Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

北海道全線阿房列車(19)

2021年08月28日 | 畸観綺譚
北海道全線阿房列車(19)
音威子府を越えるとこれまで北進していた列車は天塩川に沿って日本海側へ進路を変えるが、しばらく行くと列車は汽笛を鳴らしながら急減速。またシカか、と思うもなかなかシカは退かず、数回汽笛を鳴らしてやっと列車が動きだしたものの、徐行する車窓から見えたのは線路脇に横たわる既に轢かれたシカ…。胴体に大きな裂傷が見え、周りには多くの鳥。特に嘴の黄色いワシもいて、シカの遺体ではなく群がる鳥への警笛だった。糠南(ぬかなん)駅に停車すると、車内にいた数人の鉄ちゃんはこの時だけ一様に糠南駅を写真撮影。異様な状況だったが糠南に何があるのか?(のちの調査によれば、糠南駅は「朝礼台」と言われる1両編成でも列車がハミ出てしまう短い板張りホームと物置駅舎が激シブで有名) その後、1015着の雄信内(おのっぷない)を越えた頃から車窓の左側には幻想的な雪山が! その方向には海しかないので浮かぶ氷山のように見えるそれは利尻岳(1721m)。頂上から8割がた雪に覆われた姿は、ホログラフィーのように青白く立体的に空中に浮いているように見える。列車もその方向に向かっているが一向に近づいてこない。幌延1034着 。1056発で22分停車するため荷物を席に残したまま、早速ホームに降り架線橋を渡って駅舎を出る。静かな駅で快晴の中、雪解けの水がチョロチョロ流れる音とディーゼルエンジン音のみが聞こえる。稚内の手前で長時間停車する最後の駅であり、終着稚内も近い。幌延から豊富(とよとみ)まではサロベツ原野の雪原の向こうに利尻岳が映える絶好のスポット多く、手前に電線等がないことから風景を激写しまくる。

【写真】雪原に浮かびあかる利尻岳。8割程度冠雪しており、雪のない麓部分がブルーに見えるため海に浮く氷山の如し。

北海道全線阿房列車(18)

2021年08月21日 | 畸観綺譚
北海道全線阿房列車(18)
途中、表示版がすでに取り外されているものの、明らかに駅だったと思しき場所で、列車すれ違いのための時間待ちがあったが、GPSで位置を確認するとそれは旧・豊清水駅。前述のJR資料によれば一日の平均乗降客(5年平均)が1名以下となっている。ホームらしきものに停まってはいるが雪掻きはされておらず、廃駅になっているので列車のドアが開くわけではなく、妙な雰囲気が車内に流れる。ここにくるまでも、もしくはこれ以降も廃駅となって自然に還らんとするホームをよく目にした。0905音威子府(おといねっぷ)着。先ほどの妙齢女性集団が一気に全員下車し、車内は今度は一気に静寂に包まれる。0908発車まで数分あるので駅舎へ。ここには有名な駅そば「音威子府そば常盤軒」が以前あった。今回も「機会あらば是非食して」と思いきや、一杯のかけ蕎麦を食するのに数時間待機を余儀なくされることから、早くも行程計画の時点で断念したが、実際には常盤軒は既に廃業(2021年2月)。なお、音威子府そばを供する店は東京都内にも存在する。しかし、改札を出るに明らかに営業中のように眩く照明が点いている常盤軒を発見!思わず駆け寄ると、カウンターには立て看板があり、コロナ影響で2020年2月から臨時休業していたが、店主が体調を崩され、2021年にご逝去されたことで廃業に至った旨の記載。見惚れていると駅員に列車に戻るように急かされる。

【写真】音威子府そば常盤軒の跡。照明こそ点いているが、中の調理器具はすでに無し。

北海道全線阿房列車(17)

2021年08月14日 | 畸観綺譚
北海道全線阿房列車(17)
なお、今日は平日であるためか途中駅から学生が乗車してくる。そのほとんどが無人駅であり、駅前までご両親が車で送ってくるのだが、列車が停車しているわずかの時間にも、駅前に車が滑り込んでホームに横付けすると同時に学生が降りては列車に走ってくるという具合。間に合うのか見ているこちらがハラハラするが、時刻表をみるにこれを逃すと次は1時間半後であって遅刻は必至。列車の運転手(当然にワンマンカー)も一度閉じかけたドアを開いてくれ、都会にはない親切さ。0740名寄着。0753発だが、その間に後ろの一両を切り離して二両編成が一両のみになる。駅前でもみようとザックを座席に置いたまま身軽に降りようとするが、ホームのステップが凍結していて滑る。ここで滑っての骨折は絶対に避けたい(それをみて危険と思ったか、のちに駅員が砕いていた)。なお、ここでやっと車両にトイレが完備されていることを発見。運転席右後方の一見して不必要なスペースがトイレなのであった。0817美深で作業服を着た妙齢な女性の一群7~8名が乗車し、車内が華やぐ。除雪作業のための雇用なのか不明だが、食べ物を配り合い、しばし雑談が盛り上がるが、話題は①廃駅、②安定した職業、③孫の話。①廃駅になると周辺から人が流出してしまい、一気に寂れる、と。②薬剤師か看護師がベストというお決まりの内容だが、途中からも同じ作業服の女性が少ないが乗り込んでくる。今日は2分列車が遅れている等やはりこの本数の少なさに関しては切実な問題で、その分、分単位で時間にも大変シビアに。

【写真】名寄での切り離し作業。これ以降、一気にローカル感が増す。

『一本の鉛筆』

2021年08月06日 | CD批評
今日は8月6日。この曲を初めて聴いたのは地下鉄の乗車中。ちょうど電車が永田町に着いた時、その地下鉄ホームの情景が曲とともに強く記憶に残る。当方の場合、特に音楽は聴いたその場の情景と強く結びついて、いつも記憶に定着している。永田町はかつて陸軍参謀本部があった場所。大量の聴かなければならない音源が詰まったいつものiPodを消化試合のように会社帰りに聴いていたが、そこにハッとする曲が…。それは『Kimiko sings HIBARI ~ 伊藤君子、美空ひばりを歌う』に収録されている『一本の鉛筆』。ピアノと歌唱のみだが、ピアノは小曽根真ではなく宮本貴奈。あまり歌詞を聴かず、意味も詮索せず、歌詞を反芻することのない当方にも歌詞中の「戦争」や「8月6日の朝」でヒロシマの原爆投下を歌ったものと一聴でわかるが、美空ひばりが1974年の広島平和音楽祭で歌った曲とは知らず、帰宅後に検索して初めて判明(アルバムタイトルみれば判ろうものだが、いつもそんな程度に大量に音楽を聴いているのでスミマセン)。松山善三・作詞、佐藤勝・作曲というのも衝撃だったが、美空ひばりのオリジナルを聞いてみればアレンジがヤケクソに明るいのがなんともメタファーなのだが、この伊藤君子の作品のアレンジと静けさの方が素晴らしい。ちなみに、永田町の駅でこの曲に衝撃を受け、慌ててiPodで曲名と歌手を確認しようとジャケットを見るに、「ん?小室哲也?」(女声ボーカルなのに!)と頭が大混乱(小室哲哉も金髪か白髪にしていた記憶があり、失礼)。「子供が欲しい」のは、夫たる人を亡くしたからか、それとも被爆により産めない体になったからか、聴く度に考える。
※ちなみに、「小室哲哉は先輩でしょ?」と良く言われるがTKは「実業」であり、正確な意味での先輩ではありません。