのです。情けないところとか、悪いところとかもすっごくまんまで、あるあるで、リアル。だから望も桜(村川絵梨)も部長(安井順平)も、なんというかあまり主人公然としていなくて、だからなんか、この人が主人公ならこの人は最後まで生き残るだろう、みたいな信頼も寄せられなくて、いつ駄目になっちゃうのか死んじゃうのか、共感してたら引きずられそうだし、そういうのももう怖くて怖くて。
物語そのものも、単なる中二っぽいディストピアものとは一線を画していると思いました。どうオチるのか、何を突きつけられるのか予想できなくて覚悟ができなくて、本当に怖くて。
そして何よりおもしろかった…!
2051年の世界があまり細かくは語られていないこと、でも充分類推できる感じがまた怖くて。「山田家」とかね、結局人類ってまた同じ馬鹿をやる…って感じで。でも新人類も生まれてて、桜がしっかりしていたようにここでも恵(東野絢香)の方がしっかりしていて、やっぱり女は強いないいなって思ったり。でもこんなふうに未来を託されても重いだろう、過酷だろうと思うと、彼らのために泣けてきたり…
ちなみにみんな上手すぎて、あとで「ここ二役だったの!?」とかがけっこうあったのですが、次郞(大窪人衛)と和夫が同じ役者なのはすぐわかって、それはやはりあえて、なのかな…とか思ったりしました。物語の最初で死んでしまった次郞くんが…という、ね。ちなみに女優さんが少年役をやっているのかと思っていました。上手かったなあ…!
でもともあれ、こんなリセット嫌ですよ。いや地球の身になったらやりたくなるのもわかります。身体から黴菌出すためにちょっと熱出してみるとか、くしゃみしてみるとかと同じレベルですよね。でも怖い。やめて。あと宇宙人というよりむしろ神、というのもよくわかりました。宗教って結局そういうことですよね。そして私たちは信仰があろうとなかろうと、実はあまり学べていない…
さあ始めよう、と突きつけられて、舞台は終わります。自分に何ができるだろう、と思わないではいられません。そりゃ世界平和のために邁進したいけど、そんな…ってなるじゃん。怖い。そんなことを課さないでください、と泣きたくなります。
ただ、私は、自分も含めて、人は幸せになるために生きているのだ、ということを疑ったことがありません。そして人はひとりでは幸せにはなれないから、自分が幸せになるためには周りも幸せでいてほしいし、だから周りを幸せにできるようまず自分からがんばる、くらいのことはしているつもりなので、それで勘弁してください、とも思うのでしした。幸せ成分だっけなんだっけ、幸福感? 別に隕石にもらわなくても得られているから、大丈夫だから。だから降らないで柱、と祈ります。
しかし「獣」ってなんなんだ、人間のことですか? それとも柱を降らせる何ものかのこと? ああ、怖い…
秋の新作は『オデュッセイア』がネタの、やはりSFとのこと。絶対観ます!!!