乳歯の外傷は圧倒的に上の前歯が多く、指しゃびりなどの影響で上の前歯が出っ張っている小児では、より多い傾向にあります。
乳歯の場合は永久歯と異なり、歯が欠けるというよりグラグラになったりずれたりするケースが多いんです。
急患で来院される場合がほとんどですが、まずはX線撮影して、歯と歯の周囲の状況を確認するのが最初です。
この患者さんは3歳、ぶつけて歯のグラグラがあったため、近医で歯間を接着剤で固定して、当院に紹介がありました。
上の前歯の根は短い、または途中で折れたように見えますが、これは外傷して突然起こったというより、かつても外傷があったとか、指しゃぶり、歯ぎしりなどの影響かと思われます。
乳歯の場合、歯の周囲の炎症で根の部分が早めに消失して周囲骨の支えが少なくなっていることがあります。これでぶつけると大したことはないと思ってもグラグラするわけです。
歯間の接着剤は外れやすく不安定ですので、ワイヤーを使って固定して1か月ほど固定、固定装置を外したところで再評価です。
わずかにはグラグラが残っていましたが、そのまま経過観察。
それから約2年、5歳後半になりました。わずかにグラグラが強くなって来たため久しぶりに再評価。年齢的にも上の永久歯が降りつつ
あって。このままの経過観察でOKと判断しました。
外傷を繰り返せば、さらに根が短くなる、神経が死んでしまうという問題も起こります。
この患者さんの場合、初診時からの根の吸収はあまり見られず、そのうち永久歯が降りてきているという経過良好な例です。
乳歯にはもう少し頑張ってもらって、永久歯との自然な生え変わりを期待したいところです。
ふたつき子ども歯科 http://www3.coara.or.jp/~futam
乳歯の上の前歯を4歳頃に外傷した後、変色してきて神経を除去する処置を受けたそうです。
その後の経過観察を当院で行ってきた患者さんです、最近来院が途切れていましたが、7歳過ぎになって乳歯がスムーズに抜けないということで来院されました。
ご覧のように、以前治療を受けてその後平穏に経過していたのですが、乳歯が抜けない状態で、永久歯が内側から生え始めています。反対側の永久歯がほぼ出ていますので、外傷を受けた側は乳歯の根がスムーズに溶けず、永久歯が裏側から出ざるを得ない状況だったと判断されます。
このまま内側の永久歯が伸びてくると、下の前歯と逆に噛み込んで、歯並びに影響が出ます。この時点で乳歯を抜歯すれば、自然に永久歯は良好な位置に移動して、歯並びかみ合わせとも問題なくなるでしょう。この患者さんの場合は即日、乳歯の抜歯を行いました。
ほぼ1年前のX線写真、そろそろ上の永久歯が下に移動し始める像が見られますが、この時点では左右差はありません。
根の治療自体はあまり良好ではないと思いましたが、根の周囲の炎症像が明らかでないので、当院ではあえて再治療せずに経過を観てきました。
こちらは口腔内写真と同日のX線写真。乳歯の根が3分の1ほど残った状態で、正常な生え変わりを阻止しています。
乳歯の外傷は圧倒的に上の前歯が多く、特に神経の処置をした場合、しない場合でも歯が変色して神経が生きていない状態で永久歯との生え変わりを迎える時期はちょっと注意です。乳歯の根が早めに短くなって勝手に抜けてしまうことがある一方で、このように抜けにくい場合もあります。根の治療がきちんとできているかどうかよりも、神経が生きていないということが影響していると思われます。
おおまかには外傷後半年くらいで一段落して、その後症状がないことが大多数なので、ずっと定期的にチェックすることは必須ではありません。でも生え変わり時期になったら、やはり再チェックを受けることをお勧めします。
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先月乳歯前歯の外傷を起こした4歳の患者さん。
当院が3件目で、現在は経過観察中とのことでした。保護者の方は歯が折れたと思っていらっしゃいました。
最初のお話で、折れたままで経過観察とは変だな~、と思って診察すると、どうも歯がめり込んで、一見折れたようには見えます。
X線撮影をすると、やはり外傷で歯が上方にめり込んでいました。乳歯の場合は周囲骨が軟らかいので、歯が折れるというよりは、ずれてグラグラになったり、この例のように埋まり込むパターンが大部分です。
X線写真だけみると出てるんじゃない? とお思いでしょうが、歯肉部分はX線が透過して、わずかにグレイに見える程度ですので、実際は歯の先がわずかに顔を出している程度です。
写真で真ん中の2本の上の乳歯前歯が埋まりこんでいますが、向かって左側は若干捩れて埋まっていますので、X線でもそのように写っています。
このような時どうするか? 何もせずに経過を診ていると半年近くはかかりますが、結構もとの位置に戻ってきます。
以前は、直ちにもとの位置に戻して周囲の歯と繋げたような固定を行うのが一般的でしたが、ここまで埋まりこんでいると、もとの位置に戻すことで歯がプラプラになって、むしろ経過不良が起こります。こんなに重症だと結局保存できないだろうから抜歯が適切、ということもありません。
