1本の注射液で10時間余の眠りにつき、目が覚めたら11本のマカロニ管につながれて1ヶ月余り。不動の姿勢と痛みとの戦いに明け暮れ、今朝すべての装着器具から解放される日なのです。待ちこがれた常食が食べられるのです。老化に配ぜん車の音が近づいてきます。間もなくベッドの端先でみそ汁の芳醇な香りが漂い始めました。手を差しのべて口に運び、一口すすった時、この世のものとも思えぬ味わいに感激して思わず涙がにじんでくるのでした。長い闘病生活を終え、ようやく得た今日の生命の尊厳に改めて感謝、合掌することでした。
鹿児島市 春田和美(72) 2008/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿児島市 春田和美(72) 2008/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載