Side Steps' Today

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九州全線阿房列車(17)

2022年11月26日 | 畸観綺譚
九州全線阿房列車(17)
引き続き小雨混じりの曇天の中、車窓右手に見える山々には低い雲が混じってグレーな水墨画の世界。1300夜明(よあけ)着。なんだかとても雰囲気のある駅名だが、本来であればここから日田彦山線が分岐しているはずが、こちらも平成29年(2017年)7月九州北部豪雨によって被災。その結果、夜明~添田間が不通になっているのだが、反対側の添田には明日小倉経由で到達する予定にしている。そのまま乗り続けて1318日田(ひた)着。途中で降りる人多く、ここ日田まで到達したのはあれだけ乗っていたのになんと2人のみ。ここで1417発(由布院ゆき)に乗継ぐが1時間ほどあるために期待のランチへ。このあたりでは日田焼きそばが有名らしく予め目をつけた駅近くの「大学軒」へ行って焼きそば(卵付き)をオーダー。決め手はこのビジュアルだったのだが予想に違わぬ味。ソースまみれのようだが決して辛くはなく、五香粉の香りを微かに感ずる。玉子はソースにマイルドさを加えるが、焼きそばなので麺は焼かれており一部パリパリなのが香ばしい。そのせいかオープンキッチン風の調理場からジャーという炒める大音響。意外なのはサービスされたスープ。やや面を食らいつつも飲んでみれば明らかにとんこつラーメンのスープでこれも美味、こちらではチャーハンをオーダーしてもこんなスープが出てくるのだろうか。架線橋を渡って駅に戻るが、日田駅もなかなかにスタイリッシュ。頻繁にくる特急列車をみようと親子連れが多くきているが、駅舎も木を基調にした洒落たデザインになっていてなかなかお金が掛かっている。1417発(由布院ゆき)に乗るが、途中に天ヶ瀬等の温泉地をぬけて1523由布院着。天ヶ瀬温泉では一部デフォルトした廃屋のような旅館も。
【写真】大学軒の日田焼きそば。ニラ・もやし中心でシブいのだが、店舗も実にシブい。

玉肌日記

2022年11月19日 | 玉肌日記
【濁川温泉(北海道茅部郡森町)】
その2
ここの温泉の渋さは浴室の床や風情だけに止まらない。室内の内湯だけの温泉ながら、なんだか明るく開放感があるのは、その天井に秘密あり。そう、この湯場の天井は意図せずにサンルーフ! そのサンルーフ周囲からの想像であるが、この湯場の屋根は本来木製だったがその天井の頭頂部がまずは朽ち落ち、それを補修するために透明の樹脂製波板を貼ったと思われるが、透明の波板を貼って補修したところにセンスが光る。これで耐久性は維持され雨が浴室に入り込んでくることもない。樹脂の材質と強度は不明だが、この地方特有の積雪に耐えられるのだろうかとやや不安ではあるものの、頻繁に手入れしているようにも見えないことから問題はない(なかった)のだろう。温泉環境自体がレトロで素晴らしいのは良いことなのだが、悩ましいのは入浴中に温泉に集中できないこと。「ついに来た!」という気分の高揚もさることながら、浴場床の析出物や天井、そして周囲の構造に目が行ってしまって、目からの余計な情報入力があまりにも多いため雑念を取り払うことができず、結果、温泉自体の印象が薄くなってしまうのは残念。なお「ついに来た!」と思わせるのはその立地条件からくるアクセスの困難さだけではなく、「入浴に訪れても旅館の方がなかなか出てこない」という事前情報を得ていたため。以前は耳が遠いご婦人が爆音でTVを見ながら番をされていたようだが、今ではインターフォンが設置され、それでもNGならこの番号に電話すべしとの情報社会ならでは(?)の表示がある。当方の場合はインターフォン一発で全く難なくアクセスできたが、ここら辺の入浴までの困難さ?も入浴できた時の達成感を盛り上げるのに一役買うスパイスになっている様子。一方で、この旅館への車でのアクセスは容易。国道五号には大きな看板が出ており、そこから入り込んでも要所要所には看板が出ているため、ナビなどなくても到達可能。この看板への投資と旅館建物への投資のなさ、とメリハリが効いている。なお、この温泉浴室を外から確認するに、建物自体が一段低いところに設置されているのがわかるが、これは良い温泉にある普遍的な傾向。(完)

玉肌日記インデクス(地域別温泉リスト)

