Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

九州全線阿房列車(15)

2022年10月29日 | 畸観綺譚
九州全線阿房列車(15)
第3日目
早朝5時に起床。昨日、いや正確には今日寝付いたのは1時頃だから明らかな寝不足。まずは三角線にて0617発(三角ゆき)に乗る。三角(みすみ)は天草の玄関口ながらその先の天草まで鉄道は到達していない。おそらく到達させようという気もない。0550にチェックアウトして小雨混じりの中を駅へ行くが、6時ともなると熊本駅には意外と人が出ている。0617発(三角ゆき)は二両編成ながら乗客は2名のみ。当方は一両を占有する。この付近の汽車はワンマンカー運転は基本だが、それが二両編成の場合、二両目(後ろに連結されている車両)は途中駅でドアが開かない場合が多い。降りる場合には運転士のいる一両目に移動してから降りることになる。これはキセル防止のためと思われるが、逆に二両目はドアが開かないために車内が静かで暖かくて今日のような寒い日には全く好都合。いずれ終点まで行く身としては好んで二両目に乗車し、0617出発。次第に夜が明けるとともにブルーグレーな有明海が見えてくる。1時間ほど乗って0712三角着。ここで折り返し0719発(熊本ゆき)に乗るが、駅前を出てもあるのは港と海浜公園。三角からは1時間に1本の汽車が熊本へ向けて出ている。折り返しの0719に乗り、途中0756宇土(うと)で降りて鹿児島本線0815(八代ゆき)に乗り換え、八代まで南下する。宇土で20分弱の待ち時間があるため、試しに駅を降りてみるがなにもなし。駅前のコンビニにて「うと餅」なるものを販売しており、大いに心揺れるが10個入りはとても食べきれないと断念して駅待合室へ。ちなみにこの辺りの駅自販機にはグリコのセブンティーンアイスが必ず設置されており、この寒い冬場でも絶賛稼働中。
【図】第三日目行程。黒線部分が本日のノルマ。早めに大都会たる小倉についてちょっとはホッとしたい。

九州全線阿房列車(14)

2022年10月22日 | 畸観綺譚
九州全線阿房列車(14)
当然、途中から誰も乗り込む雰囲気でなく、そのままスイッチバックの立野2229着。その手前に逆Z字の一段スイッチバックがある。まずは汽車が停車し、運転手が逆側の運転台へと車内移動してバック方向に運転して高度を下げる。この際に立野駅ホームに入線するのだが、停車中にさらに再度運転台を移動して出発するというスイッチバックを当方一人(というよりそうでないと運行できないのだが)のために行うのはなんだか非常に贅沢なる気分。周囲の景色が漆黒で全く見えないのが残念ではあるが…。常紋峠の時もそうだったが、なんだか乗務員と二人だけと思うと妙に一方的な親近感・連帯感が湧いてくる。逆に乗務員にしてみれば、深夜に独りずっと乗車している手ぶらの乗客、というのはなんとも不気味かもしれない。その後は熊本へと向かう乗客がちらほらと途中乗車してくる。景色といえば街灯くらいしか見えないため、Kindleで「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)をダウンロードして読書。読みたい時にどこでもダウンロードして読める(しかも古典は無料)のはなんとも素晴らしく、これも贅沢。熊本が近づくにつれて意外に途中乗客あり、2329熊本着。深夜ながらこの先まだ大都市への乗継便があるようだが、当方はここで下車して駅前のホテルへ。ホーム階下の誰もいない待合所ベンチには等身大?のくまモン像がポツンと座っており、一瞬ドキリとする。小雨混じりの中、駅至近のホテルにチェックインして即入浴して就寝。引き続き汽車の振動が体に刻まれている。本日は18時間かけて538キロ走破したが、これは偶然ながら前日(第1日目)と全く同じ走破距離。
【写真】スイッチバック駅、立野駅。取り残される恐怖感に抗いながら停車時間にすかさず撮影。

フォアグラ日記

2022年10月15日 | フォアグラ日記
音威子府そば(北海道中川郡音威子府村)
(2)
前回の苦難の末にようやく到達し、一路食堂(写真)に入店。なお、駐車場は広くて休憩中なのか路線バスも停まっている。14時半の入店だったが、客は当方含めて2名。シンプルな「もり」をオーダーするつもりが、他の客が「ざる大盛り」をオーダーしておりこちらも「もり大盛り」とする。なにしろ朝食からなにも口にしていない。5分ほど待って供されるが、事前調査とおりで黒い。そばの実の甘皮まで挽いていることによるようだが、食するにまず強烈に感ずるのは海藻の風味。一瞬、そばのつなぎに海藻を入れている?と思われるほど海藻の香りが強いのだが、それはツユの「利尻昆布だし」によるもの。メニューには「毎日だしをひいている」とある。最初はそばの風味が感じられなかったが、食べる際にツユのつけ具合を調整していけばそばの風味も十分に感じられる。黒いと噛みごたえがハードなイメージがあるが、ちょうどよい硬さでボロボロやボソボソではない。飢餓状態でノンストップ爆走の直後だったこともあり大盛りながら3分程度で完食(ほぼ同時に供されたもう一人のお客はまだ半分も食していない…)。せっかくなのでお土産を、と店内を物色するも「生そば(400円)」を発見。乾麺は売り切れてしまっているようだが、乾麺より生麺が好ましいし、賞味期限が10日間程度(もちろん早く食した方が良いに決まっている)あることから2束(5人前)を購入。要冷蔵だが、寒い車内に一晩中置いておけばOKだろう。詳しい茹で方を書いたマニュアルが添付されることに加え、昔ながらの包装紙に生そばが包まれ、輪ゴムのみで止められたその所作、佇まいがモノとして素晴らしく美しい。見た目だけで十分に美味そうであることが推察される。ちなみに帰京後に自宅にてマニュアル厳守のもと生そばを作って食したが、現地で圧倒的に感じられた海藻感はまったくなく、あの時に感じた海藻感はツユによるものと判明。平凡なツユで食した方がそば感は得られるが、あのツユがかなり素晴らしかったと痛感。個人的には温かいそばはあまり食べる機会がないが、今度訪問する際には(あのツユがふんだんに用いられているであろう)温かいそばを食すことを期する。しかしそれはいつになるのか…。(完)

