★★★★★☆☆☆☆☆
レディースデイだったからか、劇場は満席完売。世間の評判も結構高い。、、、だけれども、私はダメだった、これ。何かの映画を見に行ったときに、予告編を見て、レイフ・ファインズが主演っていうだけで、これは見たい!と思っていたんですけどねぇ。
ウェス・アンダーソン監督の作品は、これが初めてで、どういう作風かなんて全然知らずに見たわけだけれども、なんつーか、もう、最初からずっと「置いてけぼり状態」なわけですよ、ホントに。しかも、ずーーーっと同じ語り口調で話が進み、飽きるというか、ダレるというか。睡魔に付け入るすきを与えそうになること三度。うー、こりゃ辛い。終盤、ホテルで銃撃戦辺りからようやく面白くなってきたゾ、と思い始めたら、ハイおしまい、ってな感じでした。
そして、この置いてけぼり感は、見終わった後、パンフを見て合点がいきました。なんと、本作の制作にあたり、監督はあの『生きるべきか死ぬべきか』を参考にした、というのです。あー、すごい納得。そーいえば、あのあまり意味があると思えない繰り返されるドタバタとか、同じテンションの話の運びとか、まあ似ているわ、確かに。そして、世間の評に反して、ものすごくつまんないとこも。
ただ、映像や美術は素晴らしく美しいし可愛いし、見どころだらけです。スクリーンで見る価値ありますね、これは。でも、それだけでした、私には。
この作り物っぽさは決して嫌いじゃないのです。何がダメかって、恐らく、笑いのセンスが根本的に「合わない」んです。ところどころ笑えるんですよ、確かに、クスッとね。でも、それは話の流れにのった面白さから笑えるのではなく、そこだけ切り取った笑いなんです。一瞬、一瞬のブツ切り的な笑いがところどころにあったって、全体が面白いとは思えないのですね。
ナチと東欧諸国を思わせる設定ですので、ラストに向けてはそれなりに重みを感じはしますが、正直、「またナチか(辟易)」というのも偽らざる気持ちです。いつまでナチネタやるんでしょうか、人類は。今、世界の脅威はナチ(=独裁)より、テロだと思いますけれども。もちろん、独裁による人権蹂躙はいつでもどこでも起こり得ますので、テーマとして普遍であることは分かります。かといって、テロ映画も、もうゲップが出そうなほどありますしねぇ・・・。
溢れる作品群の中で輝きを放つには、本作は、いささか「お行儀が良すぎる」気がしました。お上品すぎるというか。殺しやセックスも出てきますが、なんつーかこう、単なる童話の中の一節でスルーしちゃう感じ。下劣にならない下品さって大事でしょ。なんか、本作は、言ってみれば「箱庭映画」っていう感じ。キレイにこぢんまり、監督の頭の中の通りにできちゃった、みたいな。物を作るって、作っている途中で構想していた以上のモノが出てくるのがその面白さだと思うんだけど、本作は、最初から最後まで想定内、って感じで。
レイフ・ファインズは、結構、コメディを楽しそうに演じており、久しぶりに生気のある俳優レイフ・ファインズをスクリーンで拝めたのは収穫です。このところ、かなり色褪せていたように思うので。
ま、期待値が高かった分、ガッカリ度も高くなってしまったという、典型的なパターンでございました。