①北海道 ②東北 ③関東 ④中部 ⑤近畿 ⑥中国・四国 ⑦九州・その他


玉肌日記

2022年11月12日 | 玉肌日記
【濁川温泉(北海道茅部郡森町)】
その1
今回の渡道ついでに最も行ってみたかった憧憬の温泉。付近には上ノ湯(いわゆる銀婚湯)温泉がある。圧倒的な魅力はその浴室にあり、写真のようにまさにレトロ。レトロなのは浴室だけでなくて温泉宿自身もそうなのだが、浴室に向かう途中で襲われるのは平衡感覚をなくす廊下。床が左斜めに微妙に傾いているようで、浴室に降りる箇所をよく見てみるに廊下の断面が平行四辺形になっている…。浴場は混浴ながら脱衣場には簡易な衝立しかなく、そのどちらで着替えればよいのか全く不明だったが、ロジカルには手前が男性、奥が女性と考えて手前を使用(とはいっても、入浴者は当方だけだったが)。浴室への入口も並んで二箇所あり、どちらから入るべきか一瞬悩むも内部は完全に一つであって全く遠慮のない混浴になっている。余談だがこれを配慮し、女性専用浴室が旅館新館にあるため女性客はそちらに案内されるようだが、誰も居ない場合は是非こちらのレトロ混浴浴場を利用すべき。この哲学的にT字に配置された浴槽にはいずれも湯が直接注がれているが、訪問時には奥の2つが比較的入浴しやすい湯温だったのに対し、手前のはあまりに熱くて入れず。奥の2つも当初は激アツだったが攪拌すれば適温。これほど攪拌が効くとは、前回の入浴者から相当時間経過したと想像。素晴らしいのはこの湯の長年のオーバーフローによって形成された析出物であって、石膏系のいい味を醸す。湯は無色透明でやや鹹味(かんみ=塩辛い味)がある。木やオイル臭があるとも言われるが、あまり感ずることなし。判読できる現代の温泉成分表は見当たらず、あるのは木製の年代物で、その表記は昭和10(1935)年!知内温泉の昭和4(1929)年には劣るが、これは2.26事件の前年である。(続)

玉肌日記インデクス(地域別温泉リスト)

①北海道 ②東北 ③関東 ④中部 ⑤近畿 ⑥中国・四国 ⑦九州・その他


九州全線阿房列車(16)

2022年11月05日 | 畸観綺譚
九州全線阿房列車(16)
0815発(八代ゆき)に乗ると八代までは25分と至近。途中、九州新幹線への乗換駅たる新八代を過ぎて0840八代。ここから初日の吉松まで肥薩線が続くはずなのだが、前述の理由で現在不通。駅構内に設置の「肥薩線0起点 八代駅」という看板が哀しい。よって0846熊本ゆきでUターンするまでの短時間ながら一旦駅を降りてみるが、意外にも小さい駅舎。駅反対側にはこれまた大量の白煙を吐き続ける日本製紙八代工場がある。0846発に乗車して0928熊本着。熊本ラーメンでも食せるか(またラーメン…)と思うも、駅ビルは開店前にて何もなし。はやくも諦めて0952発(鳥栖ゆき)にて久留米へ。途中で区間快速に追い付かれるもそのまま乗車し続け、車内で今夜の小倉(2,500円)、明日の佐世保(4,800円)のホテルを確保。九大本線に乗換えるため1134久留米にて下車する。1214発(日田ゆき)まで時間があるので駅付近を散策しようとするが、駅ではご当地出身歌手たる松田聖子「赤いスイートピー」が流れる。久留米出身の芸能人は多く、勝手なイメージながらもさぞ発展した大都会と思いきや駅付近にはなにもなく、完全な住宅街。西鉄久留米の方が発展しているのだろうか(のちの調査で正解と判明)。1214発(日田ゆき)に乗るが二両編成は学生らが多くて意外に大混雑。この路線には由布院等の温泉地が多く点在するため、路線は観光色濃く、観光客向けの特急列車運行も多い。JR九州は観光列車に注力しており、これまでも有名な車両デザイナー起用の観光列車を数多く見てきたが、個人的に興味はあまりなし。ちょっと匂い立ってきそうなシブい旧型列車の方がよほどにソソられる。このためか綺麗な車両もある一方、旧い車両はより渋い風情で輝いているようにもみえる。乗る日田ゆきも真っ赤な車体でなかなかスタイリッシュ。
【写真】日田行きの列車。乗車賃は同じなのにJR九州では良い列車と旧い列車の落差があまりにも激しい。