はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

今こそ外交力を

2014-06-03 16:21:49 | ペン&ぺん

安倍晋三首相の私的懇談会が5月、集団的自衛権の行使を、憲法解釈を変更して容認するよう求める報告書を提出した。憲法改正によらず解釈で変更するとの考えだ。記者会見で、安倍首相が艦船をイラストに使って邦人救助時の自衛権について持論を展開していたのを、多くの皆さんが覚えておられるだろう。
 私たちは、一部地域・局所の武力衝突や国境紛争が、世界や世界大戦の引き金になることを歴史で学んだ。公海上空の中国軍戦闘機による自衛隊機への異常接近などが憂慮されるが、今こそ「外交」で正常な関係にもっていかねばならない。
 日本と北朝鮮が拉致被害者の再調査で合意したとのニュース。私にも2人の娘がいるのでテレビで横田めぐみさんのご両親を見ると、いたたまれない。日本には、あの北朝鮮を相手に再調査合意にもっていける交渉力がまだあるのだ。
 県内にも1978年に拉致された市川修一さん(当時23歳)ら被害者が複数おられる。家族の高齢化は進むばかりで早期の解決が望まれる。今度こそ、北朝鮮の誠実な対応に期待したい。拉致問題は安倍政権にとって最重要課題の一つ。納得いく解決を図ってほしい。中国の軍事力増強や海洋進出、北朝鮮の核開発など脅威はある。ならば日本が見せた外交力をもって、自衛隊が出ていかなくてもいいようにしてほしい。青臭いだろうか。
 さて、NHK争奪県選抜高校野球大会は見応えがあった。今春のセンバツに本県から出場した神村学園が決勝へ、大島が準決勝へ進んだ。今夏の甲子園出場を占うとされるNHK旗。神村と大島は甲子園への春夏連続出場がかかっており、鹿屋中央もNHK旗初優勝校の実力を見せたい。離島や山村などの高校もハンディを克服し、県予選に挑んでもらい、再び鹿児島を熱くしてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

娘にありがとう

2014-06-03 16:15:47 | はがき随筆
 夜中にふうわりと優しく布団を掛けてもらう感じがした。7年間の闘病の末、今年2月に亡くなった夫が元気な頃、よく私と娘に布団を掛けてくれていたなあ……。優しかった夫のことが思い出され、幸せな気持ちになった。
 もう一度、ふうわりと布団を掛けてくれる感じがして目が覚めた。「夫かもしれぬ」と期待していたが、何と17歳の一人娘がかけてくれていたのだった。
 「お母ちゃん、寝相が悪すぎるよ。風邪ひくじゃない」と嘆く娘。「お父ちゃんに似て、優しく育ってくれてありがとう」 
 思いを声に出して伝えた。
  鹿児島市 萩原裕子 2014/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

「御」の安売り

2014-06-03 16:06:21 | はがき随筆
 銀行の1年定期が満期になった。担当の若い男性行員はばか丁寧な言葉遣いで新タイプの定期を勧めるが、こちらは生活費が必要なので普通預金に移すことにする。書類の記入法を説明する時も「こちらに御名前と御口座番号と御金額を」ときた。なぜ金額に敬語を使う?
 彼が再び「御金額」と言った時、たまらず「あのー、金額に『お』をつけるのは気持ち悪いんでやめてください」と言ってしまった。彼は一瞬顔をこわばらせて「申し訳ございません」。怖いおばさんと思われただろう。ゴメンネ。あなたを嫌いなわけじゃないのよ。
  鹿児島市 種子田真理 2014/6/2 毎日新聞鹿児島版掲載

ホタルの競演

2014-06-03 09:49:33 | 岩国エッセイサロンより


2014年6月 3日 (火)

   岩国市  会 員   角 智之


 初夏の風に乗ってホタルがやって来る。実家は錦川の中流域で川のそばの道路を挟んですぐの所に家があった。我が家は居ながらにしてホタルの競演が見える特等席だった。梅雨入り前後の雨天の夕方から、川面に霧が立ち込めると、光はおぼろとなり神秘的な雰囲気を醸す。仲間とコミュニケーションを取っているのか、縄張りを誇示しているのか、わずか数日のはかない命を惜しむかのようだ。
 古くから親しまれてきた風情ある情景も見えなくなって久しい。人間の生活を優先させた結果であろう。乱舞の復活を夢見て保護に努めなければと思う。

  (2014.06.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載