駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

ミシマダブル『サド侯爵夫人』

2011年02月26日 | 観劇記/タイトルさ行
 シアターコクーン、2011年2月18日ソワレ。

 18世紀、ブルボン王朝末期爛熟のパリ。サド侯爵夫人ルネ(東山紀之)は残虐かつ淫靡な醜聞にまみれる夫を庇い、愛し続けている。「悪徳の怪物」に「貞淑の怪物」として身を捧げる彼女に対し、世間体を重んじる母・モントルイユ夫人(平幹ニ朗)は様々な手を尽くして別れを迫るが…
 作/三島由紀夫、演出/蜷川幸雄、美術/中越司。

 『わが友ヒットラー』と交互上演だったのですが、こちらしか観られませんでした。
 戯曲は大昔に読んだことがあった気がしますが、上演時間が休憩込みの三時間半と大変なことになっていました。
 でも退屈は感じませんでした。
 役者の動きはほとんどなく、室内で交わされる会話劇で、まさに台詞が主役のお芝居ですが、その圧倒的な流麗さに聞きほれました。戯曲の力はもちろん、役者さんに並大抵の力がないとできないことです。

 役者陣は他にルネの妹アンヌが生田斗真、サン・フォン伯爵夫人が木場勝己、シミアーヌ男爵夫人が大石継太、モントルイユ夫人の家政婦シャルロットが岡田正。
 一幕のシミアーヌ夫人が良くて、ニ幕は出番がなくて寂しいなと思っていたら、三幕でまた出てきてくれてうれしかったんだけど、よりウザいキャラになっていてたまりませんでした(^^;)。ほめてます。
 アンヌもよかったなー。
 そしてもちろんもっともすばらしかったのは平幹ニ朗です。

 女性ばかりのキャラクターを男優だけで演じているのですが、別に無理に高い声を作っていることはなく、女性を演じているというよりは単に役を演じている感じ。
 この時代のドレスは装飾過多なので男女の体格差も逆に言えばあまり表に出ず、違和感なく楽しく観ました。
 美術も素敵でした。
 音楽は蜷川さんらしく歌舞伎ふうのもの、舞台奥の扉を開けてセットを組み立てるところから見せる手法もシアターコクーンでは何度か見ますね。より演劇感を強めている、ということなのかなあ。

 ところでタイトルロールのルネですが、嫌な女ですよね。
 そしてそれはおそらく解釈として正しいと思うのだけれど、しかし役者がそれを理解していてそう観客に思わせるためにそう演じていたのだ、というふうには私には見えなかったのですが…
 つまりぶっちゃけて言うとヒガシは精彩がなかったと思うの。演技としてあまりいいと思わなかったんだよなあ…残念。

 総じて『ヒットラー』の方が評判が良いようなので、両方観ているとまたちがうものが見えていたのかもしれません。
コメント
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