ロバート・オッペンハイマーは原爆の父とよく呼ばれますが、父親ではなく、産婆(mid-wife)さんです。わざと奇矯なこと言っているのではありません。日野川静枝さんの優れた論考『科学史入門:原爆開発の起源をめぐって』を読んで下さい。その中にはレオ・シラードの名前は何度も出てきますが、オッペンハイマーのオの字も出てきません:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhsj/31/182/31_103/_pdf/-char/ja
レオ・シラードはとても興味深い科学者です。原子核反応の利用についての特許もいち早く取得していました。原爆も原子炉も自分が生みの親だのにオッペンハイマーとフェルミに横取りされたと思っていたかもしれません。興味のある方はウィキペディアに詳しい解説記事がありますので、これもおすすめです:
https://ja.wikipedia.org/wiki/レオ・シラード#人物
今年の7月に上映が始まったクリストッファー・ノーランのハリウッド映画『オッペンハイマー』をめぐる大騒ぎに直面して、私は「オッペンハイマー現象」という言葉を思い付きました。これは全人類の存続滅亡に関わる核兵器問題について、広島に投下されたウラン原爆「リトルボーイ」と長崎に投下されたプルトニューム原爆「ファットマン」の製造以来、一貫して米国で認められる注目すべき現象であると私は考える様になっています。そのうちに、このブログで「オッペンハイマー現象」のことを論じてみたいと思っています。その時に、原爆の父親は誰かについての私の考えを開陳するつもりです。
藤永茂(2023年8月21日)