フォアグラ日記

2022年10月08日 | フォアグラ日記
音威子府そば(北海道中川郡音威子府村)
(1)
音威子府そばを食しに北海道へ。鉄道旅の途中に食そうと画策し、いろいろ試みるも非常に困難であり、積年の課題を解決するために空路稚内へ。音威子府は旭川と稚内の間にあり、旭川からも稚内からも120km程度とまさに中間。空路の場合、紋別からも130kmでこの微妙な位置がより到達を困難にしている。実は都内(四谷)でも音威子府そばを提供する店はあって自宅からも数kmなのだが、なぜか北海道へ。他の訪問予定地との兼ね合いから今回は稚内空港を選択。しかし、羽田⇄稚内の定期便は1日一便。往路は羽田10:40→稚内12:35、帰路は稚内13:20→羽田15:20という、機長らクルーにとっては稚内滞在45分で往復という具合なのだが、これまた微妙なのが音威子府そばを提供する食堂の営業時間が11~15時と短いこと。ご丁寧に食堂のHPには「15時迄に入店すればOK」と書かれており15時への駆け込みを目指すが、12:35から15時閉店までには2時間25分しかない…。いつも以上に時間がタイトで航空機遅延等の異変が一つでもあれば達成できない状況にいろいろなシナリオを想定し、不安要因を消していく。まずは航空機。個人的には航空機に絡んだスケジュールやその正確性にあまり信頼を置いていない(失礼→飛行機受難劇ご参照)が、Flightradar24の過去データから推察するに航空機は早着傾向にあり、定刻12:35着に対して12:18程度には平均的に到着(着陸)している。稚内トンボ帰りのクルーにとっては早着すれば休憩や作業時間も増えるので早着のインセンティブも高いに違いないが、素晴らしいことに実際には12:16に着陸。稚内は滑走路1本だけのシンプルな構造で無駄なタクシングもなく、前方の座席指定だったことも幸いしてレンタカーカウンタには12:25着。当然ながら荷物は手荷物のみ。レンタカーも空港にカウンターだけがあって集合後にバス等で市内まで連れていかれるところもあるなか敢えて空港隣接のレンタカー会社で予約。市内を回る時間や市内から脱出する時間を考慮すると圧倒的に空港隣接のレンタカー会社が有利。12:40にはレンタカーを借り出して、市内を回避して国道40号・バイパスを南下。オービスとパトカーによるスピード違反取り締まりに注意(違反で罰金+処理の時間を浪費ともなれば最悪)しながら、ただひたすら南下をして結果的に14:25に到着。間に合った…。ここ北海道ではナビに表示されるキロを走りきるのに随分と時間を長く感じる。走っても走っても残距離がなかなか減らない。走行距離は空港から126km。音威子府そばは「幻の蕎麦」とも言われると聞いたが、到達の困難さという意味でも「幻」に値。(続)

九州全線阿房列車(13)

2022年10月01日 | 畸観綺譚
九州全線阿房列車(13)
ホームに降りると線路にネコ。かつてはニャー駅長がいたようだが、その後継か。後継駅長のお出迎えを受けながらも、豊後竹田では2059発(熊本ゆき)まで30分強の時間がある。「コーヒーでも」と淡い期待を抱いていたが、川を渡った先にある商店街を含めて開いている店は皆無で20時過ぎなのにまるで深夜の風情。豊後竹田では大分方面への便は比較的ある(1日19便)が、熊本方面へは1日7便のみ。終電である2059を逃す恐怖感は尋常でない。竹田といえば「竹田の子守唄」(赤い鳥など)が有名だがこの竹田は京都で、こちらの竹田では滝廉太郎「荒城の月」で有名。駅舎内にも滝廉太郎像があり、しっかり滝廉メガネをかけている。駅前は大野川の流れる音のみの静寂、ふと駅舎を振り返ればライトアップされた断崖。「落門の滝」というようだが、滝の名が示す水流らしいものは見えず。なんだか不思議かつ神秘的な雰囲気だが、駅舎内で待って2059発(熊本ゆきの最終便)に乗る。乗客は当方ただ一人。神秘的な雰囲気のまま発車、次第に登っているのか、ふと右側車窓には街の灯火がかなり低い位置に見える。気分はもう「銀河鉄道の夜」。ふとみれば今座るのは「青い天鵞絨を張った腰掛け」。 途中、急ブレーキで列車が停止するも「線路上に鹿がいましたが衝突しませんでしたので、このまま発車します」とのこと。すぐに出発したからよかったが、もし故障で止まったら熊本までタクシー等で遥々送り届けてくれるのだろうか。周囲は漆黒。
【写真】なかなか風情のある豊後竹田駅。後ろに怪しく光るのが「落門の滝」、ちょっとコワイ。