ダメージによる神経への影響も外傷後1か月~6か月くらいの間で発生することがありますので、今後の経過観察も重要です。もう一つは上にある永久歯への影響ですが、乳歯の根の先と永久歯の外側は近接していますので、歯の頭部分ができあがる3歳頃より前ですと、永久歯のズレや形成不全の可能性が考えられます。経度の場合はX線で確認できませんので、永久歯が出てみないと分からないということはあります。
それにしても保護者の方が歯が折れたと思っていらっしゃったのは不思議ですね。結果的に何も処置せず経過観察で良かったのですが、歯科医側の説明不足だったんでしょうかね~。
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6歳半ばの患者さん。永久歯前歯の生え変わりの時期ですが、上の前歯の生え変わりに左右差があります。
単純な数ヶ月の左右差ではなく、X線撮影をしてみると、永久歯は降りてきているのに乳歯の根の吸収が順調ではありません。数年前に乳歯前歯を外傷して変色していますので、神経が死んだ状態でこの時期に至ったと思われます。
X線写真の一番右側は正常に生え変わった永久歯(中切歯)。隣が反対側の中切歯ですので、明らかに生えかわりが遅れていますし、乳歯の根もほとんど溶けていません。さらに左隣が中切歯の後に生え変わる側切歯ですが、これは正常に乳歯が短くなって永久歯が出てきそうです。出遅れた中切歯の方向はX線的には傾斜は見られませんが、触診から予測されるのは、多分内側にずれているでしょう。
この時点で乳歯を抜歯しましたので、軌道修正はされるでしょうが、生え変わりの経過観察は必要ですね。
乳歯外傷では逆に早めに根が短く吸収されて脱落し、その後しばらく永久歯が出てこない場合もありますので、神経が死んだと思われる歯、神経の処置をした歯の場合、永久歯との生え代わりが済むまでは決着しないと、とらえた方が良いでしょう。
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乳歯が生え換わり始めたり、永久歯の奥歯(第1大臼歯)が出始めるのは6歳くらいですが、これらの永久歯はどれくらいから出来始めているんでしょう?
第1大臼歯や永久歯前歯は生まれて間もなくして出来始めます。そして3歳くらいで歯の頭部分が完成し、それからさらに3年間位で根の部分が形成されて、生え換わりに至ります。さらに出てきた永久歯の根が完全に出来上がるのは、出て来てからさらに3年くらい必要です。
下のX線写真は丁度1歳になったばかりの患者さんで、9か月のころ打撲して下の前歯が抜けてしまっています。
外傷後時間も経っていましたので抜けた歯の保存はできませんでしたが、隣の歯もグラグラしており経過観察が必要と判断して、再来院してもらいました。歯のグラグラが幸いに改善していましたので、今回初めてX線でチェックしました。
真ん中左側のグラグラしていた乳歯は、X線的には根が形成途中で、周囲の骨の状態も悪くないので、今後の経過は良さそうです。
この歯の根の先部分、そして向かって右側の歯の抜けた部分の下に白っぽい像が見えます。これは永久歯が形成されているところです。永久歯は乳歯のやや内側で、乳歯の根の先と若干重複するような位置で形成されますので、打撲の方向によっては、永久歯がずれる可能性があります。
この患者さんに関してはそのようなズレは見られません。ただし永久歯の外側に外傷時に乳歯の根が当たるような力が働いて、スポット状のエナメル質形成不全が発生することがあります。しかし、これはX線では判別できませんので、永久歯が出てきてから発見されることがあります。
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今日たまたまというか、外傷後の経過観察の患者さんが続きました。
乳歯外傷の患者さんはよく来院されるのですが、永久歯と比べて歯が欠ける割合は低い一方で、グラグラが起こっている場合が多くあります。
また、過去の外傷、指しゃぶり、歯ぎしりなどの影響で乳歯の根が細ってきている場合があって、そのような歯をぶつけると根の部分が折れているだろうと思われる場合も少なくありません。
以下のいずれの患者さんも歯のグラグラが大きく、しばらく固定をしています。
外傷直後。向かって右側の前歯(左上乳中切歯)の根は途中で細ったような像がみられ、外傷によって根が途中から折れているように見えます。左側隣も若干根が細ったような像はあります。
その後の経過ですが、根が折れたように見える場合でも、歯の変色はみられませんので神経は生きているだろうと思われます。折れた部分の上方の根はしだいに吸収されて骨と置換されています。向かって左側の前歯も軽度ですが同様の像がみられます。歯を支える骨が少なめですが、日常特に問題なく過ごしています。
次の患者さんは珍しく下の前歯の外傷で低年齢でしたので、キャップ状の固定装置をつけました。
向かって右側から2番目の歯の外傷直後。低年齢で撮影がいまいちですが、根が折れてはいません。
固定装置を外して以降8か月ほど経過をみているわけですが、観た範囲、X線での根の周囲の健全さも他の歯と比べて問題ありません。
