Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

”怪我”牀六尺(20)

2018年10月27日 | 畸観綺譚
(20)
拘束器に話は戻りますが、なかでも特に最悪なのは導尿管。「トイレ行かなくて良いんでしよ、尿意もないんでしよ」と言われますが、とんでもない。管のツッコミ具合は問題ないのかもしれませんが、深夜に腕が痛まない最適ポジションを得ようともぞもぞ体勢変更するのが影響しているのか、導尿管の位置も気になります。というのも、位置が悪くなると尿意はあるのだが出ない状況に陥るのです。おそらく、アソコの先端をヒモでキツく縛られたらこんな感じになると思うのです(残念ながら未体験)が、これも発狂モノです。どうしても管を抜いて、そこら構わずブチまけたい!という激しい衝動に駆られますが、まさに狂気と紙一重と言えましょう(実際に実行したらきっと人生観が変わること請け合いです)。 酸素チューブ、導尿管、そして点滴と外れていくと圧倒的に身体だけでなく精神の自由度も増すのですが、依然として自分ひとりではどうにもならないのが食事です。食事は朝8時、昼12時、夜6時と定期的に配膳されるのですが、両手(掌部分)がグローブのようにパンパンに腫れている状況ではどうにもなりません。

”怪我”牀六尺(19)

2018年10月20日 | 畸観綺譚
(19)
実は、短時間ながら腕の痛み以上に辛いのは口内の乾燥。術後は水を飲むことも不可なのですが、酸素マスクをしていたであろうためか、それとも全身麻酔により唾液腺の活動自体も止まっていたためか、意識が戻るとなんとも喉がカラカラです。喉に限らず口の中全体が乾燥してなんとも辛い状況ですが、水を飲むなという状況ではどうやって状況を改善させたらよいか分かりません。口内の乾燥は意識すればするほど辛いものになり、唾をのみ込みたい感覚があるのですが、おそらく唾液は出ておらず、それを飲み込もうとしても飲み込めず、ややパニック気味にもなります。唾を自然に飲み込めないというのは、息ができないのと同様に窒息しそうな感覚があり、意識すればするほど困難な状況に陥ります。やや考えた末、看護婦の方にウガイをさせてもらえないか頼んだところ、絶対に飲み込まないことを何度も念押し、誓約させられた後にやっとウガイをさせていただきました。クドイほど確認されるというのはよほどのことウガイすると偽り、意図的に飲んでしまうという信用のおけない患者に見えたのでしょうか...。

”怪我”牀六尺(18)

2018年10月13日 | 畸観綺譚
(18)
両腕がNGともなれば挿入に理想的な四つん這い姿勢もできず、導尿管が入っている現状ではどうやって座薬を入れるのかは全く想像できなかったのですが、そもそも両腕を骨折した本人以外に誰がそのような想像ができるものでしょうか。ああ、両腕骨折の苦難は自分にしか分からないと思うとなんとも絶望的な気分にもなってこようものです。そんな座薬ですが、幸いにもそのお世話にはならずに済みました(この座薬は効くというのは後日聞いた経験者談)。 両腕の痛みだけでなく、精神的に発狂しそうになるのは、足首(脛)ヘの点滴、鼻への酸素チューブ、そして導尿管という三種の拘束器です。これらによりベットから実質動けません。また導尿管がその最たるもので、動けないからさらにコレをつけるという循環論法なのが最悪なのですが、この”動けない恐怖”は以前にあった「ドアノブを開けられない恐怖」とも同種のものです。酸素チューブは術後数時間、導尿管は半日、点滴は一日程度続きましたが、最後の点滴が外れて完全に自由になるまでの「拘束への恐怖」は予想以上に精神的に堪えました。

”怪我”牀六尺(17)

2018年10月08日 | 畸観綺譚
(17)
苦悶の時間が続きますが、腕を心臓より高い位置に置けば鬱血も減って幾分かは楽になります。タオルや座布団を敷いて体勢を整えますが、それもまた一苦労。足を骨折した人が寝ながら足を吊っている絵をよくマンガで見ますが、あれには真理があったのです。こちとらできればそうしたいのですが、腕ではムリ。ちなみに、腕を骨折すると三角巾で首から腕を吊りますが、あれも真理でありまして確かにその姿勢はラクなのです。しかし、両腕骨折の場合、両腕を三角巾で吊ることは難しく、吊ったとしてもそのまま歩行するのは危険とのこと。医師によればヒトは歩いているときに意外にも両腕を使ってバランスをとっているので、両腕を吊るとバランスがとれないだけでなく、転んだ際に手をつけないので肩や他を強打しかねない、と。両腕骨折とはとっても難儀なものです。両腕の痛みについては、服用のロキソニンに加え、点滴からも鎮痛剤が流れているということでしたが、術後に麻酔が切れるとなかなかそれでも足りないものです。点滴から供給される鎮痛剤には途中に「押しボタン」があり、痛みが酷いときには押すように言われていましたが、両腕骨折ではそもそもボタンを押すのも無理です。さすがに深夜に巡回の看護婦さんに押してもらったことはありますが、それでも耐えらない場合は座薬とのこと。