時計屋としての矜持

 昨日の朝日新聞「窓」である。
 2月9日の新聞に掲載された(確かに読んだ記憶がある)、使い込まれた時計の写真を見た萩原康則さん(セイコーウオッチ執行役員)が、それが自社の製品であることに気づいた。それは40年前に製造された腕時計、セイコードルチェ・クオーツ。この使い込まれた腕時計には隠された物語があった。

 あさま山荘事件(1972年)を起こした連合赤軍のメンバーで、無期懲役の刑で服役中の吉野雅邦受刑者に対して刑を言い渡した元裁判長、故・石丸俊彦氏が生前「娑婆に出るときにはこの時計を身につけてほしい」と吉野受刑者に贈ったのが、2月9日の新聞に掲載された、すでに時を刻むことを止めていたセイコードルチェ・クオーツであった。

 「吉野受刑者が仮釈放されたときに、時計が動いていなかったら、石丸氏の思いがきちんと伝わらないのではないか」と懸念した萩原さんが「オーバーホールして動くようにして差し上げたい」と新聞社に連絡し、分解・洗浄後に再組み立てされた時計が届けられたのだと云う。

 いささか朝日新聞社の自作自演、我田引水的な記事であるようにも思うのですが、そのことよりも私は「時計は動いていなければならない。製造元がサポートしてこそ、時計屋が時計屋としての意味がある」と語った萩原さん、その萩原さんの時計屋としての矜持(きょうじ)に心を動かされたのでした。

 余りにも無責任な会社とその製品が溢れ返る昨今、自社の製品に誇りを持ち、そして使命感を持った社員がいる、そんな社員が働く会社があると思うだけで嬉しくなりした。もし私が、これからちゃんとした腕時計を買うことがあったなら、是非とも萩原さんが勤める会社の製品を買いたいと思った次第です。って、買わなですけどね。だって、腕時計するの嫌いだから(そのくせSwatchは10本くらい持っている)。

注:私より若い世代の方は「あさま山荘事件」をご存知ない方も多いことと思います。事件の概要については下記を参照ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%95%E3%81%BE%E5%B1%B1%E8%8D%98%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 事件の本質と関係はないが、本事件はNHKおよび主要民放で生中継され、視聴率89.7%を記録。50年が経過した2022年現在でも、報道特別番組の視聴率の日本記録となっている。
 また、事件当時の平均気温が-15度前後と云う極寒のために機動隊員たちに支給された弁当が凍ってしまう中で、当時販売が開始されたばかりの日清食品のカップヌードルが隊員に支給され、寒い中長時間の勤務に耐える隊員たちが温かい食事(補食)をとることができた。このカップヌードルを食べる隊員達の姿が、テレビの生放送で幾度も報じられたことからカップヌードルの知名度が高まり一躍ヒット商品となったことを付記しておく。

 横浜の住宅地の中に残された小さな里山の四季の移ろいを毎週撮影しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは5月7日に撮影した写真を6点掲載しております。田植え間近となった森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
https://blog.goo.ne.jp/ondanomori/e/7efb6aea07b0c4a2c11293e505c92352

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#職業人としての矜持 #プライド #責任感 #あさま山荘事件 #朝日新聞「窓」

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