今後の経過も良好と思いますが、向かって右から2番目の歯の中の黒く抜けている部分、すなわち神経血管が入っている管(根管)が細く変化しています。これは硝子様変性といって、炎症が起こった神経血管が治る過程でみられるものです。
もちろん経過が思わしくない例もあるのですが、グラグラしている状況を一定期間固定したのみで、自力で治癒しようという能力が見られる例は少なくありません。
歯科医師側として重要なことは、一旦グラグラが治まった後も適時にチェックをすることと、自力での治癒能力を選択肢に入れておくこと、将来的見通しを患者さん(保護者)にお話ししておくこととだと考えています。
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外傷で乳歯の上の前歯をぶつけた患者さん。歯の位置がずれたりして近医を訪れ、そのまま経過を観ますと言われましたが、特に今後のことが気になって、当院を受診されました。
結果的には私も、現段階では特に処置は必要ないと判断しました。ただし今後の見通しと、将来的な経過の可能性とそれに対する考えられる処置を説明致しました。
数日前に真ん中の2本の歯を打撲しています。
向かって左側は若干めり込むようにずれています。右側はほとんどずれはありません。いずれも歯の動揺はないのですが、特に右側は根の先4分の1くらいのところで根が折れているように見えます。左側も根の中央付近で折れている可能性がありますが明瞭ではありません。
めり込んでいる場合、グラグラしていない場合が多いので、元の場所に戻して固定処置を行うより、そのまま経過観察が適切です。3、4か月でほぼもとの場所に戻ることが多いからです。根が折れているかな? という場合も根の先の部分であれば、折れた根の先の部分は自然に吸収されて、その部分に骨が修復されることもあるので、何もせずに経過観察が無難です。
ただ歯の色が黒っぽく変色して、根の先部分に炎症病巣がみられた場合は、根の治療をするのが適切です。
ですから、ぶつけて歯がぐらぐらしているとか、欠けている場合は早急の処置が適切ですが、そうでない場合はとりあえずは何も処置をしません。
それはそのままでずっとOKということではなく、経過を観ながら、その時点の症状や変化などを評価して、処置が必要かどうかを考えるということなんです。X線的にまずくなっていても、小児の場合痛みがはっきりしないことも多いので、何も症状を訴えない場合でも、適切な間隔を置いたチェックが重要なわけです。
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乳歯をぶつけた場合、周囲の骨が軟らかいこともあって、歯が欠けるというよりも、位置がずれたり、押し込まれたように埋まったり、グラグラになる場合が大多数です。
通常歯のグラグラが明らかであると、隣接した健全な歯と繋げるような形で3週間前後固定します。埋まった歯については、以前はもとの位置に戻して固定するというのが一般的で、今でもそのような治療選択をされる歯科や大学病院もあるかと思います。しかしながら比較的最近の臨床研究によると、乳歯で歯が埋まったような外傷の場合、次第に出てくるのでそのままでも良いといわれています。
確かに埋まった歯はグラグラがみられませんし、実際固定も難しいので、そのまま経過を観るわけです。埋まった度合いが重症ほど、もとに戻そうとすると抜ける寸前になったりしますので、一旦固定が成功したとしても、その後どの程度歯が持つのだろうという部分はありますね。
下のX線写真は、1歳前半で上の前歯をダイナミックにぶつけて、歯が上方に埋まりこんで、一見歯が無くなったように見えた患者さんのものです。
そのまま経過を観たわけですが、半年で歯の半分くらいが出てきましたので、重症度から判断してこれくらいが出てくる限界と考え、審美的に補うため、歯の先の部分にコンポジットレジンを被せました。下はコンポジットレジンで被せる前のX線です。
ところが良い意味で予測に反して、その後もじわじわと出てきたようで、1年後には歯のねじれや高さの左右差はあるものの、レジンが不要な程度に出てきましたので、レジンは除去してそのまま経過を観ることとしました。
出てくるまでの経過が予測以上に長かった患者さんですが、歯の根の周囲もほぼOKで、歯の変色が見られませんので、神経血管の状態も悪くはないだろうと思います。
1年後、ちょうどコンポジットレジンが欠けてきたのですが、再治療せず残ったレジンを除去して、経過を観ることとしました。
やはり、埋まった乳歯はそのまま経過をみることで、歯も周囲の組織も回復してくる自力があるだろうと思われます。
私達も患者さん側も楽ですしね。
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最近、歯の外傷を起こした患者さんで、処置やその後の経過についてセカンドオピニオン的な目的で来院される、または電話でのお問い合わせが増えています。特に乳歯の外傷の場合が多いようです。
このブログの「歯のけが」というカテゴリーに割と詳しく乳歯外傷について書いていますが、それを見て連絡、来院される場合が少なくないようですね。
ネットで乳歯、外傷とかでサーチすると、このブログが上位に上がってくるのでしょうか?
