Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

映画「音響ハウス Melody-Go-Round」(完)

2021年02月13日 | CD批評
(5)
(まだご覧になっていない方にはネタバレの危険性あり、ご注意)
最後に、質問「良い音とは?」を各人に質問して答えるシーンがある。インタビュアーが定義を明確にしないことから各人が思い思いに回答しており、これもやや脈絡を得ない流れに拍車をかけている。敢えて定義を明確にしないことで各人の考えや多様性を引き出そうという魂胆なのかもしれないが、各人の捉え方は①客観的な良い音(=聴衆が聞いて良いと思う音)と②主観的な良い音(=自分が聞いて良いと思う音)とのほぼ二択の回答に。①客観的な良い音と捉えた回答では「自分で聴いていて良いと思う音」とストレートに回答する者が複数あり、②と循環回答の内容(=①の回答が②の質問内容)になっているのが気になる。ただ、ミュージシャンの回答では質問を①と捉える割合が多い一方で、エンジニアやプロデューサーでは②と捉えて回答している傾向値にあるのがなんだか興味深い。これは、特にエンジニアやプロデューサーは②主観的な良い音が(ある程度)頭の中にベースとして存在し、それをクライアントの要請に応じて調整していくという作業を日夜している為か。もしくは各エンジニアごとの「音」があり、それを求めてミュージシャン(もしくはプロデュース)がエンジニアを指定してくるという事情もあり、自身の求める「音」に対して一定の自信があるということか。加えて、エンジニアの方が②主観的な良い音とはどういう音かというのを言語的にうまく表現できている。これもミュージシャン等のフワッとしたリクエスト、ある意味で芸術的なリクエストに応じて言語で説明さえる抽象的な内容を音に落とし込む作業をしているためか。ボキャブラリー的には、ミュージシャンよりエンジニアの理解や表現の方がより芸術的なのであった。(完)
この記事についてブログを書く
« ハンズフリーで寝たままスマ... | トップ | 本自炊惹(ほんぢすいじゃく... »
最新の画像もっと見る

CD批評」カテゴリの最新記事