駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫)

2011年04月17日 | 乱読記/書名ま行
 東京のはずれに位置する都南西部最大の町まほろ市。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに、高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペット預かりに塾の送迎、納戸の整理…ありふれた依頼がこのコンビにかかると何故かきな臭い展開に…第135回直木賞受賞作。

 瑛太と松田龍平で映画化されるのに合わせて文庫になったようで読んでみましたが、そうかこれで直木賞を取ったのか。ほんとに賞ってワケわからんわ。もちろんおもしろかったがこれがベストだとも賞にふさわしい作品だとも思えないのですが…

 まあいいか。
 あと、映画のキャストは若すぎないか。最近はむしろこれくらいの年恰好の男の方がバツイチだったり小さい子供を持っていたりするのが自然かもしれないけれど、作中のふたりはもっとしょぼくれたおっさん、中年男性って感じでないかい?
 いやいいけど。

 期待していたわりにはややぬるいかな、まあウェルメイドということでいいのかな、という読後感ではありました。
 テーマやモチーフにもよるけれど、私はこの作家はもっと書ける人だと思うので。
 あ、エッセイもおもしろいけれどね(^^;)。

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堂場駿一『チーム』(実業之日本社文庫)

2011年04月17日 | 乱読記/書名た行
 箱根駅伝出場を逃した大学の中から、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば「敗者の寄せ集め」の選抜メンバーは、なんのために襷をつなぐのか…選手達の葛藤と激走を描いたスポーツ小説。

 昔はお正月は昼まで寝ているのが普通だったので、箱根駅伝はたいてい五区と十区しか見ていませんでした。
 近年、三浦しをん『風が強く吹いている』を読んでからここ数年は、八時前に起きて全区間見ています。
 というわけでかなりリアリティが感じられて、楽しく読みました。
 本当に選手はこんなふうにいろいろ感じて考えて、走っているんだろうな、と思えました。
 エピローグはやや蛇足だったかもしれないけれど…ま、こういうものは締め方が難しいものなので、いいか。
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『トップ・ガールズ』

2011年04月17日 | 観劇記/タイトルた行
 シアターコクーン、2011年4月7日マチネ。

 ロンドンに暮らすキャリアウーマンのマーリーン(寺島しのぶ)は男性社員との熾烈な出世競争の末、ついに重要ポストを勝ち取った。彼女の昇進を祝って、古今東西のトップ・ガールたちが集まってくる。ヴィクトリア朝時代に世界中を旅した女性探検家イザベラ・バード(麻実れい)、日本の帝の寵愛を受けて日記文学に名を残す二条(小泉今日子)、女性であることを隠して法王になったヨハンナ(神野三鈴)…史上最強のガールズトークの一方で、現実社会では…
 作/キャリル・チャーチル、演出/鈴木裕美、翻訳/徐賀世子、美術/松井るみ。1982年ロンドン初演、7人の女優が16役を演じる舞台、全2幕。

 第一幕第一場、いわゆる「史上最強のガールズトーク」場面が意外に冗長に感じられてどうなることかと思ったのですが、その後は各女優の圧巻の豹変ぶりと演技力に魅せられてあっという間でした。
 二条ともども現代でもややうざいウィンを演じた小泉今日子は的確な演技。
 女傑フリートを豪快に演じるとともに、もしかしたら多少知恵が遅れている、でも繊細で天才肌なのかもしれない少女アンジーを演じてみせた渡辺えりの凄み。
 「忍耐強き」っていうよりどこかネジが外れてるんじゃないかっていうグリゼルダをいい感じにKYでほわほわと演じた鈴木杏は、未来が上手く描けないでいるジニーンと、もしかしたら無自覚だけれどレズビアンなのかも、とも思わせられるくらい逆にミソジニーっぽいネルをも演じて変幻自在。この人、かつてのジュリエットなんかもよかったけれど、若くて可愛いだけの女優さんじゃないよねホント。
 ウエートレスとしてはひっそりと、子役キットは憎々しげな子供らしく、そして疲れたOLショーナは圧倒的なリアリティをもって演じた池谷のぶえも鳥肌もの。
 浮世離れしたヨハンナといかにも現代的な女性ルイーズを演じた神野三鈴。
 そして豪快なイザベラ、過保護で過干渉な妻キッド夫人、マーリーンの姉ジョイスを演じた麻実れい、さすがの声、態度、芝居…
 マーリーンの寺島しのぶだけが一役ですが、時間を遡る形で芝居をするのでこれも大変な役だったでしょう。
 このキャストなしではなかなか成立し難い演目かもしれませんねえ。

 ただ…初演当時も、今再演される意味も、あるとは思うのだけれど、基本的には救いがない、というかオチがない話でした。
 古今東西のトップガールたちのシルエットに囲まれて怯えるマーリーンとアンジーの姿に、ほんとにぞっとしたもん。そんでそれで終わりなんだもん。ええええ!?ってなもんです。
 トップガールたちは「私たちの高みにまで上がってこられるかしら?」と挑発しているのかもしれません。そしてマーリーンは確かにそこに挑んでいるのかもしれない。しかしどうもトップガールたちがみんな幸せではなかったようだとも見えているので、じゃ、なんのためにそんなことをしようとしているの?ってなっちゃうわけですよ。
 ことさらに男が悪いとか恋愛は不毛だとか社会が悪いとか言っているわけではないんですが、能力は高いのに幸せになり方が下手な女たちの話、ということなのかと思うとちょっとしょんぼりしてしまうのでした。
 もうちょっとだけ、何かを提示してくれると、うれしかったかなあ、私は、ね。
 人は幸せになるために生きているのだと思う。その人にとって何が幸せかは、人それぞれだけれど。そして何かを得れば何かを失うものかもしれないけれど、まったく何もなしでゼロで人生虚しいばかり、ということはありえないと思っている、信じている、から。
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