お電話の問い合わせの場合、ついつい「もし気ががりでしたら、おいでいただいても結構ですが」とか返事してしまってから、電話を切った後に「近所とは限らないよな~」、と思い返すこともあります。ネットであれば、ある種全国区なわけですから。
乳歯の外傷でX線チェックや歯の固定が必要な場合、やはり通常から小児を診なれている歯科医がスムーズなわけで、ネット検索の場合、以下のサイトでチェックされると良いかと思います。ひとつは、日本小児歯科学会のサイトで専門医、認定医リストのチェックです(http://www.jspd.or.jp/specialist_doctor/index.htm)(http://www.jspd.or.jp/authorized_doctor/index.htm)。大学勤務の歯科医が多いとは思いますが、開業歯科医も少なくありません。
もうひとつは、全国小児歯科開業医会(JSPP)です(http://www.jspp.net/)。実は私はこの会員ではなかったのですが、近々入会予定ではあります。これは小児歯科専門または小児の患者が多い開業歯科医ですので、臨床的な信頼度は高いでしょう。
さらに福岡地区に関しては、「小児歯科集談会 子どもの歯Q&A」(http://www.geocities.jp/kodomonoha/) のサイトに会員リストが掲載されています。
上記のサイトで近所を探して、それから、さらに各歯科医院のホームページをチェックしていけば、細かい様子がわかって安心ではないでしょうか。
歯のケガは急に起こりますので、慌ててまずは近所の歯科へということになります。できれば普段から予防などでかかりつけ歯科を持っていただけると、このような時にスムーズではないかと思います。
ふたつき子ども歯科 http://www3.coara.or.jp/~futam/
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乳歯の外傷は欠けたりするよりもグラグラなる場合が多いということは、先日のブログでもお話しました。
乳歯でも永久歯でも上の前歯の外傷が圧倒的に多いのですが、時々下の前歯をぶつけたということがあります。
上の前歯のグラグラの場合、弾力性のあるワイヤーをぶつけた歯の両側を含めた範囲で歯並びの形に合わせて曲げた後、歯の外側部分に接着して連結固定します。
ところが下の前歯の場合、外側に接着すると上の前歯が噛みあわせで当たって固定ワイヤーが外れやすくなります。前歯の内側に接着できれば良いのですが、乳歯の下の前歯というのはかなり小さく、さらに唾液も多く出てくる部位ですので、接着剤がうまく働きません。
そこで下の前歯の外傷の場合、または支えになる両隣の歯が充分に出ていない低年齢児では歯型をとって歯を覆うようなキャップ状のものを作製し、これを歯科用セメントで歯と接着することで安定した固定が得られます。固定期間は通常3週間前後です。このようなものを入れるとまともに食事が出来るの? と思われるかもしれませんが、小児は大人以上に適応能力があって、ほぼ問題なく食事できるんです。
これは1歳の幼児の歯型。実物はかなり小さいものです。1歳で歯型? 可能?とお思いでしょうが、ご覧のとおりわりとすんなり歯型はとれます。
入歯や外せる矯正装置の材料と同系統のアクリルレジンという材料でキャップ状の固定装置をつくります。
これは実際3週間位使用して外したもの。均等に噛めるように、あえて広範囲に左右対称につくります。グラグラだった左下の前歯はもちろんしっかり元に戻りました。
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