ジャズ・トランペットのリー・モーガンが内縁の妻にライブハウスで痴話原因により射殺される実話をベースとしたドキュメンタリー・タッチの映画。邦題は「私が殺したリー・モーガン」だが、原題は「I Called Him Morgan」であって随分と雰囲気が異なる。一般Pにはリー・モーガンって?という風(映画内でもそのように扱われている)なのでこのような邦題をつけたのだろうが、原題は「Leeという名前が嫌い(だからモーガンと呼んだ)」(妻)というコメントに由来。個人的にジャズ(彼に言わせればジャズという言葉は嫌いでBlack Classical Musicとも言うべきと…)のトランペットではリー・モーガンを最も好むが、ファットで濃密なトーン、端正なアーティキュレーションとテクニックという観点ではまさに天才的なのだが、天才ミュージシャンとして典型的な破滅型。18歳でプロ、そしてまもなくヘロイン中毒。これを立ち直らせたのが映画の主人公たる内縁の妻ヘレンという流れ。14歳で出産し、リー・モーガンの一回りくらい歳上(映画で正確な年齢は不詳)だが、マネジャーとしても公私ともにサポートした糟糠(そうこう)の妻。しかし中毒から回復して再び脚光を浴び始めると別の女性を作るというお約束のパターンで話は進む。リー・モーガンの写真は白黒が多いため相当昔の人という印象だが、モーガンと共演していたウエイン・ショーター(アート・ブレイキーのモノマネが宜しい)も出てきており、存命なら80代なのにちょっと驚きだが、映画中には動いたりカラー映像のリー・モーガンがあって興味深し(動画のほとんどはアート・ブレイキーとのもの)。大雪の日、別の女性の運転でライブハウスまで送ってもらう途中で事故り、タクシーに乗せて帰すはずだった女性とともにライブハウスにいたところに妻と鉢合わせ、衝動的に護身用の銃(これもモーガンが買い与えた)で撃たれるが、大雪で救急車がなかなか来ず落命したと描かれる。妻は過失致死で逮捕・収監されるも嘆願で早く出所。その後は地元の名士的存在になるが事件を悔いており、死の直前に成人教室での先生のインタビューに答えたものがベースとなっている。このテープ再生シーンのキーというヒスノイズ?が非常に耳にくるのが最悪だが、これまであまり聴き込んでいない良曲の発見があったとともに、チック・コリアの実家がパン屋だったという小ネタも。ファッション的にもリー・モーガンはお洒落サンで、映像を見るだになかなか良い仕立の服を来ている。一部白黒なのが残念だが。かつて非常に聴き込んだことのある「Lee Morgan LIVE at The Lighthouse」が、心身的に非常に良いコンディションの時に収録されたというのもまさに頓悟。
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