まるでスポーツのような逆転勝利でした。1回目の投票では選挙戦の間にボロが出た小泉が予想通り3位に沈み、逆に高市は国会議員票で2位、党員票は1位でトップに立ちました。石破は安定の2位でしたが、決戦投票で重視される議員票で高市72票に対して石破46票の大差だったので、このまま高市が逃げ切る可能性も高いかと思われました。しかし決選投票では石破が215票を獲得し、194票の高市を押さえて、新総裁の座を掴み取りました。獲得した議員票は、石破が189票、高市が173票で、2回目の投票で国会議員が大挙して石破に流れたことがわかります。僅差ながら見事な石破の逆転勝利でした。
議員票が石破に流れたのは、小泉を支持した菅グループの票が石破に流れたことは予想がつきます。それ以外ではやはり岸田派、茂木派、二階派などの元来は自民党内ではハト派のグループが、極端に右寄りの高市では不安でとても票を入れられなかったのだろうと思います。高市を支持したのは安倍派と麻生派でしょうから、これまで長く続いた党内の主流派と非主流派が、今回で入れ替わることになりそうです。麻生、菅、岸田の総理経験者のキングメーカーとしての思惑が入り混じった結果でもあります。
自民党目線で見れば、総選挙の顔としては国民人気が高い石破の方が、一部の保守層には強いけれども無党派層への広がりがない高市よりは安心だということと、立憲民主党の代表に論客の野田がなったことで、すぐにカッとなって失言をしそうな高市よりは石破の方が良いだろうということもありそうです。一緒に飯を食わないし、後ろから銃を打つような石破だけれども、この困難な時期に好き嫌いを超えて能力で石破を選ぶ自民党は、とことんリアリストだなと感じます。
ただ国民目線で見た時には小泉、高市に比べて「より悪くない方」が選ばれただけです。これまで非主流派が長く好き勝手に評論家的な立場からモノが言えた石破ですが、実際にトップに立ってもこれまでのように正論を押し通すことができるかどうか。仮に石破の公約の防災省を作るのは何とかなっても、さすがに日米地位協定の改定は「非現実的」を言われるほどの難事です。石破は党内での基盤が脆弱なだけに、人事などで少し間違えると何も動かなくなる可能性も高いでしょう。裏金議員の公認を認めないとかやれば国民からは拍手喝采ですが、党が割れる覚悟が必要かも知れません。
石破で心配なのは経済政策で、財務省の筋書き通りに岸田の増税路線を引き続き進めそうなところです。そもそも立憲民主党の野田ー小川ラインも消費税増税派ですから、ますます国民は江戸時代の農民以上の年貢を納めなければならなくなります。これについては積極財政派の高市の方が良かったですし、「増税ゼロ」を打ち出していた茂木でも良かったです。高市財務相が実現すればまだ希望が持てますから、高市が財務相ポストを要求してくれないかなと思います。
そもそもこれだけ総裁選で競り合ったのですから、高市の処遇は難しいと思います。主要な閣僚か党役員に起用しないとマズイでしょうが、官房長官のタイプではなさそうですから、財務相、外相、もしくは党幹事長でしょう。と言っても外相は日韓、日中関係ともにぶち壊しそうなので、石破とは路線が違いますが財務相が良いんじゃないかなと思います。組閣して国会を開会して党首討論をして解散総選挙。まだまだ政治の季節が続きます。