再検・・・・-6:の補足・「神輿のような建屋」の補足

2010-01-29 10:15:56 | 再検:日本の建物づくり
     
      今日は、このあたり一帯だけ、どういうわけか雨模様。雷もなっています。
      そんななか、いつものように来訪者。ツグミです。
      カキの枝にとまって、しきりに身づくろい。雨に濡れたからでしょう。
      以上は、本題とは無関係!

[表記を正確に修正 31日 9.55]

先般の「気になった言葉」へのコメントに、久保恭一氏から貴重な「資料」の紹介が寄せられました。
建物と地震の関係についての研究では大先達にあたる大森房吉氏の、「明治37年11月6日に起きた台湾地震」について1906年(明治39年)に出された「調査報告」の中の論文です。[表記を正確に修正 31日 9.55]

コメントの一画に置いておくのはもったいないので、先回の「神輿のような建屋」の補足として、別項設けさせていただきます。

簡単に言えば、「神輿のような建屋」、「礎石上に据え置いただけの建物の耐震性」についての論説です。

   註 大森房吉(おおもり・ふさきち)1868年(明治元年)~1923年(大正12年)
     福井県福井市生まれ。明治・大正時代の日本の地震学の指導的研究者の一人。
     関東大震災の報を知り、豪州から帰国の途次、倒れた。
     
以下、久保氏の前文を除き、そのままコピーします。読みやすいように、段落は変えてあります。


  ・・・(略)構造物を耐震的ナラシムルニハ、
  (甲)地震動ヲシテ成ルベク構造物ニ破壊的作用ヲ及ボサヾラシメ又、
  (乙)構造ヲ堅固ニスルヲ要ス
  ・・・・・・
  普通ノ日本造リ家屋ハ、弱小ナル地震動ノトキハ、
  土台石(註:礎石のこと)ヨリ辷リ動カサルヽコト無ケレバ、
  地面ニ固定セルガ如クニ振動スレドモ、
  大地震トナリテ震動激烈ナルトキハ、水平地震力強クシテ、
  木造家屋ノ下底ト土台石トノ間ニ存スル摩軋(註:ま・あつ:摩擦のこと)ニ
  超過スルコトアルベク、
  斯カル場合ニハ家屋ハ土台石ヨリ離レテ多少移動スベク、
  即チ実際ニ地震ノ激動ノ幾分ヲ遮断スルノ効果アルナリ、

  木造家屋ハ、ソノ柱ガ挫折スル事ナケレバ、決シテ全体トシテ転倒セザレバ、
  少シク注意シテ構造スルニ於テハ、
  如何ナル大地震ニ際スルモ倒ルヽコト無カルベキナリ、
  明治二十四年ノ濃尾地震、同二十七年ノ庄内地震ノ如キ、
  大地震ノ震央地ニテモ、存立セル農家アリキ・・・・

今からおよそ1世紀前の研究者は、現在の研究者のように自らの《理論》をもって現場を見てしまうのではなく、虚心坦懐に、先入観をもたずに現場を観察されていることが分ります。

   註 最近の研究者は、一般の人に向けて、平然と次のように語ります。
      《木造軸組工法の住宅が地震にあうと、柱、はり、すじかいで地震のカを受け持って、
      土台、アンカーボルト、基礎、地盤と力が伝わります。》
      地震の力は、いったいどこから来るのでしょう?
      詳しくは、「現行法令の根底にある『思想』・・・・学界の木造建築観、耐震観」参照。
      
大森氏のなされたような「観察に基づく認識」が、なぜ後世に引継がれなかったのか、奇怪至極です。
おそらく、木造の建物の構造計算:数値化のために、「事実の観察」すなわち「リアリティ」を無視、歪曲したのでしょう。
「机上の空論」をもって「事実」を見る、その結果、「事実」は捻じ曲げられてしまう。本末転倒の《典型》です。そしてそれが現行「建築基準法」の《異常さ》をつくりだしてしまったのです。

 紹介いただいた久保氏に篤く御礼申し上げます。

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1 コメント

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空論の逆転 (久保恭一)
2010-01-29 18:58:06
 恐縮です。

 先生が言われる『「机上の空論」をもって「事実」を見る、その結果、「事実」は捻じ曲げられてしまう。本末転倒の《典型》です。そしてそれが現行「建築基準法」の《異常さ》をつくりだしてしまったのです。』

 正にその通りだと思います。

 ”どうして建築基準法がこのように異常になったのか”を調べて行く中で、我が意を得たりの”地震に対する構え”が昔からあることを発見した次第です。
 またそこには、正しく「空論」の逆転がありました。事実を空論とし、机上の空論を事実にしようとした姿があります。

 現在、それらの事を整理し、絵図も使いたいため発信局(多分、ブログ)を準備中です。出来ました時はその旨連絡させて頂きます。

 よろしくお願いします。
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