このように永久歯前歯の(一部が)逆に噛んでいるというような相談で来院される患者さんは少なくありません。上の前歯ですので、誰が見ても目立ちますのでもっともですね。例えばこの写真のように1本が逆に噛んでいる場合でも、バックグラウンドに受け口傾向が考えられますので、横の乳歯が永久歯に生え変わった段階で、そこが逆の噛み合わせになるかも知れません。保護者の方には早く治療をして欲しいというご希望もあるかも知れませんが、通常は上の永久歯前歯4本が出揃うまでしばらく待って頂きます。ただしこの患者さんの場合、下の前歯間に上の前歯がはまり込んで、下の前歯(永久歯)がグラグラになっていました(外傷性咬合といいます)。このような場合はグラグラを放置しておけませんので、早めに治療を始めます。
上の歯の裏側にリンガルアーチという簡単な装置を付けて、前歯を押し出すと数か月で噛み合わせは改善します。
この写真は改善後の固定期間も含めて4か月後で、装置を外す直前です。前歯間に隙間があるとか左右で歯の高さが違うとかありますが、これは生え変わり時期にはよくある状態で自然に改善していきますので、あえて人工的に歯は動かしません。装置を外して一旦終了、経過観察です。
横の乳歯が生え変わる時にまた問題が発生する可能性はありますが、当初の問題の歯のグラグラは無くなり、下の前歯のデコボコは上の前歯が良い位置に移動しましたので、それに合うように、こちらも改善しつつあります。下の前歯のデキボコは時期的に歯並びの幅の拡大で改善していく時期ですので、上の前歯の治療でその改善を助ける形になります。
歯科業界では咬合誘導とか予防矯正とか呼んでいますが、小児矯正治療は時間軸も考えつつ自然の変化や改善能力を利用しながら、タイミング良く、できるだけシンプルな装置で行えるという利点があります。
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