今日のブログから、「到るところ青山」を「ほろ酔い気分」に統合します。 倍旧のご厚誼をお願いします。
入院中のこと。
6階の病室の窓に、飛び交うカラスの影がよぎる。
身体の自由が利くようになるに従い、影を追いたくなる。
コンパクトカメラを持ち込んでいたので、さっそく撮影を目論んだ。
来たなと構えると、サッと飛び去ってしまう。シャッターを切った時点では、被写体はレンズの外。からかわれている気分だ。
諦めて横になると、またやって来る。まるで挑発だ。口惜しいではないか。
そんな繰り返しをしていたら、向かい側病棟の病室で、ブラインドを下ろした。
レンズの方向を誤解されたらしい。
老女らしい病人だった。
老男が老女を撮ったって、シャレにもなるまいが、誤解されてはたまらない。撮影は中止。
豆粒にも満たないカラスしか撮れていないが、やむを得ない。
それにしても、あれほど気味悪がったカラスだったのに、激励されたと詠むのだから、病気は弱気を誘うようだ。
窓の空病臥叱咤の寒鴉 鵯 一平