【恵山温泉(北海道函館市柏野町)】
恵山(えさん)は函館市内から東方に1時間ほど走った位置にある火山で、良質の温泉が湧出している。こちらは前から目をつけていたものの、なかなか訪問する機会に恵まれなかったがようやく訪問が叶う。なかなか年季の入った温泉旅館で、所用を済ませて訪問できたのは平日17時頃だったが玄関の電気を消えており「休業か…!」と一瞬焦るも、また函館市内から1時間をかけて再来することを考えるとダメ元でドアを開けて声を掛けるも「入浴可能」とのこと。「もう誰もこないから閉めちゃった」(ご主人)とのことで、誰も居ない館内を浴室へ向かう。ご主人「途中、犬を放してあったんだけど吠えませんでした?」、「!! いやぁ~気配すら感じませんでした…」。浴室への途中には、よほどクレームや質問が多いのか「石鹸は使用できません」という表示が目立つ。排水などの環境配慮の観点から使用できないのではなく、この温泉が強酸性の湯(pH2.4)だから。それを意識してか、浴室の入口に「石鹸は効きません」と的を射た日本語で朱記されたプレートが貼り付けられている。さらに付近の壁には「酸性明礬緑礬(みょうばんりょくばん)泉に付き石鹸は使用出来ません」とその化学関係にまで言及した具体的なプレートもあり、否が応でも期待感が高まる。温泉成分表には「酸性・含鉄(Ⅱ、Ⅲ)ーアルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉」とある。入浴するだに、その湯は全く素晴らしく湯の色はなんとロゼ色!湯温は低めであって体感としては40℃程度で非常に快適(成分表の泉温は40.2℃となっている)。そのロゼの中には澱たる湯の華が混じっており、なんだか恍惚感さえある。浴室にはザンザと掛け流しの音のみが響いており、源泉掛け流し。湯は酸っぱいが適度な酸味で、なんだかこのような飲み物が世の中にはありそうと思われるほどに(温泉としては)美味しい。浴中には肌にキシキシ感があるがこの湯が目に入ると猛烈に痛いという前評判を聞いていたことから、つい開放感に気を許して無意識にうっかり洗顔してしまわないように慎重に入浴。改めて素晴らしい温泉という一言に尽きる。
玉肌日記インデクス(地域別温泉リスト)