はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

みそ汁

2008-06-22 19:18:39 | はがき随筆
 1本の注射液で10時間余の眠りにつき、目が覚めたら11本のマカロニ管につながれて1ヶ月余り。不動の姿勢と痛みとの戦いに明け暮れ、今朝すべての装着器具から解放される日なのです。待ちこがれた常食が食べられるのです。老化に配ぜん車の音が近づいてきます。間もなくベッドの端先でみそ汁の芳醇な香りが漂い始めました。手を差しのべて口に運び、一口すすった時、この世のものとも思えぬ味わいに感激して思わず涙がにじんでくるのでした。長い闘病生活を終え、ようやく得た今日の生命の尊厳に改めて感謝、合掌することでした。
   鹿児島市 春田和美(72) 2008/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載

魔の3時

2008-06-22 19:10:16 | はがき随筆
 私は普段、11時ごろ床につく。しかし寝付きの良い方ではないのでななか熟睡できない。
 うとうとして時間が過ぎる。すると夜中の3時に目が覚める。さあそうなると、今度は目がさえて仕様がない。右に左に寝返りをうつが、頭はますますさえわたる。昨日あったことを考えたりエッセーのネタを探ったり、はては人生談義にまで行き着くともうだめだ。悶々としてのたうち回り、6時ごろ寝入ったと思うけど定かではない。ハッと目覚めると大概10時だ。
 こんな夜が頻繁にある。しかし、なぜ3時なんだろう。「魔の3時」と呼ぶしかない。
   鹿児島市 高野幸祐(75) 2008/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載